特集 2008.3/vol.10-No.12

メタボ市場は拡大するか!?
ワコール 機能性下着でメタボにアプローチ

 着用して歩くことによりシェイプアップできるというメタボ向けの機能性下着も登場している。女性用下着メーカーのワコールが開発した男性向けメタボ対策下着「エクサウォーカー」がそれで、着用して1日に6000歩以上歩けば、体質が改善されるというものだ。ワコールでは、以前から生活習慣改善対策の下着『スタイルサイエンス』の女性用商品「ヒップウォーカー」「おなかウォーカー」を展開し、店頭で700万枚以上を売り上げている。「エクサウォーカー」誕生の経緯、今後の展開について、スタイルサイエンス事業開発課長の久村氏に聞いた。

着用して歩くことでエクササイズ効果を引き出す「エクサウォーカー」

――女性下着メーカーのワコールが、男性向け下着、それも「はいて歩くことでからだが引き締まる」下着を作ったということですが。
 ワコールは女性下着メーカーのイメージが強いですが、以前から「DAMS(ダムス)」「BROS(ブロス)」という男性用ブランドも展開していました。また、アスリートに向けた「CW─X」というアンダーウェアも1991年から販売しており、テニスプレーヤーの杉山愛さんや野球選手のイチローさんも使用しています。そういう技術開発のさまざまな下地はあったので、今回の商品も急に出てきたわけではないんですね。

――今年から販売を開始したというのは、やはり特定健診、特定保健指導を意識したのでしょうか。
 4月にスタートする制度に照準を合わせたところがありますね。「エクサウォーカー」発売の経緯について話す前に、まずは『スタイルサイエンス』について説明した方がいいかもしれません。
 これは、ワコールの人間科学研究所で、5年ほどかけて開発したものです。それまでの機能性下着というのは、着用している時は身体のラインを整えるけれども、脱いでしまえば結局は元のままというものが多かったんですね。そこで、“歩く”という日常動作をエクササイズのレベルまで高めることを試みたのです。その結果、サポーター機能を利用して、歩行改善をし、根本的にボディーラインを引き締めるという『スタイルサイエンス』が開発されたんです。
 2005年の秋から女性向けに『スタイルサイエンス』ブランドの基本型となる「ヒップウォーカー」の販売を始めました。そのころから、お客様センターに、「これの男性用も作ってほしい」という要望がかなり多く寄せられてきたんです。そこで、男性にも効果が出るのか実験・検証しました。具体的には、弊社の男性社員44人が被験者になって、「エクサウォーカー」を週5日以上着用してもらって、3か月間データを記録したところ、体重・体脂肪・腹囲で統計的に有意な結果が得られたんです。そこで商品化するにあたり、そのタイミングとして、2008年度から始まる特定健診、それから特定保健指導、これを逃してはならないという判断で、この時期にしたんですね。

――着用して歩くだけで、エクササイズ効果が出るということですが。
『スタイルサイエンス』をはいた時
 わかりやすく言うと、熱いヤカンを触ると反射的に手をひっこめますね。この“反射”の原理を応用しているんです。下着の太もも部分が特殊な構造になっていて、その部分が歩行時の筋肉に刺激を与えることで、歩幅が若干広がる。こうすることで、十分に筋肉を使った歩行になり、筋肉が鍛えられるわけです。ただし、「エクサウォーカー」はただ着けているだけではほとんど効果は出ません。1日6000歩、週5日以上歩かないと、その効果は実感してもらえないと思います。「6000歩は多い」と感じる人もいると思いますが、日本人男性の1日の平均歩数は7400歩なので、それほど大変な数字ではないと思います。
 結局、みなさん痩せるために何かするという手間が面倒で続かなくなると思うんですね。この商品の強みは、手間がかからないことなんです。手間と言えば普段の下着をこれに替えることくらいで、後は普通に生活してもらえばいいわけですから。

販売チャネルを限定する

――「エクサウォーカー」の販売方法ですが。
 健康保険組合などを中心とした職域販売を考えています。販売チャネルに関しては準備室の段階から、そこに限定していこうと決めていました。というのも、売り上げよりも、効果の実感を優先しているからなんです。
 「ヒップウォーカー」「おなかウォーカー」が店頭販売で700万枚を売り上げているので、「エクサウォーカー」も店頭に置けばそれなりの売り上げを出すとは思うんです。ただ、そうしなかったのは、この『スタイルサイエンス』の商品をルール通りに着用して、効果を実感した人は、どれくらいいるのかという疑問があったからなんですね。つまり店頭では1枚売りもしているので、試しに1枚だけ購入はしたけれど、継続的に着用して、定期的にチェックをしている人はどれくらいいるのかということです。ですから、「エクサウォーカー」は1枚売りにはせず、3枚1組にして、継続的に使って効果が出る最低のセット数にしています。また、より高い効果を出してもらおうと思い、ウォーキングレッスンのDVDも付けています。
 健保組合と一緒にやっていく強みは、1年に1回、健康診断という大きなチェックがあることです。結局、体組成計などで何らかのチェックをしないと、自分の身体が変化しているのかどうかはわからない。またフィットネスクラブでもプログラムと一緒に販売しているんですが、これも体組成計での計測をプログラムに組み込んでいます。こうすることで、やはり自分の身体が変わっていることを実感してもらえると考えたんですね。

――取引先の反応はどうですか。
 健保組合には、いろいろな会社がセールスに行くのですが、健康食品や特別な機器の売り込みが多いんですね。「エクサウォーカー」のように日常生活の中で効果を出せるものは今まで少なかったらしいのです。そういうこともあって、健保組合だけでなく、フィットネスクラブからも評価を得ています。

効果の実感が信頼性を生む

――効果を実感してもらうことで口コミ効果も狙っている? 
 そうですね。「エクサウォーカー」の効果を実感してもらって、口コミになるくらい信頼性が上がればいいと思っています。売り上げばかりを追っては、しっかりとしたブランド価値の構築は難しいと思うんですね。売り上げが多いに越したことはありませんが、新規事業ですし、採用してもらった企業としっかりした取り組みをしていきたいですね。

――今後、販売チャネルを増やすことは考えていますか。
 考えていません。全国には1600の健保がありますが、昨年の10月から本格的なアプローチを始めて、まだ接触しているのは100程度です。これからも積極的にアプローチを続けていきたいと思っています。
 それともうひとつは、健康診断を受託している健診機関です。健診機関は健保の対象者とだぶるのですが、そこにアプローチをかけて、保健指導を進める際に、「エクサウォーカー」を補助的なアイテムとして推薦してもらえるようにしていきたいと思っています。保健指導をアウトソーシングしている会社のプログラムと一緒にやっていこうという考えもありますね。
 先ほど言ったように、口コミで広がっていくのが理想的ですが、健保も東京、大阪が中心とはいえ、日本全国にありますし、すべてにアプローチするのも物理的に難しい。企業や団体とコラボレートした形で徐々に広げていきたいと考えています。

メタボ該当者ほど低い体形意識

――職域販売ではなく、一般向けの「エクサウォーカー」の販売は考えていないのですか。
 店頭販売用に既存のメンズブランド、「BROS」「DAMS」にも『スタイルサイエンス』の技術を反映した「クロスウォーカー」を3月から販売します。
 これまでの男性下着は市場規模が小さく、女性と比べると下着にかける金額は驚くほど少ない。極端な場合、男性の下着は3枚1000円で、それもだいたい奥さんが買っています。奥さんは、ご自分の下着にはお金をかけるのですが、だんなさんの下着にはあまりお金をかけないんですね。
 そういう現実があるので、3枚1000円の商品の横に「エクサウォーカー」を置いて、正攻法でいっても絶対に売れないと思っています。それなら切り口を変えなければいけない。その突破口が“健康”です。そういう付加価値がつけば、奥さんも少し値段が高くても、だんなさんのために下着を買ってくれることを期待しているんです。

――昨年の10月から本格的に取り組み始めて、課題は見えてきていますか?
 「エクサウォーカー」はM、L、LLの3サイズ展開なんですが、Mサイズの売り上げは好調なんです。しかし、その上のサイズがあまり動かない。Mサイズのユーザーは身体に対する意識が高いんでしょうね。意識の高さが体形維持につながっているんです。大きいサイズに比重を置いていたのですが、実際は違いましたね。メタボの該当者ほどやせるということに対して意識が低いということです。今後は、大きいLサイズをどうやって動かしていくかが課題になると思います。まだ、立ち上がったばかりのプロジェクトですし、ブランド価値を高めながらさまざまな展開を試みていこうと思っています。




 健康市場の中のメタボ市場
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
大阪本部 研究開発第一部 副主任研究員
有元 裕美子氏→


 花王 体脂肪が気になる時代のヘルシア戦略
事業ユニット ブランドマネージャー 市丸誠男氏→


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