特集

2008.8/vol.11-No.5


特集2 from Europe 特別リポート CANNES LIONS 2008

 55回目となる世界最大規模の広告フェスティバル、カンヌ国際広告祭(カンヌ・ライオン)が、6月15日から21日にかけて開催された。世界85か国からのエントリー数は、約2万8000点(前年比10.2%増)と過去最高を記録。日本作品は合計三つのグランプリを獲得するなど非常に存在感を高めた年になった。パリ駐在の則島香代子が、“本誌特派員”として南仏カンヌからのリポートをお送りする。

入賞作品撮影:Getty Images(一部の撮影は則島香代子)

 私が、はじめてカンヌ国際広告祭のことを知ったのは、今から10年くらい前の「広告批評」だった。カンヌの入賞作品を集めた特集で、付録に入賞作品のCD-ROMがついていた。新聞社の広告局という広告業界の一端に身を置きつつも、世界のクリエイティブのトレンドを知っておきたいという思いがあった。
 カンヌは、実際生半可なイベントではない。今年は、フィルム、プレス、アウトドアなどに加え、デザイン部門が設けられて合計10部門となった。恐らく純粋に学習の目的で参加したとしても、メーン会場で各部門のショートリスト(最終候補)作品を端から端まで鑑賞し、合間には世界的なクリエイターによるセミナーに参加し、夜の授賞式や深夜まで続くパーティーにも顔を出して人脈を増やしてみたい、と欲張ると、寝る暇もなくなる。そして、世界各国の作品と人々に揉まれて、消化不良寸前になる。それでも、最前線で出会ったものは、言葉を必要としないくらい身体に入り込み、あとでじわじわと効いてくる。これこそがカンヌの醍醐味なのだと思う。
 今年、特にエントリー数を増やしたのはプロモ部門。ニューヨークのケーブルTV「HBO」のキャンペーン(BBDO NY)=写真左=は、プロモとアウトドアの2部門でグランプリを受賞した。一般市民にDMを送り、会場のビル壁面に投影した映像で、マンションの各部屋で繰り広げられるストーリーを“覗き見”させたほか、インターネット、モバイルなど、さまざまなタッチポイントで「ドラマを見る面白さ」を伝えた。本作品がメディア、サイバー、デザイン、フィルムの各部門でも入賞したことに象徴されるように、様々なメディアを駆使する「インテグレーション」が、今年のキーワードの一つだった。
 また、今年の傾向として「グリーン、エコ」を感じさせる作品が多かった。メディア部門でゴールドを受賞したマクドナルドの作品(レオバーネットUSAシカゴ)=写真中=は、郊外に設けた“土の看板”に、植物を植え、その後、FRESH SALADSという緑の文字が現れる仕組み。毎日新聞がしながわ水族館で行った「プラスチックフィッシュ」キャンペーン(博報堂)=写真右=はメディア部門でブロンズに輝いた。

HBO/VOYEUR PROJECTION INSTALLATION、VOYEUR INTEGRATED CAMPAIGN
毎日新聞社/PLASTIC FISH
McDONALD'S/FRESH SALADS

 オリンピックではないが、同胞の活躍は本当に誇らしい。日本からのエントリー数は前年比14%増の957点。今年は、ラジオ部門、サイバー部門、チタニウム部門の3部門でグランプリを受賞するという大躍進の年となった。合計7部門26点の作品が、ライオン像を獲得した。
 言葉の壁や文化の違いを超え、人の心を動かす作品に国境はない。カンヌで受賞する、ということは、世界で認められるということ。カンヌ・ライオンは今後もクリエイターの目標でありつづけるのだろう。ホテルのロビーで日本人の受賞者を取材している時に、通りかかる人が「Can I touch your lion ?」と何人も触りにきたのが印象的だった。

CANNES LIONS2008 各部門のグランプリ作品
CADBURY/GORILLA
THE COCA-COLA COMPANY/ COCA-COLA IDENTITY
AMF PENSION/MMS
CANNES LIONS2008 日本の受賞作品
メディア・パーソン・
オブ・ザ・イヤー
HBO/VOYEUR PROJECTION INSTALLATION、VOYEUR INTEGRATED CAMPAIGN
英インデペンデント紙などを傘下に持つメディアグループ、Independent News & Media PLC社(本社・アイルランド)の最高責任者、サー・アンソニー・オレリー(右)が受賞。4大陸22か国で新聞、雑誌、ラジオ事業を展開している国際性が評価された
毎日新聞社/PLASTIC FISH
日本野鳥の会/VOICE OF ENDANGERED BIRDS若者が集まるアナログレコードショップで、ナマ録した絶滅危惧種の鳥の声と音楽をミックスしたレコードを生存個体数限定で販売し、大反響で完売
McDONALD'S/FRESH SALADS
セコム/THE BIG TEST 外を歩いていると自分以外の人の動きが止まり、裕福そうな家のドアが開いている。誘惑に勝てる?

審査員からのコメント

永井一史氏  コカコーラは審査員16人中15人が推しました。世界のカンヌのデザイン部門1回目にふさわしい作品が選ばれたと思います。世界の誰もが知るブランド固有のアイデンティティーと企業哲学が、シンプルによく表現されていました。デザインは今後日本の入賞が期待できる分野になると思います。

川越智勇氏  ターゲットのインサイトを理解し、適切な媒体で展開して、どう効果に結びつくかが、この部門の評価のポイント。スウェーデンの作品は、若者に人気の歌手を、広告上で一気に老けさせて、関心の薄かった若者に保険の大切さを喚起しました。携帯で自分の写真を送ると老けた顔で戻ってくる仕組みに反響が多かったそうです。


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