Creativeが生まれる場所

2008.7/vol.11-No.4


リアリティーを前面に企業のスケールを表現する

内藤 昇氏

1967年新潟県長岡市生まれ。青山製図専門学校卒業後、制作プロダクションを経て、1994年ドラフト入社。日産「ステージア」、モスフードサービスなどを担当。広告からSP、雑貨など幅広く制作を手掛ける。98年カレンダーで通産大臣賞、日独カレンダー展SILVER賞、02年JAGDA新人賞など受賞歴多数。

 5月13日、新日鉱ホールディングスの企業広告キャンペーンの新聞広告が出稿された。同社は昨年5月と7月に「Made in Japanの資源。」、昨年の9月と今年の3月に「資源イノベーション。」をテーマにした新聞広告を出稿している。いずれの広告も、同じトーンのビジュアルで貫かれてきたが、今年5月の広告では力強い雰囲気を纏った人物を中心に据えたドキュメンタリータッチの表現で、ビジュアルを大きく変えている。
 キャンペーンの考え方、そしてクリエイティブの手法や広告とSPの違いについて、ドラフトのアートディレクター内藤昇氏に聞いた。

──新日鉱ホールディングスの企業広告キャンペーンの考え方は。

 このキャンペーンの目的には三つの大きな柱があります。一つ目はIR、二つ目はリクルート、そして三つ目はその土壌となるような、広く一般の人々への認知度・好感度の向上です。
 新日鉱ホールディングスはジャパンエナジーと日鉱金属の2社が中核となった新日鉱グループの持ち株会社です。ジャパンエナジーは、ガソリンスタンドのJOMOステーションで一般消費者にもなじみがありますが、それもジャパンエナジーの事業の一部に過ぎません。事業の中心となっている石油資源開発のほか、石油精製や石油化学を事業内容とするB to B企業です。一方の日鉱金属も、資源開発や金属製錬、環境リサイクルなどを行い、メーカーに素材を供給するB to B企業ですから一般消費者とは直接結びつかないし、彼らからは見えにくい企業なのです。ところが、石油にしても金属にしても、驚くほど高度な技術を持っているのですね。
 そこで、昨年5月の第一弾では、新日鉱ホールディングスの取り組んでいること、“プラスチックからの石油の精製”や“世界シェア7割の圧延銅箔”など具体的な話をチャーミングに表現して、一般消費者との距離を縮めようと考えました。

──新聞広告は一貫してページ送りにしていますね。

 「石油と銅の会社」ということを表現にするには、ページ送りが最適だと考えました。見開き30段だと、新聞を開いた瞬間に「あ、広告だ」と思ってスルーされる可能性があります。ページ送りならば、片面に記事があるのですぐにスルーされることが少ないと考えました。それから、電車内では新聞を折って読むので、自分が記事を見ていれば、向こうの人が広告を見てくれますよね(笑)。

本業そのものの魅力を

──「Made in Japanの資源。」「資源イノベーション。」と今回の「私たちの商品は地球資源です。」では表現が大きく変わったように見えますが。

 そうですね。「Made in Japanの資源。」「資源イノベーション。」では技術や設備をテーマに広告を展開していました。ビジュアルも、手帳に手書き文字のグラフィックを置くなど読みやすさを意識しています。しかし、技術の話は各論になるほど難しくなりがちです。
 そこで今回のキャンペーンからは、もっと素直にグローバル企業としてのスケール感を出そう、本業そのものの魅力を前面に出していこうと思いました。

2007年5月14日 朝刊 5面
7面

リアルとリアリティー

──今回の広告に登場する人物ですが。

 石油編、金属編ともに現場で実際に指揮をとっている方々です。今回の広告では人物をメーンにした写真ということだけは決めていました。実際の現場で働く人をビジュアルにすることで、本業の魅力が伝えられると考えたのです。ですから、現場の熱気が伝わるリアリティーのある写真が必要だったのです。
 金属編の話になりますが、この人は、チリの採鉱場で露天掘り銅鉱山の現場責任者の方です。彼がいなかったら撮影はできなかった。テレビCMではダイナマイトの発破シーンもあるのですが、発破ポイントは日々変わるのです。それを、彼に教えてもらいながら、撮影しました。

──リアルなビジュアル作りにこだわりがあるようですが……。

 よく“リアル”と“リアリティー”は同義語のように使われますが、僕は違うものとして捉えています。リアルというのは、文字通りの意味ですが、リアリティーというのは、受け手がそれをリアルっぽく感じているかどうかだと思っています。要は受け手にどう伝わるかの問題ですから、僕はリアリティーのある作品を作ろうと思って、「こうした方が受け手にリアルに伝わる」と判断すれば後から写真に手を加えたりもします。ただ後で加工したり手を加えることを撮影中に考えてしまうと、撮影現場での仕事がどうしても雑になりますから、時間が許すかぎり、納得するまで現場でリアルな写真を求めることはとても重要なことだと思っています。

──どのようなディレクションをカメラマンにしていますか。

 広告写真はある程度、作り手の主観が入ってしまうものだと思っています。作り手のフィルターを通すので、完全に客観的になるのは難しいですね。しかし、それは決して悪いことではないと思っています。「ここは伝わるポイントだ」「ここは伝えたいところだ」という思いがなければ、その写真は強い力を持ったものにはならないと思っています。ファインダーを覗くのは僕ではなく、カメラマンなので、僕は最低限の指示を出すだけで、彼らの個性や考え方を尊重しています。

2007年5月13日 朝刊 5面
7面

感動をそのまま伝える

──内藤さんは広告だけではなくSPも手がけていますが、何か違いはありますか。

 僕は、基本的に広告もSPも同じだと思っていて、おいしそうなポイントを切り取って表現したり、ニュースを伝えたいと思っているだけです。例えば、クライアントの扱っている商品が、農家の作っている有機栽培の野菜ならば、実際にその農家に行きます。そこで実際にその野菜を見ると、すごく生命力にあふれている。そこで自分が感動したものを、そのまま表現して伝えるということですね。
 広告もSPも基本的に「売る」という目的に違いはありません。そのために、企業のしていることを、リアリティーを持たせて伝えようとしているだけなのです。

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