立ち読み広告

2008.6/vol.11-No.3


ベストセラーを後押しする読者の大反響

 新刊を出せば必ず売れるという作家が何人かいる。固定ファンの層が厚い作家だ。彼らには共通点がある。過去にベストセラーを出していること。そして、ベストセラーの後も期待を裏切らない作品を発表し続けていること。
 東野圭吾もそうした作家の一人だ。2006年に『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞する前からすでに人気作家だったが、受賞後は出す本、出す本、必ずベストセラー・リストに登場する。最近では『流星の絆』(講談社)がそうだ。『週刊現代』に連載された長編である。

10代から90歳までの感動の声

 5月1日朝刊の全5段広告がおもしろい。
 メーンのコピーは「東野作品最速32万部突破!」。数ある東野圭吾の本の中でも、本書の売れ行きスピードが最速だというのである。このコピーはベストセラー作家じゃなきゃ成立しない。「永江作品最速3千部突破!」ではコピーにはならない。
 だがそれよりも私がこの広告に惹かれたのは、「全国から感動の大反響」として紹介されている読者の声の数々である。
 「東野圭吾さんの新作を待っていたのでうれしかった」と書いているのは愛媛県10代女性中学生。「いやぁー参りました。一本とられました」というのは茨城県70代男性。「“感服の極み”です」は東京都90歳女性。「東野ワールドの決定版だと思う」と岐阜県50代男性販売員。
 と、全部で19人の声が掲載されている「大反響」のうち四つを書き写したのだが、お気づきだろうか。女子中学生から50代男性、70代男性、そして90歳女性(彼女だけ世代ではなく年齢で書かれている)まで、幅広く「大反響」を寄せているというのである。のこりの15人も、10代から50代まで男女まんべんなくある(唯一ないのが80代の男女。80代の男女は東野圭吾を読まない? まさか。たんなる偶然だ)。

好奇心をかき立てる感想の数々

 しかも、「大反響」の内容が多様だ。「大切なものがたくさんつまった作品」「心の琴線に触れる」という声もあれば、「こんなに引き出しの多い作家がかつていたのだろうか?」「どこからこんな想像力が生まれてくるのか? 大きな感銘を受けました!!」という声もある。読む人によってさまざまな感想を抱く作品なのである。
 笑ったのは「読んでいるとハヤシライスがやたら食べたくなる」というコメント。これは読者の声ではなくて、TBS系番組「王様のブランチ」でBOOKナビ・コーナーを担当している松田哲夫氏(筑摩書房専務)の言葉である。読者の声にある「兄弟の絆」や「人を変える」や「血というものの意義」といった言葉に好奇心をかき立てられた人は、松田氏の「ハヤシライス」でますます「なんだ? なんだ? これは読みたい!」と思うことだろう。
 私も『流星の絆』は発売直後に近所の書店で買って一気に読んだ。ピカレスクロマン、コンゲーム、復讐譚、ロメオとジュリエット的悲恋、B級グルメ、とさまざまな要素が織り込まれた力作である。5月1日のこの広告を見て書店に駆けつけ、充実したゴールデンウイークを過ごした人も多いことだろう。
 まだ読んでいないという方は、ぜひご一読を。

5月1日 朝刊
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