栞ちゃん

2008.9/vol.11-No.6


Vol.15  本と出会う。

栞ちゃん

この原稿を書くとき、とても頼りにしている本屋がありました。

そこに行くと、面白いように出会ってしまうのです、
本当はこんなのが読みたかったんだという本に。
しかも既に持っている本でさえ、また欲しくなってしまうから不思議。

結果的にコラムで取り上げた本の大半が、その本屋で手に入れたものとなりました。

お店の名は、「リーディング・ファインリファイン」。銀座松坂屋の地下にありましたが、
すでに閉店してしまいました。会社から近かったし、とても残念。

そこではふつうの書店とは違い、新書も古書も混じり合っていて、
誰かの「好き」という想いで集められた、個人の本棚のようでした。
コーナー展開も、「眠るまえに」とか「恋や愛だの」とか「ある日常」とか、
関係を持ちやすい世界づくりになっていて、いつも手ぶらでは帰れなくて困りました。

この魅力的な本屋を手がけた人は誰だろうと調べると、
幅允孝さんという方で、肩書は「選書家」、「ブック・ディレクター」。
TSUTAYA TOKYO ROPPONGIや、HANDS BOOKS、BOOKS246なども手がけている方だとわかりました。
その「選書家」とはいかなる仕事なのか、あの本屋はどうやって出来たのかなど
どうしても聞いてみたくなって幅さんに会いに行ってきました。

難しいこと言われたらどうしよう・・・という思いとは裏腹に、幅さんのお話はとても明快でした。

○本が売れないこの時代に、一人でも多くの人に本を読んでもらいたい。
○でも本屋に人が来ない。ならば人がいる場所に本が出ていくしかない。
○場所は洋服屋やインテリアショップやカフェなど様々。最近では病院や企業からも発注が来る。
○まずは、そこに来る人たちから注意深くヒアリングして、置かれるべき本を探っていく。
○そして選んだ本は一冊一冊、並び順までを考えて、本棚に詰めるまで全部やる。

子どもの頃から、自分が心底面白いと思うものは、みんなと分かち合いたくなるという幅さん。
今は、「本」への強い想いをみんなと分かち合いながら、人と本の出会いを変えてゆく。
終始「この仕事が楽しくて仕方ない」というように話す姿が、とても印象的でした。

それにしても「本が売れなくなった」という言葉をよく耳にするこの頃ですが。
何だかわかるような、わからないような、頼りない相づちを打ちながらも思うのは、
本を開けば確実に、何かと一対一で出会う・・・それは永久に変わらない、ということです。
もちろん、本でなくてもネットとかゲームとか映画とか選択肢はたくさんあるけれど。
何にも出会いたくないという選択肢もあるけれど。
それでも、これからもみなさんに、本との幸せな出会いが続いてゆきますように。

栞ちゃんは今月で最終回です。今まで読んでくださって、どうもありがとうございました。
いつも締め切りが遅れても寛大に対処してくれたojo編集部の方々と、
いつも時間のないなか素敵なページにしてくれた帆足さんに心からの感謝を。
またいつかどこかでお目にかかれますように。

国井美果(文)
ライトパブリシテイ コピーライター

本誌デザイン
帆足英里子(デザイン・写真)
ライトパブリシテイ アートディレクター

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