インテグレーテッド・コミュニケーションの時代

2008.7/vol.11-No.4


ブランデッドコンテンツの開発プロセス

 「マス広告の広告スペース内をクリエイティブすればよい時代」は終わりつつある。企業はWebサイトという自社メディアを手に入れたわけで、まずはブランデッドコンテンツを開発し、それをコミュニケーションチャネルごとに最適化する考え方に注目している。
 サブサービエントチキンなどの話題のキャンペーンを次々に世の中に送り出しているバーガーキングのマーケティング担当者は次のようにコメントしている。
 「広告枠なんて誰でも買えます。我々は、消費者にウケる独自コンテンツを制作して成功したいのです」「(広告でなく)コンテンツによって創出されるシェアオブボイスこそ、メディア過剰環境で消費者の心をつかみ注目を引き寄せるのです」
 この考え方には、まず広告の出稿量がすなわち効果だという発想が既にない。エンゲージメントベースでものを考えれば、刺さらないコンテンツをいくら大量に流しても無駄であることと、コンテンツが刺さっているのかどうかは、Webサイトというインタラクティブな装置ではすぐに把握できるということがある。
 だからこそ、「コンテンツシェアオブボイス」とでも呼べる考え方になっている。単純にテレビのGRPでシェアオブボイスを測るのではなく、コンテンツがいかに話題になっているのか、ネット上の反応(アクセス数だけでなくブログやSNSでの書き込み数など)で把握しようというものだ。
 こうしたブランデッドコンテンツが重要な時代になるなかで、その開発プロセスやスキルが広告を作り出す側の重要なテーマとなっている。

 「インテグレーテッド・コミュニケーション」の考え方では、受け手である消費者側に主導権があることを前提に組み立てていかなければならない。ブランドをどう意識するかは消費者側がコントロールしているといってもいい。こうした環境下では、「消費者のインサイトの発見」が極めて大事なプロセスとなる。
 商品であるプロダクトのUSPからそのベネフィット訴求のためのメッセージ開発という従来の送り手主導のプロセスだけでは、十分に現代のコミュニケーション実態を反映させたものにはならない。
 消費者インサイトの発見には、いくつかのポイントがある。
(1) 消費者の生活意識のトレンドを読み取る。
(2) 消費の文脈(コンテキスト)を読み取る。
(3) カテゴリーの本質的な体験実態を読み取る。
(4) ブランド固有の体験実態を読み取る。
 こうしたインサイト発見のための構図がある。この構造をおさえておくとより発見しやすくなるが、切れ味鋭い洞察にはやはり才能が必要だ。

消費者インサイトの発見構図

 その上で、「ターゲットインサイトの発見」からターゲットの意識(あるいは意識下)にある価値(コアバリュー)の発見があり、それらの基盤の上にコンテンツ開発が行われることになる。コミュニケーションプランの開発の理想的なプロセスは、
(1) ターゲットインサイトの発見
(2) コアバリューの発見
(3) メッセージ(コンテンツ)の開発
(4) 効果的・効率的接点の検証
(5) 接点によるアイデア
(6) 接点プランニング
(7) 予算設定
となる。とはいえ現実的なビジネスでは、この逆に進む場合が多いだろう。ただ、アカウントプランナーは常にこうしたプロセスによるコミュニケーション開発を強く意識しなければならない。本質は、「広告クリエイティブ」ではなく「ブランデッドコンテンツ」を創らなければならないこと、そして消費者が主導権をもつコミュニケーション社会にあって消費者インサイトを起点とする開発が必然となるということだ。
 また、アイデアの創出には、コミュニケーションコンテンツから接点を発想する方向と、接点からコンテンツや表現方法を発想することが考えられる。この双方を相互に交錯させて、また新たなアイデアを生むことが必要になってくる。従来クリエイターとメディアプランナーはあまり交わらないで仕事をしてきたと思うが、これからはチャネルプランナーとコンテンツプランナーはお互い融合せざるを得ない(別々である必然性もあまりない)。
 こうしたプロセスを踏むとおそらく今後は、従来より「広告らしくない広告」が増えるかもしれない。送り手主導のメッセージは、受け手主導のメッセージ(コンテンツ)開発にかなりシフトする。

コミュニケーションプランの開発プロセス
 昨年、米国ミラービール社のWebサイトで展開されたコンテンツは、実に不思議な広告らしくない広告であった。「ミルウォーキーベストライト」という商品(缶ビール)をキャノン砲から撃って、ひたすら様々なものを標的にして破壊するシーンが続く。商品を砲弾に見立てること自体、広告としては通常考えられないことだが、このコンテンツは「ターゲットインサイトの発見」をベースに創られていることが分かる。
 このブランドのテレビCMのコピーは「男は男らしく振る舞うべきだ。ライトビールはビール本来の味がするべきだ」というもの。男らしくない振る舞いを少しでもすると巨大缶が空から落ちてきて下敷きになる滑稽なCMである。
 ターゲットの「悪ガキっぽい男同士の仲間でする生活シーン」に対する価値観をコアバリューとしてメッセージの開発と、コンテンツ開発を行っている。その世界観へのターゲットの共感が狙いということだろう。
 このように、特定の広告フォーマット上のクリエイティブを前提としないブランドのコンテンツづくりと、ターゲットである消費者サイドに立ったメッセージ(コンテンツ)開発というのが、次世代のコミュニケーション開発プロセスの2大トレンドということになる。
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