栞ちゃん

2008.7/vol.11-No.4


shiori_chan

Vol.13  まほちゃん。

それは六つとか、七つとか、そんな頃だったでしょうか。

お休みの日に、家族で富士山のまわりをぐるっとドライブしているとき。
その時々で見え方が変わってゆく山の姿に気がついてしまった私は、
「富士山ってー、四つあるんだよね!」
という大発見を得意気に披露して、
向こう3年くらい、親兄弟からネタにされ続けたことがありました。
まだ小さい女の子の無邪気なまちがいも、まったく容赦しない人たち。

たまに、ふとそんな他愛もないことを思い出す。そして、
あの頃に帰りたいなあと、ちょっぴり思う。

家族といっしょに、他愛もない思い出をたくさんつくった、あの頃に。

でも帰ることはできないから、人はきっと、その想いを次世代に託してゆくのでしょう。
いつか帰りたくなるような今日を、今度は子どもにも残してゆく。
人間の営みって、その単純な行為の、膨大な繰り返しなのかなと思ったりするこの頃。

「まほちゃん/オシリス」島尾伸三。
この写真集には、そんな「帰りたい」がいっぱい詰まっています。

豪快に散らかった部屋で、幼い頃のしまおまほさんが、強い眼差しでこちらを見つめている。
まほちゃんは、布団でお母さんとゴロゴロしたり、小さい箱の中に無理やり入ったり、
テレビで見た変なポーズをとってみたりと、やりたい放題。
その、「生きてる」ってカンジが
子どもが生活するって、そうだこういうことだったよねと思い出させてくれます。
野蛮で、なまなましくて、いつかは終わってしまう夢のような時。

見ているうちに、思わず島尾家に帰りたくなる、そんな一冊です。

そして巻末の、しまおまほさんの言葉を読むと
家族というものについて、これ以上の言葉はないなあと思うのです。

「自分が大きくなったことを少し申し訳なく思う時があります。
わたしが大人にならなければ、
わたしたち家族は小さな家族のままだったかもしれない。
小さな部屋ひとつの中家族3人で大きな窓から陽射しをあびて、
いつも昼寝をしていたかもしれない。
時に他人を家族よりも大切に思う事なんて、大きくならなければなかったのに、と。
でも、(中略)
在り方は変わっても、お互いを想う気持ち、距離はいつまでも同じです。」

みんなの今日が、いつか帰りたくなるような今日でありますように。

国井美果(文)
ライトパブリシテイ コピーライター

本誌デザイン
帆足英里子(デザイン・写真)
ライトパブリシテイ アートディレクター

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