特集 2008.3/vol.10-No.12

メタボ市場は拡大するか!?
タニタ オンラインで健康管理「からだカルテ」

 パソコンや携帯電話を利用したメタボリックシンドロームの健康管理サービスも登場している。タニタは、07年7月から体組成計や歩数計、血圧計など健康状態を計測する機器類とウェブサイトを連携したヘルスケアサービス「からだカルテ」を開始している。通信機能を備えた機器類から送られたデータは専用サイトに蓄積され、測定結果を時系列でグラフ表示したり、食事分析やアドバイスも受けられる。ヘルスメーターなど家庭用計量計測機器のパイオニアであるタニタが、健康管理サービスに参入した背景はどこにあるのだろうか。

 「からだカルテ」に対応している機器は、現在、体組成計、歩数計、血圧計の3種類。これらの機器を、「からだカルテ」とのセットで提供する。料金は、24か月の契約で体組成計と歩数計がセットになった「スタンダードメニュー」が月額1200円。体組成計と歩数計で測定したデータは「リレーキー」で専用サイトのデータベースに移す。24か月の契約満了後、機器は自分のものとなる。25か月後以降は、6か月2000円でサービスを継続利用できる。また、体組成計、歩数計に血圧計を加えた「アドバンストメニュー」もあり、こちらは月額利用料が1800円。家族割引もあり、追加1人800円から同様のサービスが受けられる。

――タニタは、メタボリックシンドロームが話題になる以前から「脂肪計付ヘルスメーター」を世界で初めて開発するなど、「肥満」に取り組んできたと思うのですが。
 「ヘルスメーター」もそうですが、「体脂肪」というのは90年に当社が作った言葉です。当初「体内脂肪」と呼んでいたのですが、より定着するように、縮めて「体脂肪」と呼ぶことにしたんですね。家庭用の「脂肪計付ヘルスメーター」の発売は95年ですが、それに先がけ92年に業務用の体脂肪計を開発しました。そのきっかけはある医師から言われた「体重が多いのが肥満ではない。脂肪が多いのが肥満だ」という言葉です。体重計メーカーの社長でありながら、それまで肥満は体重で決まると単純に考えていたんですね。しかし、実は肥満は脂肪の割合で決まるという。それならば、脂肪の割合を測定できる商品を作れないかということで開発に着手したのです。
 当社には当時、体重計の精度や耐湿性、風呂上がりに使うことが多いですから湿気に強いといったハカリについてのノウハウはありましたが、人はどうしたら太るのか、どういう時に太るのかという知識はなかった。それから、「体重計」ビジネスから「体重」ビジネスに変わろうというふうに経営方針を変えていったんですね。

――「からだカルテ」の機器として使われている「体組成計」の発売が03年ですね。体組成計は、体脂肪率だけでなく、内臓脂肪、基礎代謝、筋肉、骨量まで測れるということですが。
 これもある医師から「女性のダイエットで問題なのは、体脂肪を減らすだけではなく、筋肉や骨も減らしていることだ」という指摘をいただいたことが基になっています。若いころ無理なダイエットをし過ぎると、40代、50代になったときに骨粗鬆症になりやすい。メーカーの責任として筋肉量や骨量もわかる商品を出していくべきだということで開発したわけです。第1段階の「家庭で毎日体重を測る」から第2段階の「体脂肪を測る」を経て、今は第3段階の「体脂肪や基礎代謝、骨量など体全体を見ながら上手に減量する」という形に変わってきています。

――実際は、まだ体脂肪計のほうが売れている?
 すでに当社では、体組成計のほうが売れていますね。

健康は複合の目で管理する時代

――昨年からスタートした「からだカルテ」は、そうした考え方の延長線上にある?
 今は、まだ実験段階ですが、このサービスの基本的な考え方は、一つのセンサーで健康を測るのではなくて複数のセンサーで測るということです。体重だけではなく、血圧や血糖値などいろいろな数値で健康を総合的に測定する時代になった。
 もう一つは「複合の目で見よう」ということです。自分の体調を自己管理できる人もいますが、そういうことができない方は、奥さんや医師、あるいはフィットネスクラブのインストラクターに見てもらう。また、データが一元管理されれば、家庭で毎日測っているデータやフィットネスクラブで測ったデータが、病院でも、あるいは、栄養士の指導にも、インストラクターの指導にも使える。複合センサーを使って複合の目で健康を管理しよう――「からだカルテ」というサービスは、そういう意図でスタートしたものです。

――「からだカルテ」の具体的なサービスですが。
「からだカルテ」の「健康グラフ日記」

 現在8種類のメニューがありますが、中心となるサービスは体組成計や歩数計で測定したデータをグラフで見られる「健康グラフ日記」です。測った結果を記録することで自分の生活を見直すことができるんですね。
 たとえば、残業して外に飲みに行ってラーメンを食べれば、次の日は体重が少し増えるし、あまり歩かない日が続いても体重は増える。そういうことがグラフを見ていればわかる。健康管理には、その気づきやフィードバックが大事なんです。それが自分の行動を変えるきっかけになるんですね。自分自身で「これぐらい食べるとこれぐらい体重が増える」とわかるようになれば、ダイエットは半分くらい成功だと言われています。
 この「健康グラフ日記」以外で人気があるコーナーとしては、歩数ゲームがあります。歩数計のデータと連動してカナディアンロッキーなど世界のウオーキングコースを疑似的に歩くことができるゲームです。ほかの人と競争することもでき、会社などの組織で利用するのであれば、部署ごとに競うこともできます。それから、「食事分析&アドバイス」というメニューは、一日に食べたものを入力すると、摂取カロリーや栄養から食生活を分析し、アドバイスが表示されるというもので、これも人気がありますね。
 減量指導、健康管理を専門のスタッフが指導する有料の「個別支援プログラム」も間もなくスタートする予定です。

――「からだカルテ」の販売は、どのように考えていますか。
 先ほどこれからは個人の健康を複合の目で管理する時代だと言いましたが、フィットネスクラブや保健指導を事業として受託している会社、あるいはそのシステムを提供している会社、食品会社などと連携して販売していこうということで、現在7社とアライアンス契約を結んでいます。また、会社などの組織に限らず、当社の強みはやはり一般のコンシューマーですから、今後はそこへの普及も検討していきたいと思っています。

21世紀は肥満と取り組む世紀


 
「からだカルテ」のトップ画面
――4月から始まるメタボ健診ですが、「からだカルテ」の普及のきっかけになりますか。
 当社にとってフォローの風だとは思いますが、制度に関連した非常に大きなマーケットが立ち上がるということで、同時にいろいろな企業が参入してきています。健康管理サービスにもかなり強力なコンペティターが出てくる可能性もあり、苦戦をするかもしれないという危惧はあります。ただ、測定センサーを持っているのは数社ですから、そことの競合ということになると思いますね。

――「からだカルテ」の反響はいかがですか。
 健保組合やフィットネスクラブ、特定保健指導を事業として考えている企業をはじめ、いろいろなところから確実に問い合わせが増えてきています。実際に制度が動いてどうなるか不透明な部分もあり、まだ様子見というところもありますね。

――「からだカルテ」は、メタボ市場を対象にしたサービスという認識でいいのですか。
 会社全体の事業対象としては、小児肥満から高齢の方の肥満、アスリート、美容・ダイエットを気にされる若い女性、妊婦と全般ですが、「からだカルテ」は予備群も含めたメタボ市場が対象ですね。具体的に言えば30代以上の男性です。

――メタボリックシンドロームは男性が多いと言われますが。
 もともと女性は皮下脂肪型なんです。だから、皮下脂肪が男性よりも多くて普通なんです。母乳を作るには余分にエネルギーを必要とします。だからエネルギーを摂取できた時に脂肪の形で蓄えておかないと飢餓の時母乳を出せない。その貯蔵庫が皮下脂肪組織です。女性に脂肪が多いのは、そんなに問題とはいえません。

――「からだカルテ」のメニューにある「世界から肥満と飢餓をなくそうプロジェクト」はユニークな取り組みですね。脂肪を1kg減らすとWFP(国連世界食糧計画)に1円募金されるということですが。
 社会貢献の一つとして以前から取り組んでいたものを「からだカルテ」のメニューに取り込んだものです。「健康グラフ日記」に体重と体脂肪率を記録すれば自動的にこの募金システムに参加できます。
 先進国で肥満が増える一方で、飢餓に苦しむ国もたくさんある。肥満に悩む人と飢餓に苦しむ人が同じ数、10億人以上いると言われています。20世紀は禁煙の取り組みが世界的に進みましたが、21世紀は肥満と取り組む世紀だと思っています。




 健康市場の中のメタボ市場
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
大阪本部 研究開発第一部 副主任研究員
有元 裕美子氏→


 花王 体脂肪が気になる時代のヘルシア戦略
ヒューマンヘルスケア事業ユニット ブランドマネージャー 市丸誠男氏→


 ワコール 機能性下着でメタボにアプローチ
スタイルサイエンス事業開発課 課長 久村剛史氏→
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