CURRENT REPORT

2008.7/vol.11-No.4


保障をシンプルにわかりやすく契約見直しを提案する「ネット生保」

 日本の生命保険の世帯加入率はおおよそ9割に上り、その加入世帯における生命保険の年間払込保険料は50万円を超える。払込期間は数十年にわたることから、住宅に次ぐ高額商品だ。
 このように高価な生命保険好きの日本人だが、契約内容をきちんと把握している人はどれだけいるのだろうか。
 「生命保険の、もったいないを、なくしたい。」というフレーズで、既存の保険契約の内容見直しを提案するインターネット専業のライフネット生命保険が5月18日、営業を開始した。
 同社取締役副社長の岩瀬大輔氏に保険についての考え方などについて話を聞いた。

ライフネット生命保険株式会社 取締役副社長 岩瀬 大輔氏
――生保でもネット販売が始まりました

 2006年4月の保険業法改正により、従来、金融庁の認可事項であった保険料について、各社が経営の裁量で決定し売り出せるようになりました。これによりチャネルに合ったプライシングが可能となったことが大きなきっかけになりました。
 そもそも生命保険は契約者の加入期間が長期にわたるストック型のビジネスですので、既存の生命保険会社では、なかなか新しいことに手を出しにくいということがあります。10年、20年と契約されている顧客を大事にしなければいけないのに、いきなり保険料が半額の新商品を販売したら収益基盤を揺るがす事態になってしまいますから。
 また、高度な専門性を要求されると同時に多額の資本が必要ということもあり、新規参入も非常に難しい業界なのです。最近になって、ようやく数社の参入が認められていますが、昨春の段階では、過去5年で業務免許を取得できたのは1社か2社に過ぎなかったのです。
 そういった点に、証券や銀行といった他の金融機関と比較して、ネット販売が遅れていた理由がありました。

――ライフネット生命の特長は

 これまでの日本の生命保険の売り方は、営業員を使って人海戦術で契約を取りに行くという、非常にコストがかかる販売モデルです。もちろん、そうした手厚いサービスを受ける対価として高額な保険料を払ってもいいというお客様はいいのですが、中には自分で保険を選んで支払額を節約し、浮いたお金を別の使途にあてたい方もいるでしょう。
 そうした方々への選択肢として、わかりやすくシンプルな商品をどこよりも安くご用意し、インターネットという24時間365日アクセスできる販売チャネルで、営業員のプレッシャーを受けることなく、ご自身が納得するまで調べた上でご契約いただくシステムを提供します。私たちの考えは、生命保険のコストを削減し、保険料は最小限にとどめるべきだということです。

――商品構成も非常にシンプルですが

 定期死亡保険の「かぞくへの保険」と終身医療保険の「じぶんへの保険」の二つの商品を用意しています。
 生命保険商品は、死亡に備えるもの、病気やケガに備える医療もの、そして老後に備える貯蓄性のあるものに分類できます。多くの商品はその三つの組み合わせによって複雑で分かりにくくなっていますので、原点に立ち返って本当に必要な商品を作りたいと考えました。
 死亡保険は、例えば保障が必要だけれども、お子さんが独立するまでの限られた期間であったり、若くて収入が多くはないので高額な保険料は払えないといった方々に対して、必要最小限の保障を実現しようというものです。医療保険については高齢になってからのニーズが高まるので、若くて健康なうちに一生涯の保障を提供する、これもシンプルな入院保険を用意しました。貯蓄性のあるものについては、現在の超低金利状態では生命保険会社は長期で有利な商品は作れません。その点は他の金融商品で運用していただこうと割り切って考えています。

――銀行の窓口販売も全面解禁となりました。他社も営業戦略を見直してきますね

 ネットで生命保険を売ること自体はなんら新しいアイデアではありません。ビジネス全般で言えることですが、大切なのは、アイデア自体ではなく、そのアイデアを丁寧に作り込んで絶えず改善を続け、簡単にマネのできないものにすることです。また、金融商品で特許はとれないので、ある商品がヒットすれば、すぐに同様のものが市場に出てきます。ですから商品による差別化要素もほとんど無く、つまるところはブランド、価格、サービス面での競争なのです。
 私たちは何もない新しい会社ですが、フレキシブルに動けるという強みを生かしてお客様のニーズに耳を傾け、皆さんが求めている商品を形にしていく。いいブランドを作り、どこよりも誠実で、親切で、便利かつ安いサービスを提供していくことで、価値が高く、競争力もある会社に成長できると思っています。
 生命保険の市場規模は諸々合算して45兆円です。GDPは500兆円ですので、日本で創出された付加価値のざっと1割が生命保険市場に流れているということですから、いかに巨大な市場かということがご理解いただけると思います。そこで1%でもシェアを獲得すれば、4500億円の売り上げになるわけです。ニッチプレーヤーでも十分に戦えるんですよ。

ライフネット生命 http://www.lifenet-seimei.co.jp/

5月18日 朝刊

(梅木)

取材メモ

ライフネット生命  「ふつうの消費者の視点に立った、まったく新しい生命保険会社を創りたい」。30年にわたり日本生命で生命保険の仕事に携わってきた出口治明社長のこの思いが、ライフネット生命設立のきっかけだった。
 資本金等は132億20万円。マネックス・ビーンズ・ホールディングス(株)、三井物産(株)、(株)新生銀行、(株)セブン&アイ・フィナンシャル・グループなど、革新的な金融サービスを創っていくという理念に賛同した企業が出資している。
 販売窓口となるウェブサイトでは、保険商品の説明や消費者のライフステージに合わせた必要保障額の試算、生命保険見直しシミュレーションのほか、教育系のコンテンツも充実させ、保険に関する知識もそこで得られる。わからないことはコールセンターで問い合わせ可能だ。
 「ぜひ、一度当社のウェブサイトにいらしてください」と岩瀬氏。

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