Fashion Insight 2008.5/vol.11-No.2

創業80周年を上海で祝ったサルヴァトーレ フェラガモ

 夢の靴職人の異名を持つサルヴァトーレ・フェラガモの創設したイタリアブランドの雄サルヴァトーレ フェラガモ社は、創立80周年記念行事として、中国の上海現代美術館(MoCA)で3月28日より自社のコレクション展示をスタートさせるとともに、黄浦江沿いに設けられた特設会場で、2008年秋冬メンズ&レディスファッションショーを開催、さらに海外からのVIPを招いてのパーティーという一大イベントを開いた。中国No.1国際派女優のチャン・ツィーや日本でも人気のトニー・レオン、さらにはハリウッドの女優までも出席したこのパーティーは、翌日の『上海タイムス』の一面がフェラガモ一色になるほど、華やかなものだった。

 

 私がサルヴァトーレ フェラガモというブランドを知ったのは、1970年代、米国版『GQ』誌での広告を見てのことだった。そこには非常に洗練されたデザインの紳士用スエード靴が紙面いっぱいに俯瞰撮影で掲載されていて、その写真の美しさが印象に残るとともに、この靴を履いてみたいと思わせる力があった。
 当時社会人に成り立てだった私は、高額だったその靴をかなり無理をして一足購入し、その履き心地の良さに感激したのを覚えている。それ以来、今でもフェラガモの靴を私は最も愛用している。
 4年前、フィレンツェにあるフェラガモ本社を訪れる機会があり、併設しているサルヴァトーレ フェラガモ博物館を見学させてもらった。アーカイブにはブランドを象徴するシューズをはじめ、ジュエリー、バッグ、スカーフなど自社製品が年代順に展示されて、フェラガモ社が築きあげてきた歴史を見てとることができた。
 サルヴァトーレ・フェラガモの未亡人で、フェラガモ社の当時会長でもあったワンダ夫人ともその時にお会いしたが、80歳を超しているのに、矍鑠とし、大きく明瞭な声で話されるのが印象に残っている。
 このフィレンツェのアーカイブの所蔵品が、今回、上海現代美術館に運ばれ、新たな要素も加えられ革新的な構成で展示されたわけだ。

 

 創業者サルヴァトーレ・フェラガモの幼少期からアメリカへ移民として渡るまでの歴史的な写真、ハリウッドで映画スターたちの靴職人として成功をおさめるまでの記録や作品(例えばメアリー・ピックフォードやグロリア・スワンソンのための靴が展示されている)。さらに、故ダイアナ妃やアンディ・ウォーホルなど世界中のVIPたちのために作られた靴も一つ一つ丁寧に展示されていた。
 フェラガモ社の神髄であるシューズとバッグの製作にかかわるクラフトマンシップの実演や、スカーフなどに使用される、自然界からインスパイアされたシルクプリントの数々、独創性溢れる素材づかいなど、その職人気質を随所に感じさせる展示もあった。
 現会長のフェルーチョ・フェラガモ氏は、上海で80周年を祝う理由を、「上海の持つヨーロッパとアジアの文化が融合した国際性とダイナミズム、そして中国の未来を見つめて」とスピーチした。いまや銀座の高級ブランドショップの売り上げの10%は中国からの観光客によるという噂があるように、これからのラグジュアリービジネスは、急成長を続ける中国抜きには考えられない。今年中に株式を上場する予定というフェラガモ社にとっても、それは同様である。


 イベント終了後、フェルーチョ会長が携帯電話でしきりに話していた。「相手は?」と聞くと「マミーに報告しているんだ」と言う。
 フィレンツェで86歳のいまも健在な、ワンダ夫人が、上海のこの華やかなイべントの報告をどう受け止めたのか、ぜひ聞いてみたいものだと思う。

*FECは2000年、フェラガモ社が主催した「新人靴デザイナー発掘イベント」に協賛している。


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