Fashion Insight

2008.9/vol.11-No.6


スポーツとファッション”

 北京オリンピックが、様々な問題を世界中に投げかけながら8月8日から24日まで開催された。
 日本の期待の星、水泳の北島康介が100メートル平泳ぎで世界新記録を打ちたて金メダルを獲得、200メートルでも連覇を果たしたことは、国民の大きな感動を呼んだ。
 彼が着用していたのはスピード社のレーザーレーサーという水着。この水着は開幕前から大きな話題となったが、100分の1秒という単位で争われる競技で、少しでも速く泳げる水着を選手が着用したいと思うのは当然のこと。スピード社にとっては大変な宣伝効果をもたらしたが、この水着は、日本が世界に誇るファッションデザイナー、コム デ ギャルソンの川久保玲とコラボしたもの。水着には書家の故井上有一による「心」という文字がデザインされている。
 このことは余り知られていないが、ファッションの世界に身をおく者からすれば、もっと多くの人たちに知ってもらいたい事実だ。今まで日本でも有名デザイナーがオリンピック選手団のユニホームをデザインすることはあったが、今回のオリンピックでは日本のファッション関連で話題になったのは、この水着のことぐらいなのだから。

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 スポーツとファッションという視点で世界を見渡してみると、数名の大物ファッションデザイナーの名前が浮かぶ。一人はトリノ冬季オリンピックの様々なシーンでかかわったジョルジオ・アルマーニ。そして今回の北京オリンピックでアメリカチームの開会式と閉会式のウエアを担当したラルフ・ローレンだ。
 特にラルフ・ローレンは、テニスの「USオープン」のオフィシャル・アウトフィッターでもあり、昨年からは世界で最も伝統ある「ウィンブルドン・テニス・トーナメント」のオフィシャル・アウトフィッターにもなった。伝統あるイギリスのテニストーナメントでアメリカ人デザイナーがその地位を得るというのは、いかにラルフ・ローレンがイギリスで評価されているかがわかる。
 筆者も深夜のテレビで「ウィンブルドン」の試合を見ていたが、ボールボーイを務める少年、少女や線審、主審まで胸にラルフ・ローレンのブランドの証であるビッグ・ポニーの付いたポロシャツや上着を着ているのには少々驚いた。北京でも1920〜30年代のエレガントなテイラードスタイルをモダンにアレンジしたアメリカチームの濃紺のブレザーの左胸には、白いビッグ・ポニーが輝いていた。
 このようにファッションとスポーツは非常に緊密な関係を築き上げている。日本のサッカーのA代表が公式の場で着用するスーツはダンヒルのもので、このスーツと同じ型のものも市販されているが、限定商品ということもあって、発表されるや即完売になってしまうという。スウェーデンのスポーツウエアブランドのJ・リンドバーグは、アメリカで活躍するプロゴルファー、イェスパー・パーネヴィックが着用して有名になったブランドだ。
 大きなスポーツイベントはTV中継などを含めると、世界中で億を超える人たちが視聴することになる。これはファッションブランドにとっても大変な宣伝効果だ。また常に多くの人たちの注目を浴びるスポーツ選手たちにとっても、見た目がいいほうがいいに決まっている。日本のスポーツ関係者も早くそのことに気がつき、ファッションデザイナーの力をもっと借りるべきだと思うのだが。北京オリンピックの日本選手団のユニホームも川久保玲がデザインしたら……と思うのは私だけだろうか。

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日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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