立ち読み広告

2008.9/vol.11-No.6


本を通して、出アウ、薦めアウ、語りアウ!

 7月25日の夕刊に、奇っ怪な広告があらわれた。タイトルは「あうあう!」。まったくもって意味不明。その下には女優の音無美紀子とその娘でやはり女優の村井麻友美の写真が(しかし、よく似た親子だなあ。鼻から頬のあたりにかけては瓜二つ)。しかも二人でぬいぐるみを持っている。犬でもないし、猫でもないし、熊? 狸?
 正解はアザラシ。「出会いたがりのアザラシ」で、「あうあう」という名前らしい。まあ、たしかに水族館のアザラシはしょっちゅう「アウアウ」と言っているけれども。それにしても……。

本で広がるコミュニケーション

 この全面広告を丹念に読んだ結果、次のことが判明した。まず、これは「本をきっかけにしたコミュニケーションを」という広告である。「あうあう」君は、そのイメージキャラクターということらしい。で、第一回目のこのページでは、音無美紀子・村井麻友美母娘が、お互いに本をすすめ合い、本に託してお互いの思いを語り合う、というしかけになっている。
 たしかに子どもがある程度の年齢になると、親子の会話なんて気恥ずかしくて、となる。それが間に本があれば、本のことを語りながら、さりげなく相手に意思を伝えることができる。
 このページで音無美紀子が娘にすすめているのは大橋鎮子の『すてきなあなたに』。20代で暮しの手帖社を創立し、以来、60年、『暮しの手帖』を率いてきた著者のエッセー集である。一方の村井麻友美がすすめるのは佐藤多佳子『一瞬の風になれ』。陸上競技を題材にしたこの長編小説は本屋大賞も受賞。北京オリンピック直前という広告のタイミングもよし。
 本を媒介にしたコミュニケーション、あるいは、本を誰かにすすめたい、という気持ちがいま広がっているのかもしれない。
 たとえば今年から始まった「大学読書人大賞」。大学の文芸サークル員が、大学生にすすめたい本、読ませたい本を選ぶ賞である。選考はディベートと投票。ちなみに第一回はアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』が選ばれた。
 あるいは、私は昨年から出版文化産業振興財団主催の「読書アドバイザー養成講座」の監修をしているのだが、ブックトークなど本について語るイベントへの関心の高さに驚かされる。誰かと本のことを話したい、誰かに本をすすめたい、おもしろい本を教えてほしい、という人がたくさんいるのである。

なんだか気になる第2回

 それにしてもこの「あうあう!」、なんとも大胆な広告である。最下段の「アザラシのラブレター」コーナーは、『初音ミク』(音楽制作ソフト。音階と歌詞を入力すると、バーチャルアイドルの初音ミクが歌ってくれる)の紹介。その隣の「アザラシの落書き帳」コーナーでは、劇画タッチのアザラシが「ま、まだ第一回目だっていうのに、早速次回はお盆休みだってぇ!? そ、そんなバカな…」という台詞を言っている。
 第1回目が母娘なら、第2回目は父と息子か。あるいは師弟か兄弟か(アパートの店子と大家というのもいいと思う)。初音ミクの次にアザラシが会いにいくのは誰か。どうでもいいけど、ちょっと気になってきました。

7月25日 夕刊
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