from America

2008.6/vol.11-No.3


「マイクロフー」、それとも「グーグルフー」?

 去る5月3日、米マイクロソフト(MS)は3か月にわたり交渉を続けていた米ヤフーの全面的な買収を、正式に断念した。買収価格で合意できなかったことが主な理由であるが、米広告業界は完全合併後を見据えてすでに動き出しており、「マイクロフー」という合併後の新会社を指す造語がすでに市民権を得るほどに浸透していた。
 多くのメディア広告会社は、買収が成立しなかったことに大きな落胆を見せている。WPPグループのインタラクティブ広告会社Beyond Interactiveのマクファーソン役員は「検索連動型広告市場において非常に残念な出来事」と話し、アバスグループのオンライン広告会社Media Contacts副社長のカスパー氏も「通常、メディア同士の大型合併は広告主の選択肢を減らすため歓迎しないが、マイクロフーの実現はむしろ選択肢を増やすことになると考えていた」と述べている。カスパー氏の発言が示しているのは、米グーグルの独り勝ちへの恐怖である。Hitwise社によると、米国での検索シェアはMS(7%)とヤフー(21%)を合わせても、グーグル(66%)の半分にも満たない。ここで両社が力を合わせて、グーグルによるオンライン広告の独占状態に歯止めをかけなければ、広告主の選択肢が事実上ひとつしかなくなってしまう。これは広告主のみならず、消費者の立場からしても健全な状態だとはいいがたい。
 買収断念を受けて、ヤフーは提携に向けグーグルに急速に接近した。実際に、ヤフーの検索結果の横にグーグルの検索連動型広告を表示する方向で最終調整が行われている。簡単に言うと、ヤフーが稼いだ「検索」を、グーグルが「販売」してお金にするという提携内容である。これはすでに試験的に運用され、近日中に正式発表が行われると見られている。
 ただし、ここで新たな問題が発生する。そう、ヤフーの分までグーグルが広告を販売するということは、結局はグーグルの独占化につながってしまう、というジレンマである。当のヤフーはそんなことを考えている場合ではないだろうが、2週間にわたって行われた試験運用の際には、米司法省反トラスト局が「独占禁止法に抵触する恐れがある」として調査に乗り出す騒ぎに発展している。メディア広告会社の不安が、見事に裏打ちされた格好だ。
 この状況下で、事態はさらに展開する。破談から約2週間後の5月18日には、MSが買収に替わる新たな提携案をヤフーに提示した。広告業界誌アドウィークによると、ヤフーはまずは得意とするディスプレー広告(バナー広告やバッジ広告など)部門での共同事業を模索する可能性がある。それが本当ならば、検索連動型広告はグーグルと、ディスプレー広告はMSとそれぞれ組みたいという思惑がありはしないだろうか。
 しかし、MSとの提携はグーグルとの関係を悪化させる大きな障壁となるのは間違いない。ヤフーとしては、MSとの破談で訴訟準備中の株主の顔色や、司法省の判断、業界内での立場、そして何よりも自らの生き残りの可能性を天秤にかけて、たとえ日和見主義と言われようが、組むべき相手を慎重に選んでいるように見えて仕方がない。
 オンライン広告はまだ10年強の歴史しかないのにもかかわらず、ここにきて業界再編の動きが著しい。IT業界はドッグイヤーとはよく言うが、変革のスピードが速すぎて業界自身が追いついていないのではないだろうかと心配になる状況である。

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