AD FILES 2008.5/vol.11-No.2

動物になぞらえ化学素材をアピール、新聞記事の援用で説得力も width=
帝人株式会社 広報・IR室宣伝課長 木水 恵氏
 「だけじゃない、テイジン」というキャッチコピーを使い、斬新で印象深いテレビCMを流している帝人が、3月14日の読売新聞朝刊に「テイジン未来動物図鑑」という30段多色広告を掲載した。パラアミド繊維など同社が生産している化学素材の特徴を体現した4種類の未来動物を四隅に配し、動物に挟まれた横長のスペースに2001年から2007年にかけて読売新聞に掲載された同社の記事が右から左へと流れるように時系列で配置されている。
 今回の出稿の背景とともにクリエイティブでの工夫点、新聞広告への期待について同社広報・IR室宣伝課長木水恵氏に聞いた。

「繊維だけじゃない」実像の理解を図る


 「企業イメージ調査の結果などを見ると『帝人』という企業名の認知率は大抵9割を超えています。ですが、どんな企業かとなると『繊維の会社』という回答が非常に多いのです」
 実際の帝人の事業活動を売上高で見ると、合成繊維、化成品がそれぞれ3割、流通・リテールが3割弱、他に医薬医療、IT事業と、「繊維だけじゃない」ことは明らかだ。
 「テレビCMはある程度認知率の向上には貢献しているかもしれません。しかし、企業名は覚えてもらえても、どんな会社なのかを正しく理解してもらうことはなかなか難しいのです」
 知名度のあるB to B企業がなぜ一般紙に広告を掲載したのかは、このあたりに解答があるようだ。
 「今回の新聞広告のターゲットは誰かに特定しているわけではありません。就職活動中の人、個人投資家、弊社工場の近隣住民、顧客、取引先などあらゆる人がターゲットです。『帝人を多くの人に正しく理解してもらう』それが今回の広告の目的なのです」
 当然クリエイティブも多くの人に「正しく理解してもらう」目的にかなっていなくてはならない。素材メーカーならではの悩みだが「わかりにくいものをわかりやすく伝える」工夫が必要だ。  
 「ただ素材の写真を載せただけでは、ポリカーボネート樹脂も耐熱性バイオプラスチックも違いがよく分からない。また、それが新幹線の窓に使われています、カーシートに使われていますと言っても『ふーん』で終わってしまう。素材の特性を説明しやすく、目に入りやすく、帝人に興味がない人にも伝えたいと考えていく中で、それぞれの素材の特徴を体現させたこの動物たちに行き着いたのです」
 実際に、「子供が動物の絵を見つけたので、一緒に紙面を見て楽しみました。いろんなことをやっている会社なのですね」というコメントが届くなど、狙い通りの反応があったという。

新聞記事11件を選び掲載

 もう一つのクリエイティブのポイントが、時系列に並べられた新聞記事。「FORWARD」と名付け、読売新聞広告局で推進している企画の手法だ。帝人の新たな挑戦や高い技術力などについて伝えた記事が、掲載日とともに11件集合している。
 ちょうど、炭素繊維でできた未来動物「カルイカルイルカ」のイラスト下に「米国での炭素繊維の生産開始」を発表した記事がくるように配し、ポリカーボネート樹脂でできた「ショウゲキツヨイノシシ」の上には「ポリカーボネート樹脂の光学用途では世界シェア5割近くでトップ」という記事がくる配置になっている。
 実際に読売新聞に掲載された記事は、報道という客観性と信頼性が担保されており、帝人の技術力・開発力をうたった本広告に強い説得力を持たせている。
 「今回、過去の新聞記事を使う手法が非常に面白いと思いチャレンジしました」と木水氏。
 4匹の未来動物の右上にそれぞれ置かれた赤い文字の「TEIJIN」ロゴ。その下には“Human Chemistry, Human Solutions”と入っている。
 「このブランドステートメントは目標ではなく約束なのです。人と地球環境に配慮した化学技術と社会への解決策を提供すると宣言しているのです」
 より環境に優しい素材として炭素繊維、パラアラミド繊維、ポリカーボネート樹脂、バイオプラスチックなどは世界的に注目されており、帝人がその先端を走っていることは、本広告のイラストと記事の組み合わせにより重層的に伝わってくる。「正しく理解してもらう」、「わかりやすく伝える」新聞広告のあり方を突き詰めて考えた結果だろう。
 「新聞紙面の使い方はもっともっと工夫の余地があると思います。今回もこのレイアウト以外にも何パターンかの体裁案がありました。『新聞広告とはこういうもの』という固定観念を捨てて、もっとフレキシビリティーがあればと願います。広告を出す側と載せる側がもっと一緒に考えて新しい道を見つけましょう」と最後に力強い提案を頂いた。



(増田)
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