from America

2008.8/vol.11-No.5


新聞広告の「世の中をざわめかす」力

6月6日フィラデルファイア・インクワイアラー紙  6月6日付フィラデルフィア・インクワイアラーに、1994年創業の新興航空会社デリーエアの広告が多数掲載され、大きな話題を呼んだ。なんと「体重で航空運賃が決まる」というのである。ついに燃料高騰の影響もここまで来た。同社は低排出ガスをうたう環境に優しい航空会社で、「より重いものを運ぶには、より多くの燃料が必要になる」という非常に公平な理論を展開している。気になる運賃は、フィラデルフィア〜シカゴ間(片道)が1ポンド(約450g)あたり1.4ドル、フィラデルフィア〜ロサンゼルス間が2.25ドルで、体重130ポンドの私はシカゴまで182ドルとなるが、多数の米国人よりは軽いこの体重でも他社と比べてやや高めで、予約前にダイエットすべきと思わせる絶妙な設定である。同社の広告は、オンラインニュースサイトPhilly.comと、系列紙のフィラデルフィア・デイリーニューズにも掲載された。
 ここでネタばらしをすると、実はこの広告、掲載各メディアを所有するフィラデルフィア・メディアホールディングスが仕掛けたフェイク広告である。同社広報のデヴァイン氏は「この広告の目的は、我々のメディアが広告主の認知度を向上させ、反響を増やす力があることを示すこと、そして皆に笑顔になってもらうことだ」と語っている。
 実際に広告に釣られてデリーエアの公式サイト(http://www.flyderrie-air.com)を訪れた読者は、「デリーエアは実在しません」という大見出しを見て、初めて真実を知ることになる。しかしこのサイトが充実していて実に面白い。料金システムの説明から、創業者ディック・デリー(当然実在しない)の苦労話まで書かれており、冗談とわかっていてもつい読み込んでしまう。そしてサイト下部には改めてフィクションであることの説明、そして「ちょっとからかっただけです」との言い訳まで用意されている。
 肝心の反響は、同公式サイト内の発表によると、広告掲載からの3日間で同サイトは270万ヒット、21万ページビューを記録。アクセス数で、実在航空会社サイトの2倍以上にのぼった日もあるという。またこの試みを報じたメディアも多く、USAトゥデーを始めとする有力紙や、エディター&パブリッシャーなどの業界誌、さらにはフォックスなどのニュース番組でも紹介された。新聞広告原稿・サイトデザイン共に秀逸であり、その点でも業界誌「クリエイティビティ」で取り上げられるなど、様々な二次露出効果を十分に得ることができている。
 フィラデルフィア・メディアホールディングスは、「秀逸なクリエイティブやアイデアが、その地域トップの新聞・ニュースサイトに掲載された時、その効果は絶大なものになる」と述べている。確かに今回の試みにより、一躍フィラデルフィア・インクワイアラーという紙名は全国に響いた。苦戦の続く米新聞業界であるが、新聞広告にはまだまだ世の中を動かす力が十分にあるようだ。成功の鍵は、アイデアを生み出せるかどうかにかかっている。

デリーエアの公式サイトの画面
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