経済カフェテラス

2008.9/vol.11-No.6


「続けたくなる」エコ活動に企業はノウハウ提供を

経済カフェテラス

 何事も始めるのは簡単だが、続けるのは難しいと思うことが増えてきた。
 読書はその最たるもので、はずかしながら、私はどうしても「カラマーゾフの兄弟」の読破ができない。歳を重ねるごとに読書にあてられる時間が細切れになったこともあるが、重たい内容のもの、長編を投げ出さずに根気よく読み続けようとする気力が減ってきたと実感している。

「継続は力」より選択肢を重視

 思えば、古い話だが、私の中学、高校時代は「継続は力なり」という言葉の全盛期だった。努力は続けることが大切で、それは必ず報われ、たとえすぐに結果はでなくても努力は自分を裏切らないと教えられた。その典型例が大学受験であり、高校野球であると言われて育った世代である。
 大学受験も通り抜けてみれば何だったのかなと思うが、若いころ上司にこんなことを言われたことがある。「会社は偏差値の高い大学をでた人間が優秀だから採用するのではない。大学時代にはほとんど勉強していない人が大半だ。それよりも、受験勉強で身につけたスケジュール管理能力、失敗に対する分析力、プレッシャーに対する忍耐力、受験テクニックにおける問題解決の要領のよさが、仕事をする上で役に立つことがあるかもしれないという程度」だと。
 日々楽しいことが目の前にある青春時代に、時には目の前の楽しみを我慢して、受験という中期的目標に向けて自己をマネジメントしたことはよい経験だったのだと今になって思うこともある。
 ところが大学全入時代になり、事情も少々変わってきたらしい。私の周りの友人たち、いずれも東京在住で私立高校に通う女子高生を子供にもつお母さんたちだが、「受験する子はほとんどいない」という。正確に言うと、「受験しなければならない子」は、ということらしい。国立や超難関私立以外に進学するのであれば、推薦入学がよりどりみどりだという。
 「石の上にも三年」という言葉も、ニュアンスはちがってきているかもしれない。石にかじりついてでも続けることでみつかることよりも、小さい時からさまざまなことにチャレンジさせて、その中から一つでも好きなものが見つかればよいという考え方の親が多いし、仕事もジョブホップは普通になった。一つのことにしがみつくよりも、より多くの選択肢を手に入れることが人生にとって重要だと考える人が多くなった。
 その結果、自助努力という言葉は聞かれなくなり、チャンスの偏在のみを云々し、それが大きな社会的不満にもなってきた。

イラスト

タイトルカット&イラスト・谷山彩子

人々を巻き込むメニュー

 「継続は力なり」が遠い時代となる一方で、コツコツとした日々の努力こそが重要な問題もでてきた。その代表が環境問題である。
 どうすれば続けられるのか、そのためには「続けたくなる仕組み」が上手につくられていなくてはならない。
 今は自らのCSRの一環として環境問題に取り組む企業も多い。省エネはもちろん、植林やグリーン発電にとりくむ企業も珍しくない。太陽光発電パネルは生産すれば右から左に売れる時代になったそうだ。こうした取り組みももちろん素晴らしいが、資金的余力のない企業には厳しい。しかし、普段から顧客ニーズ、消費者の動向に心を砕いている企業であれば、どうすれば「続くエコ活動」のモデルがつくれるかのヒントを持っているはずだ。
 今の時代は、エコ活動においても、ライフスタイルや嗜好に合わせて、お好きなものを選んでくださいという選択肢が必要だ。選択肢のメニューづくりに、企業のノウハウが提供できれば、それもりっぱなCSRである。なぜならば、一人でも多くの人を巻き込み、小さな努力を積み重ねることが、大きなエコになるからだ。

楽しみながらエコに貢献

 最近「カーボンオフセット」という取り組みが話題となっている。その名の通り「カーボン(CO2)」を「オフセット(相殺)」するという仕組みである。
 どんなに省エネを心がけている人でも、エネルギーを使うからといって、一切飛行機旅行はしない、テレビも見ない、大型の照明を使うようなスポーツ観戦やコンサートには行かないという生活では人生は楽しくない。
 「カーボンオフセット」とは、サッカーやコンサートで消費した電力を計算し、それを一定の割合で金額に換算し、NPO等を通じて、自宅や社屋の太陽光発電などに取り組んでいる個人や企業への支援金にまわすことで、自らのCO2排出を「オフセット」しようとする考えである。
 たとえば埼玉県内の場合、埼玉西武ライオンズや浦和レッズ、大宮アルディージャの特定の試合をこの「カーボンオフセット」に協力する試合に指定し、当日の野球場やサッカー場の消費電力から換算した金額をエコ活動への支援に提供している。他にも有名歌手のコンサートや自治体主催の写真展、高校総体の開会式などがカーボンオフセットに参加するなど、最近、裾野が広がりつつある活動である。楽しみながら、間接的にエコに貢献できる仕組みだ。
 どうすれば人々が喜ぶか、楽しくできるかのノウハウは、企業にたくさんあるはずだ。金ではなく知恵を出すことも立派な社会貢献である。

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