特集 2008.4/vol.11-No.1

企業広告は進化する
コーポレートコミュニケーションと企業ランキング
 企業のコミュニケーション活動の成果を客観的に判断する材料の一つに、第三者の調査機関から発表される企業ランキングがある。CSR、環境経営、企業ブランド、そしてレピュテーションまで、最近はさまざまな企業ランキング調査が発表されている。こうした調査はどのような視点から見ればいいのだろうか。「マインドシェアランキング」を発表している『よみラボ』(注)の監修者でもある東京富士大学の広瀬盛一准教授に聞いた。

(注) 「よみラボ」とは、多メディア時代における新聞広告の役割と機能を研究・分析するために、読売新聞広告局が開設した研究室のこと。様々なキャンペーン事例の研究やオリジナルの実験調査などを実施し、分析結果は広告局のホームページなどを通じて、積極的に発信している。

 調査データとして発表される企業ランキングには、CSRなどのコーポレートコミュニケーション活動を意識したものが多くなりました。コーポレートコミュニケーションが最近、注目されるようになっている背景には、企業とは何かを考えさせられる事件がここ数年いくつもあったことがあります。環境や安全に限らず、企業のあらゆる行動に社会的責任が厳しく問われるようになり、企業活動の意義を一般の人たちに説明できないと、社会的な容認が得られなくなってきました。
 また、ライブドア・村上ファンド事件も、80年代なら一般の人々にとってはあまり関係のない話だったはずですが、それがあれほど話題になったのは、ネットのデイトレードなどの普及で、株式投資が一般の人たちにも身近になったことが大きい。株式投資をしている学生も近ごろは珍しくないくらいで、企業情報に関心が高い層は一昔前に比べれば格段に増えています。
 今は、安全で環境にいい商品を作るのは当たり前で、企業がいかに社会に貢献しているかを「目に見えるかたちで伝えること」に焦点が移ってきています。

レピュテーションと企業ブランド

 コーポレートコミュニケーションが注目されるようになったもう一つの理由は、「コーポレートレピュテーション」という概念が出てきて、具体的な議論が進んでいることです。
 レピュテーションとは、評判・名声といった意味ですが、インターネットの発達で、あらゆる企業活動が多くの人によって瞬時に評価され、企業の評判を形成していくようになりました。コーポレートコミュニケーションには、リスク・マネジメントやCSR活動、環境への対応、IR、PR、企業広告など広範な活動が含まれますが、こうした全社的な活動を通じて望ましいレピュテーションを形成することが、コーポレートコミュニケーションの目標だとされています。
 レピュテーションという考え方が注目される前は、企業ブランドの価値向上がコーポレートコミュニケーションの目標だと言われていました。企業ブランドとコーポレートレピュテーションはどちらも企業のブランド力ですが、ブランドの評価対象をどのように捉えるかによって使い分けられているようです。
 確かに理屈上は、企業ブランドは消費者が主な評価対象者であるのに対して、レピュテーションは企業活動全体に対する評価で、対象者はステークホルダーすべてとなります。レピュテーションはCSRや企業ブランドを包含するものという考え方もありますが、結局、誰に評価してもらうかという違いです。
 ただし、消費者は同時に取引先や投資家であり、従業員にも関係している可能性もあって、実際の調査では消費者という属性だけを切り離せない現実を考えると、両者をあまり区別して考える必要はないと思っています。実際、レピュテーションを企業ブランドとして実施している調査もあります。

企業ランキングを見る視点

 調査では、企業に対する評価はさまざまな要因でブレます。それを知っておくことも、企業ランキングを客観的に見る参考になると思います。
 調査結果が大きくブレる要因としては、男女差があります。その企業の提供している商品やサービスに対する関与度が男女で違うことが関係しているようで、関与度の高いものはいい方にも悪い方にもブレやすい。関心が高いから評価が高いこともあれば、関心が高いからこそ評価が厳しいこともあります。
 また、ランキング調査では助成想起と純粋想起があることを知っておくことも重要です。例えば、「環境に配慮している企業は?」と聞く場合、企業名やヒントを与えて聞くのが助成想起で、何のヒントもなしに思いつく企業名を挙げてもらうのが純粋想起です。 それぞれ長所と短所があって、調査目的によって使い分けることが大切です。
 企業名を具体的に挙げて聞く助成想起の場合、知名度がそれほどない企業でも調査が可能になります。ただ、調査対象者にとってはまったく知らない企業もあり、その企業の中身やイメージを聞かれても答えようがないという欠点があります。
 純粋想起の場合は、少なくともその企業は知っているわけで、ブランド力の強い企業が想起されるという特徴があります。このため、消費者の心の中に占めるブランドの占有率、マインドシェアにも純粋想起率がよく使われます。マインドシェアはこれまで専門性の高い商品やサービスで重要といわれてきましたが、最近はネットの検索エンジンで情報を収集する人が増えて、その重要性が改めて指摘されています。

マインドシェアを高める広告

 今回、『よみラボ』の「マインドシェアランキング」ではどんな要因で企業がランキングされるかを分析しています。その結果、マインドシェアや純粋想起で最初に企業名が挙げられたトップオブマインドを押し上げる要因として、「広告」の果たす役割が最も大きいことがわかりました。具体的には次ページを見ていただきたいのですが、これは純粋想起で社名が挙がるくらい消費者の頭にしっかり残るためには、広告をはじめ、さまざまなコミュニケーション活動を長期間積み上げる必要があるということを意味しています。
 実際にマインドシェア、トップオブマインドの上位にランクされている企業は、相当の広告量を投下している企業だと予想されます。記事やニュースで企業が頻繁に取り上げられる場合は不祥事などの報道が多く、こういう調査でポジティブに効くことはないはずだからです。
 ただ、広告量は必要条件でしょうが十分条件ではありません。広告展開のうまさ、広告を核に連動して行われるさまざまなコミュニケーション活動がマインドシェアを高める要因なのは間違いないと思います。
 最初に、今は企業がいかに社会に貢献しているかを「目に見えるかたちで伝えること」に焦点が移ってきたと述べましたが、その背景には、能力主義の導入などで企業と個人の関係が変わってきたことがあります。
 人材が流動化する中で、「知名度は低いが業界ではトップ」という企業には、なかなか人が集まらなくなっていると聞いています。世の中から評価されている会社であることが社員のモチベーションを高める時代になりました。今回の『よみラボ』の分析に限らず、広告がコーポレートコミュニケーションの重要なツールになっていることは確かなことだと思います。

 コーポレートブランド広告が企業を変える
電通IMCプランニング・センター局長 小林健一 氏→


 企業の根源的な価値を伝える広告
コピーライター 岩崎俊一 氏→


 企業ブランド力を測る『よみラボ』の試み
読売新聞東京本社 広告局マーケティング部調査課→
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