経済カフェテラス

2008.6/vol.11-No.3


クイズ番組で推理する成果主義の「正解」

経済カフェテラス

 「成果主義ハンタ〜イ」と声高に叫ぶのは、40代、50代のサラリーマンたち。そんな時はたいがい片手にビールのジョッキが握られているから威勢がいい。

成果主義に付きまとう問題点

 頑張って成果をあげればそれが給料や待遇に跳ね返ってくるのは嬉しいものだ。とくに20代、30代の頃は、仕事の能力も未知数だから、失敗も多いが、「思い切ってやればこんなこともできるんだ」と、それこそ自分で自分を褒めてやりたいという気分になることはしばしばだろう。そしてそれが周囲から評価されたら、ますます頑張ろうと思う。成果主義はやりがいに結びつく。
 ところが、40代を過ぎ、自分の限界も見えてきた。管理職になり、今度は部署全体で成果をあげなければならない。一人一人の成果を判定し人事考課もつけなければならない。そうなると少し事情が変わってくるらしい。
 成果主義には二つの問題点がある。第一には「成果主義が求めているのは部内の人間をAからEまでランクに分けること。それぞれのランクは全体の何%と決まっているから、優秀な人が多い部でも、そうでもない部でも、どの部署でも必ずほぼ同じ形の能力分布図ができあがる。これが本当に成果の判定になっているのだろうか」ということである。
 しかし本当の問題はここから先だそうだ。最近は日本でも人材の流動化がすすんでいるが、正社員とよばれる人たちは自ら転職することはあっても、会社が解雇するということはほとんどない。成果主義の見本であるプロ野球選手などとは大きくちがう点だ。成果主義と聞くと「A」に目がゆきがちであるが、問題は「E」だという。
 つまり日本では「E」評価になった人を解雇する仕組みがないから、社内に「E」が蓄積され、企業全体がいつまでたっても本当の意味の成果主義集団にならないというのである。
 二つ目の問題点は、成果達成を意識するあまり、高い目標や新規分野にチャレンジしようという人が減ったことだ。チャレンジに失敗し「目標未達成」となるよりも、ここは確実なところで手堅くポイントを稼ぎたいという心理らしい。
 無難に小さくまとまってしまう、自分の評価に直結するような己が所属する事業部の問題には熱心であるが、全社的な視点で物事を判断しようとしなくなった、という声も聞かれる。

イラスト

タイトルカット&イラスト・谷山彩子

チーム型が主流のクイズ番組

 今、クイズブームだといわれている。最近のクイズ番組は、小学生や中学生の子供でも答えられそうな難易度の低い問題を、何問も連続して完璧に答える、あるいは難易度に差がある問題をチーム内で分担してクリアしていくというタイプのものが目立つ。
 たとえば「スが頭につく国名を五つあげなさい」という問いに、5人が順番に一つずつ国名を挙げて行き、制限時間内に五つ答えられればOKというわけだ。チームで協力して答える場合、難しいのは、チームの顔ぶれを頭にいれておき、「自分がどの答えをいうと、全員が答えられるか」という結果をある程度予測しなければならないことである。
 「ス」がつく国であれば、スイス、スペイン、スウェーデンあたりは思い浮かぶが、スリランカ、スロベニアあたりの国名がでないと「制限時間内に五つ挙げる」というハードルをクリアできない。
 あるいは漢字の読み取りなどが出題されたら、漢字に自信のある人は難問に果敢にチャレンジしなければならない。最後に漢字が不得手な人に難問が残ったら、チームとしてこのクイズをクリアすることはできないからだ。
 暗黙のうちに、おそらく無意識であろうが、お互いの能力を見抜き、役割分担をする「阿吽の呼吸」にこの手のクイズ番組のおもしろさがある。
 そしてこうしたクイズ番組から新しいタイプの人気タレントが生まれようとしている。
 小学生でも答えられそうな問題でもはずしてしまうタレントたちが「おバカキャラ」とよばれ好感度が高いのである。失敗してもめげることがなく、「素直だ」「明るい」「裏表がない」ということで人気がある。彼らの「場を楽しくする」才能が、番組に必要な存在として認められているということだ。

「おバカキャラ」の役割

 一昔前にはやったクイズ番組では、超難問に挑戦、独力で次々と正解し、勝ち進んでいくチャンピオンが格好よかった。彼らは自分だけの力で高額の賞金を勝ち取ってゆく。成果主義の勝者と似ている。
 会社の中が成果主義で徹底されればされるほど、おそらく「成果主義万歳!」と思っている人はごく一部なので、その他大勢の人々は、どこかで違う価値観、違う評価基準を求めるようになる。
 いま、その一つが「おバカキャラ」への支持である。また、凡人がチームとなって、場の空気をよみながら微妙なコンビネーションでクイズの全問正解という難関をクリアするという発想のクイズ番組も誕生した。
 社内でプロジェクトチームをつくる時、優秀な人ばかりを集めるのもよいが、間違えてもニッコリ笑って再挑戦する明るい雰囲気も大事な要素である。
 昨今のクイズブーム。なにかと参考になりそうだ。

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