立ち読み広告 2008.5/vol.11-No.2

記念特大号で振り返るアスリートたちの「特別な一日。」
 ウィンター・スポーツだってあるのだし、スポーツは一年中のものなのに、やはり春になると「さあ、スポーツの季節だ」という気分である。プロ野球が開幕するからだろうか。それに今年はオリンピックの年。毎日、さまざまな種目で代表選手決定のニュースが流れるのでなおさらだ。
 そんな3月19日の朝、スポーツ面には全5段の見開きで『ナンバー』の広告。それも700号記念特大号の広告である。
 大胆なデザインだ。両側にイチロー選手の写真。右側がボールを投げた後の瞬間の、左足だけで全身を支えるイチロー。目がこちらを見ている。左側は大きくジャンプするイチロー。まるでバレエ・ダンサーだ。どちらも野球のユニホームではなく、スーツ姿というところがいい。しかもかなりタイトなモード系スーツである。
 イチロー選手の写真で挟むようにして「700号記念ノンフィクション」の、スポーツ選手(というよりも「アスリート」と言ったほうが『ナンバー』っぽい?)の名前と、タイトル、そして「事件」の日付。たとえば「イチロー 2007.09.29▼対レンジャーズ戦「首位打者を逃した夜」、「三浦知良 1998.06.05▼落選記者会見「フランスW杯との決別」といったように。総力特集は「運命をめぐる物語特別な一日。」である。

ドラマ性を伝える総合スポーツ誌

 『ナンバー』、正式には『スポーツ・グラフィック ナンバー』は、日本のスポーツ・ジャーナリズムを変えた。
 『ナンバー』の創刊は1980年。スポーツ新聞でもなければ、『週刊ベースボール』のような専門誌でもない、これまで日本にはなかった総合スポーツ誌。しかもカラー写真で「見せる」雑誌である。米誌『スポーツ・イラストレイテッド』というお手本はあったにせよ、前例のないものをつくるのは大変だった。
 創刊号には山際淳司のノンフィクション「江夏の21球」が掲載された。編集スタッフとして同誌の創刊準備に加わった山際が、志願して取材・執筆した。このノンフィクション史上に残る傑作は、同誌の方向を決定的にした。700号記念特集「特別な一日。」の諸作品も、「江夏の21球」の延長線上にある、と言っては各作家に失礼だろうか。
 もうひとつ『ナンバー』の方向を決定的にしたのが10号の大特集「長嶋茂雄へラブコールを!」。思いっきり空振りする長嶋選手のモノクロ写真が表紙だ。モノクロ、まして空振りなんて表紙になりえないと思うところを逆手に取った。700号広告のイチロー選手の写真は、10号の表紙へのオマージュと言えるのではないか。特集といい、イチロー選手の写真といい、長年の『ナンバー』ファンの胸を熱くする広告だ。
 時々、もの書きになりたい、という若者から相談を受ける。圧倒的に多いのは「スポーツ・ライターになりたい」という若者たちである。アスリートに会いたい、というミーハーな動機もあるようだが、それ以上に彼らを魅了するのは、スポーツそのもののドラマ性だ。才能、努力、運命、名誉、金銭、およそ地上のあらゆるものが凝縮されているのがスポーツの世界。『ナンバー』はそれを機知に富んだ文章と、美しい写真で伝える。


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