こちら宣伝倶楽部 2008.5/vol.11-No.2

枝より幹、幹より根、根より土
イラスト 新聞の人気コラムで、広告に詳しいコラムニストさんが「ものの売れ行きをきめるのは一に商品力、二に広告力である」という書き出しで、そんなに強い商品がないとしたら、ものをいうのは広告力だと書いておられた。
 驚いた。こんなに簡単に整理されてしまうとあわててしまう。それぞれの現場で幾多の試練に堪えてがんばっている人たちは困ってしまう。ビジネスやマーケティングがこんなに簡単なことだったら人は苦労しない。例によって、とりあえず10項目に整理しなおしてもう少し納得できるようにしておきたい。
 ものが順調に売れて市場から支持され、社業が計画通りすすむにはどんな条件が必要になって、どんなパワーがいるのか、少なくとも次のようなことが必要になるはずだ。

(1)商品力は着眼力と実行力できまる
 ほとんどの商品は、生みだすその企業の中での葛藤の末にでる。そのもとは気配や予兆の察知力であり、個人によるものか、組織や集団のマーケティング力によるもののいずれかになる。可能性の分析力があり、それの読みこみと判断力も間違えるわけにいかぬ。上位での決裁や決断もズレては困る。これらすべてにタイミングがある。一丸となった実行力と結果としての実現力が商品力になる。

(2)営業力は説得力、折衝力のこと
 よい商品ができた。広告宣伝も上等、しかし店頭や売り場におかれていなかったり、あっても目立たず、見つからなければ売れない。つまり営業が気鋭で積極的で、現場である店頭や売り場に強いかどうかで勝負の大半はきまる。量でなく質だ、多い少ないの問題ではない。経営者のフットワークのよさが全体によい影響を与えることが多いように思う。

(3)店頭支援力、店頭影響力が販促力
 いずれの場合でも、つきつめると売り場や店頭は小売業のものでもメーカーのものでもなく、消費者、顧客のものだ。顧客にとってどんな状態がベストか、素敵なことを多く考えて実行したものが市場から評価される。現場に気をつかいつついかに主導権をとっていくかが現場力だ。デスクワークとツールづくりだけが販促と考えては勝てない。タイミングよく顧客と店頭の期待に応えるのが販促だ。

(4)人が生き生きとする組織力と指導力
 一丸になるということは集団力を上げること。これさえうまくいけば大きい会社が小さい会社より強くなるはずだが、そうでもないケースが多いから組織力とそのためのマネジメント力が企業力になる。全体力に精気がないと人は腐るが、順調に軌道にのりだすと組織はおもしろいように好転する。トップマネジメントの人事政策に大胆さが待たれる。

(5)広告力はセンスと自主力と資金力
 すぐにクリエイティブのことを議論したがるが、広告はテーマ(情報)とターゲットの再確認、販売計画の裏付け、商品の完成度を含む市場力の可能性の検討などが優先されるはず。計画や作戦にもセンスが要求される。
 広告主が自ら議論し判断し、広告する決意を全社の意志で納得の共有をすること。さらに大切なことは広告力は資金力と無関係ではないということ。できることしかできない。

(6)全体を考える業界寄与力、貢献力
 自分のところだけがよければよいという考え方は古い。少なくともかかわっている業界全体のためになることを考える。浅はかになってウチだけがよければと考え、業界の悪習になるような迷惑行為は慎むこと。安売りやおまけつき商法、タレント競争などもそのひとつかも知れない。業界のためになること、そのずっと先に地球や環境のことがある。

(7)社員力と内部の人間関係力
 企業は人なりという。当たり前のことだ。一連の企業不祥事をみるとつくづくそう思ってしまう。社員、スタッフの健康と健全、それに忘れてならないのが家族のサポート、家族力だ。この大切さを多くの企業はまだ気づいていない。そのうちきっとこのことをいいだす人がでてくる。もうひとつ大切なのは企業内部での人間関係、ビジネスマンの悩みやストレスの根の大半はここにあるからだ。

(8)ひたすら愚直を貫く誠実力
 人はあまり賢くてもシャープすぎても、けむたがられて寄りつきにくい。ちょっと抜けているくらいで不器用な方が、人間味がでて人を集める魅力をもつもの。企業はいま誠意や誠実、ひたすら真面目を求められるようになっている。ゆっくりだけど、まっすぐ前向いている企業やブランドはイレギュラーな活動はしない。それが信頼になったりする。

(9)少し先をみる 近未来設計力
 日常のことに追われすぎると、足もと主義の今だけ解決に終始してしまう。点でなく線の経営、少し先のことを考え、野心を加えて手の届くサイズのビジョンにする。それが会社の夢だし働きがいや結束のもとになる。これがないから脈絡のないプランで、いつまでたっても意志の一本化ができない。企業の腰を定めること。プロジェクトでも作って近未来の設計について議論するときだと思う。

(10)地域融合と社会関与力
 企業は企業市民としてどこかの世話になって存在している。迷惑のたねであっては困るし、地域の誇りであってこそ根をおろして発展していくものだ。地域と融合しあって、地域第一の経営を大切に、そのよき関係をむしろエネルギーにすることだと思う。ものの売り買いだけの関係でなく、ひろく社会と歩調を合わせ、呼吸を合わせる経営が大事になる。
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 まだ他にも大切なことはある。結局は全体力、総合力であり、マーケティング・センスの力であり、それらが結集してブランドのパワーになっていくのだとわかる。広告は大事だが広告だけいじくりまわし、小さな議論をしているだけでは前へ進まない。目先の現象だけ見て部分の議論ばかりしているときではない。ドーンと大きく行こうではないか。
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