経済カフェテラス

2008.8/vol.11-No.5


構想20年の2010年「上海万博」日本企業はどうからむ?

経済カフェテラス

 「19参|||」。この夏、上海にオープンするビルの名前である。なんともおしゃれだ。東洋と西洋と、新旧が混在する不思議な上海の存在感がそのままそこにある。
 1933年に竣工した食品加工工場の建物の外観をそのままに、中はギャラリーやレストランなどからなるクリエイティブな空間に生まれ変わるという。
 上海は近代化する中国経済のトップランナーというイメージが強い。上海がニューヨークを抜いて世界一高層ビルの多い街になったのは2004年と聞いた。私たちが上海と聞いて、すぐ思い浮かべるのは、ニュースでしばしば目にする浦東サイドにそびえ立つ宇宙基地のシンボルさながらのテレビ塔「東方明珠電視塔」であり、それに連なる最先端の建築家の手による高層ビル群である。
 しかし今いちばんトレンディーなのは、おしゃれな低層ビルの建築であり、戦前からあるオールド上海の建物を生かしながら、そこに最先端のファッションやアート、グルメなどの新しい国際都市上海の息吹を吹き込むプロジェクトだという。

趣が異なる浦東と浦西地区

 上海には黄浦江という大きな川が流れている。その東側が浦東、その西側が浦西。浦東地区では、近年、白地に絵を描くように都市開発が進められてきた。数十階建て、しかもすべてが億ションだという巨大なマンションは上海の富の象徴だ。その隣には、池もある広大な中華風庭園が造成されている。高層マンションの空中権を利用して、隣接地を公園にし、住環境の良さをアピールしているのだという。しかも、その公園の中には、渡り廊下でつながった独立した個室をいくつも有する平屋建ての高級中華料理店がある。このような大胆な空間の利用は浦東だから許される。
 一方の浦西は旧租界地があった地域であり、旧市街地である。余分な空き地はない。しかし、ここには歴史と文化の蓄積がある。「19参|||」ビルのように、戦前の歴史遺産に現代の最先端のクリエイションを重ね合わせるという挑戦は、歴史のある浦西だから許されるプロジェクトだ。旧い時代と現代と、時間を行き来しながら、新しい文化が創り出される。
 川の東は空間の贅沢を、川の西には贅沢な時間がある。

イラスト

タイトルカット&イラスト・谷山彩子

日本からの出展予定は3件

 実はこの浦東、浦西の両地区にまたがって、2010年に上海で国際博覧会が計画されていることは案外知られていない。
 上海万博の会期は2010年の5月1日から10月末日までの半年間。会場は愛知万博の約2倍の広さを持つ。目標入場者数は7000万人と発表されているが、実際は1億数千万人に達すると見込まれている。史上最大といわれた大阪万博の目標3000万人、実数6400万人の記録を塗り替えることは間違いない。「量」は大事な成功の評価基準だ。「史上最大」と世界に報道されることも中国にとっては非常に大きな意味がある。
 この上海万博にはすでに205の国・地域、国際機関が出展を表明しているが、現在、日本から出展を予定しているのは3者。一つは日本政府館。もう一つは、未来都市モデル展示ゾーンに出展する大阪府と大阪市。そして三つめが、15〜20社の日本企業が連合出展する「日本産業館」だ。
 企業館ゾーンへは日本産業館のほか、中国本土企業が10社、台湾企業が1社、海外からはコカコーラ、マイクロソフト、GM(上海自動車と共同出展)などが出展を表明している。今の中国経済を考えれば、この海外企業のパビリオンの数が多いか少ないか、というのは議論の分かれるところである。
 経済のグローバル化が万博の追い風になっているかというと実はそうでもないような気がする。いまや企業にとっての経営のグローバル化とは、グローバルな事業展開をしながら、それぞれの国においては限りなくローカル企業化することである。進出先の国の人々に「外国企業だ」と思われないこと、むしろ「自国の企業だ」と思われることこそが究極のグローバル化であり、成功だという風潮の方が強い。特に中国においては、と言えるかもしれないが。
 従って上海万博では、中国にある海外企業の現地法人が、「中国企業」として万博に関与するというのが新しい現象だ。
 上海万博の計画は20年ぐらい前から水面下で進められてきた。まだ浦東に高層ビルは一つもなく、畑と工場と民家だけだった時代である。今日の上海の経済的繁栄は想像もできない時代から、いつかはオリンピック、やがては上海で万博と関係者は構想を練ってきた。20年前、私も上海万博を企画する会議に何度か出席したことがある。
 その時代から構想があったからこそ、浦東、浦西の両会場とも上海市内の中心部から地下鉄で10〜20分程度といういわば上海の真ん中に広大な用地が確保できたといえる。浦西側の万博用地は清朝時代からの歴史を持つ江南造船所の跡地である。

きれい・かわいい・きもちいい

 過去の万博はエッフェル塔や太陽の塔のようなシンボリックな建築物、流線形等の新しいデザインを生み出してきた。2010年の上海万博で日本産業館は「きれい・かわいい・きもちいい」を日本語のままテーマとして発信する。この三つの言葉に、日本企業の発想の原点、ものづくりの質、気配りのあるサービスが象徴されているということだ。如何。

※ ローマ数字の3

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