特集

2008.8/vol.11-No.5


特集2 from Europe 特別リポート CANNES LIONS 2008

世界三大広告賞グランプリ独占 「UNIQLOCK」
「UNIQLOCK」

 サイバー部門の授賞式。紅一点の審査委員長、コリーン・デコーシー氏(TBWA/USA)は、審査講評で、「UNIQLOCKは、デザイン、ユーティリティー、エモーションの三拍子がそろった作品。そのうえ、“毎秒”プロダクトの宣伝もある」と語り、「この作品以外にグランプリは考えられなかった」と、最高の賛辞を贈った。チタニウム部門とのダブル受賞。「ワンショウ」「クリオアワード」とあわせ世界三大広告賞を制覇したことになる。
 UNIQLOCKは、「時計+ダンス+音楽」という世界共通の“言語”を素材として、ユニクロのウェブサイトから発信され、店頭、ブログを通じて、時にはスクリーンセーバーとして世界中の人々に伝播した。学校の講堂、教室など、どこかノスタルジーを感じさせる空間で、ユニクロの服を着た少女たちのダンスは5秒間隔で正確な時を刻む。シンプルにさりげなく、しかし、完璧に計算されつくした手足の動きは、ユニクロ・ブランドのように、言葉の壁を超え、人々に支持された。

「UNIQLOCK」を生み出した名コンビにインタビュー
勝部氏〈左〉、田中氏〈右〉

 「お客様に向けてより広く情報発信できるメディアを作ろう、というのが最初のきっかけでした。そこから、『お客様の見たいものは何か?』『使いたいものは何か?』『グローバルなものは何か?』 とアイデアを出していきました」(勝部氏)
 「言葉にも日本にも依存しないもの」を探していく過程で「時計」「ダンス」「音楽」というキーワードが導き出され、そして、その融合形に「見たいもの」があると確信したという。
 「そこから、振付師、プログラミング、PR、映像など、それぞれの立場でやりぬいているクリエイターを50人ほど集めて、制作チームを作りました。いま思えば、自由度が高く、珍しい仕事の仕方でしたが、一つの制作現場から別のところに、テンションがどんどん伝播していったんです」(田中氏)
 5秒間のダンスは、次の5秒間につながり、パーツの組み合わせは無限に続く。決められた時間のフレームの中で情報を変えていくことで「次々と新しいものが見たくなる」仕組みができた。
 「社長に提案した時はまだ平社員でしたが、新しいことが受け入れられる会社だったから、自由に作ることができた」(勝部氏)。新しい発想をもとに、理想形に向かって、綿密なプロセスを刻んで完成させる。二人のコンビネーションが、世界をあっと言わせるクリエーションにつながった。

ウェブ広告で最先端を走る日本

伊藤直樹氏  「Nike Cosplay」「BIG SHADOW」など斬新なインタラクティブ表現で海外でも注目される伊藤直樹氏。サイバー部門の審査員を務めた氏に、世界のウェブ広告の現状を聞いた。

――今年のサイバー部門全体の感想からお聞かせください。

 とにかく目立てばいいというような“B級トーン”のウェブではなくて、エモーショナルできれいに作り込んだ良質なウェブが出てきたというのが今年の印象です。一昨年も、カラフルなスーパーボールがカリフォルニアの坂道を転がるソニーのBRAVIAの広告が話題になるなど、今年と同じような傾向があったのですが、昨年はまたB級トーンのウェブが同じくらい出てきた。そういう揺り戻しはあるものの、ウェブが新しいステージに来ているのは確かだと思います。

――どういうことですか。

 これまではB級トーンのウェブが世界中で支配的でしたが、それはウェブにかける予算が少なかったことが理由です。奇をてらって面白さを狙うしかない面があった。それが最近は、様々なメディアとリンケージしたインテグレーテッド・キャンペーンに変わってきています。一つのキャンペーンを成立させるようなクオリティーや世界観がウェブに求められるようになってきているのです。

――それが世界的な傾向になっている?

 日本が特にそうなっていますね。カンヌの審査員が口をそろえて言っていたのは、ウェブをセンターに置いたインテグレーテッド・キャンペーンでは日本が世界の最先端を走っているということです。各国の審査員も日本の作品に注目しているし、技術も追いかけている。僕もカンヌでは質問攻めにあいました。グランプリを受賞した「UNIQLOCK」もそうですし、ソニーマーケティングの 「REC YOU」がグランプリ候補になったのも、決してフロックではない。NECの「エコトノハ」が04年にグランプリを受賞して以来、日本はウェブの最先端を走っていると思います。

――「UNIQLOCK」が評価された点というのは?

 審査員の全員が、「This is the future.(これこそが未来だ)」という評価でした。「UNIQLOCK」の新しさは、ブログパーツ(注)を“終わらない広告”にしたことです。「UNIQLOCK」を個人のブログに貼ってもらえば、企業はずっとそこにブロードキャスティングができる。ということは、消費者とユニクロが永遠の関係を持ちえるということです。テレビCMのように時間の枠に縛られることなく、国境もやすやすと超え、世界中のブログに貼られる。そういう意味では、広告の革命なんです。

――「UNIQLOCK」は、そういう仕組みが評価された?

 無限にループする時計という概念も含めて、映像表現としても画期的なものだと思います。それを成立させている仕組みも表現なんですね。トラディショナルな広告制作に携わってきた人たちは仕組みを軽視しがちですが、いよいよそれでは通らなくなってきた。カンヌ、クリオ、ワンショウの世界三大広告賞のグランプリを独占した「UNIQLOCK」は、仕組みも含めてクリエイティブ表現なのだということを示していると思います。

REC YOU
注)ブログパーツ:ブログのサイドバーなどに貼り付けて利用することを目的としたウェブページの小さな部品のこと。アクセスカウンターや時計、カレンダー、ニュースのヘッドライン、占いなど、さまざまなパーツが有償、あるいは無償で提供されている。
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