CURRENT REPORT

2008.6/vol.11-No.3


「うま味」発見から100周年 世界の食卓に向け情報発信

 人間が感じる味の中で、他の味を組み合わせてもつくることができない基本的な味は「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」そして「うま味」の五つと言われている。その「うま味」のもとであるグルタミン酸を世界で初めて調味料として商品化したのが味の素だ。
 「うま味」発見から100周年に当たる今年、同社では世界に向けた情報発信を目的とした取り組み「味の素ルネッサンス」を展開している。広告部長の仲小路啓之氏に話を聞いた。

味の素株式会社 広告部長 仲小路 啓之氏
――味の素ルネッサンスとは

 東京帝国大学理学部化学教室教授であった池田菊苗博士が昆布の味の成分がグルタミン酸であることを発見し、その独特の味を「うま味」と命名しました。グルタミン酸塩を主成分とする調味料製造法特許を取得したのが1908年7月25日ですので、今年はちょうど100周年にあたります。
 この発見によって池田先生は日本の10大発明家に選ばれているのですが、実はこれに続く発見とも言うべき成果が社内の最近の研究で明らかになりつつあります。
 人間の舌には味蕾という味覚細胞が寄り集まった器官があり、「うま味」の受容体があるわけですが、胃の中にも舌と同様の受容体があることがわかってきたのです。胃で「うま味」を感知して脳に情報が送られると消化が促進され、例えば口から栄養を取ることができない病気の方に流動食などでグルタミン酸を加えることにより、消化が良くなることも実証されています。つまり、健康な方が食べておいしいだけではなく、病気の方の栄養面もサポートできるようになります。
 もともと、池田博士がドイツ留学時に国民の栄養状態のよさを目の当たりにし、日本人の栄養状態を、おいしく食べることで改善できないかと思ったことがきっかけとなり発見された「うま味」ですが、こうした成果が認められれば、豊かな食生活に寄与するだけではなく、皆様の健康に役に立つという新たな価値も加わるのです。
 私どもは「うま味」発見100周年、そして次の100年を牽引するこの新しい発見を契機に、味の素ルネッサンスというキーワードで「うま味」が持つ価値を再認識し、世界に広めていこうと考えています。

――どのような予定ですか

 「うま味」に関する講演や工場見学、著名料理人によるうま味試食会を通じてお客様の理解を深めていただく、うま味セミナーはすでに実施していますし、昨年4月からは「ウチゴハン」という1社提供のテレビ番組も始まりました。食の楽しさや家族の絆をテーマにしていますが、私たちは食のリーディングカンパニーとしてそうしたことの大切さも伝えていくべきだと考えています。
 広告についてはこの3月から、新聞広告およびテレビCMで、「うま味」の啓発と「味の素」の製品広告という2本立てで展開しています。キャラクターに起用した俳優の小栗旬さんが「うま味」編では池田博士に扮してその価値を伝え、「味の素」編では料理に挑戦することで利用機会を提案し、若年層の共感を呼ぶことを狙っています。
 今年の10月には世界料理オリンピックがドイツで開催されますが、「UMAMI TEAM」というユース日本代表派遣に協賛し、世界最高のコンテストで「うま味」の普及を目指します。
 ほかにも日本栄養士会が全国で行う栄養士向けの勉強会に協賛し、「うま味」に対する理解を深めていただくといった取り組み、さらには国内外の研究者を対象とした海外での学会活動、池田博士の母校である東京大学との共催でうま味発見のドキュメンタリードラマ「AMBITION(志)」上映会をはじめ、シンポジウムなどで「うま味」普及を目的とした活動も展開していきます。
 こうした「うま味」の研究推進、東京大学との産学連携企画とあわせて情報発信を推進していきます。

――消費者からはどのような反応が

 現在放映しているCMでは、卵かけご飯と「味の素」の組み合わせを提案し、量販店の卵売り場とも連動を図っていますが、おかげさまで「味の素」の売り上げが2けた以上の伸びをみせています。コンビニエンスストアでは瓶入りの製品が売れているということですから、初めて使うような若い人に受け入れられているということです。
 私どもの情報発信に共感されて買っていただいていると思うのですが、新規ユーザーの獲得も狙いの一つですから、非常にうれしいことですね。

――それにしても息の長い商品ですね

 製品発売から100年近くたった今では100か国以上の国々でご利用いただいており、市場規模も昨年は約200万トンに到達しました。年率では3〜4%の伸びを記録しています。日本ではあまり知られていませんが、西洋料理のシェフもよく使っているんですよ。
 現在、世界中で健康志向の高まりとともに日本食がブームとなっており、「だし」や「うま味」が注目を浴びています。今後も「うま味」物質に関する安全性、有用性を広く伝えて、世界の食卓においしさと健康で貢献する企業姿勢を訴えていきます。

3月30日 日曜版

(梅木)

取材メモ

 いまや「うま味」は「umami taste」として世界の共通語になっているほどだが、味の素KKの2007年度3月期決算では、海外食品事業が売上高で前年比122%、営業利益では147%と大幅な増収・増益を記録した。
 家庭用・外食市場向け『味の素』はアジアや西アフリカ諸国で、風味調味料はアジアや南米で大きく伸長。その他にも即席めんや缶コーヒーがアジアで伸びているという。
 「国内食品事業でも増収を記録していますが、アジア地域での売り上げが相当伸びてきています」と、仲小路氏。
 例えばベトナムでは『Aji−ngon(アジゴン)』という豚のエキスを使用した風味調味料を2000年から販売しているが、これがスープや炒め物に使われ、売り上げが拡大している。もちろんアジアと一言でいっても、国ごとに食生活が異なるし、食文化には様々な障壁が存在するが、「それぞれの国で、消費者の文化、嗜好に適した味、パッケージデザインなどを考慮した商品をきめ細かく開発し、プロモーションを支援し、丁寧に売り上げを伸ばしていくという作業の結果ではないでしょうか」と総括する。

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