From Overseas - NewYork 2008.3/vol.10-No.12

大統領選、「変革」か「経験」か
 1月3日にアイオワ州で行われた共和党の党員集会を皮切りに、2008年米国大統領選挙が事実上スタートした。米大統領選挙は仕組みがやや複雑だが、簡単に言うと共和党と民主党共に党員集会・予備選挙が全50州で行われ、各州の結果をもとに党大会で正式に各党の候補者が決定する。その後11月4日に一般投票が行われ当選者が事実上決定した後、12月15日に選挙人の投票が行われ正式に当選者が決まるという流れである。
 今回の選挙では、予備選挙が集中する「メガチューズデー」を終えても両党共に候補者が絞り込めない状況であり、近年まれに見る盛り上がりを見せているのはご承知の通りである。
 さて、大統領選挙と切っても切れない関係にあるのが、候補者による大々的な広告・メディアキャンペーンである。特に党員集会・予備選挙の序盤戦は全米の注目が高いこともあり、毎回かなりの金額が費やされる。今回の選挙では、序盤2州だけで各候補合計で7,100万ドルが投下されているが(下の表を参照)、さらに1月29日のフロリダ州選までに放映されたスポットCMは16万本、費用にして実に1億4,100万ドルもの大金がメディアに支払われた。連邦選挙委員会が、「史上最も費用のかかる大統領選挙戦」と発言した理由のひとつである。
 今回の選挙はまた、「初めての本格的なデジタル選挙戦」とも言われている。各候補がホームページ、電子メール、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じて、有権者とコミュニケートすべく活動している。これらは広告出稿と比べて経費がそれほどかからないうえ、ユーザーが候補者とウェブ上で直接交流できるため、特にSNSがかなり効果的なようだ。オバマ、ヒラリー、マケイン、ロムニー各候補は、自身のホームページ(HP)に書き込まれたコメントに直接返事をつけるなどし、有権者からの親近感向上において「抜群の成果」を挙げているという。
 しかし当然と言うべきか、若年層にしか効果がないという調査結果が明らかになっている。SS&Kが行った調査によると、有権者の年代により効果の差が大きく、インターネットを通じた候補者情報への接触率では、30歳未満36%に対し、30歳以上では15%に過ぎない。
 これに対し、テレビ・新聞は30歳以上への到達が高い。主な情報源として挙げられたのが、30歳以上ではテレビCM56%、テレビ討論51%、新聞記事47%である。確かに30歳未満になると、各候補のHP52%、ブログ43%とインターネット経由が強いが、ニューハンプシャー州での投票率を見ると30歳未満53%、30歳以上82%と差が顕著であり、しかも圧倒的に30歳以上の有権者数の方が多いことを考えると、票を集めるにはトラディショナルメディアに軍配が上がる。
 ただしインターネット経由の場合、コストが低く高い費用対効果が得られるのに加え、前回の大統領選挙における予備選挙・党員集会に比べて30歳未満の投票率が向上していること、および将来彼らが有権者の中心になることを考えると、インターネットによる選挙活動の重要性が今後増していくことは想像に難くない。
 インターネットには双方向性という強みがあり、候補者と直接意見交換できるのは、旧メディアにはない特徴である。しかしそれは両刃の剣であり、使い方を誤ると逆効果になることを忘れてはならない。
 選挙戦序盤に、共和党のロン・ポール候補は自身のブログにおいて、否定的なコメントを書き込んだユーザーと感情的なやり取りを行い、いわゆる「炎上」状態に陥ったことで好感度はたった1%という結果を生んでしまった。まあ、それもまた人間としての候補者の姿ではなかろうか。

  序盤2州における各候補のTVCMへの投下額
  アイオワ州 ニューハンプシャー州
1位 バラク・オバマ 1,000万ドル ミット・ロムニー 720万ドル
2位 ヒラリー・クリントン 800万ドル バラク・オバマ 440万ドル
3位 ミット・ロムニー 790万ドル ヒラリー・クリントン 430万ドル
4位 ビル・リチャードソン 400万ドル ジョン・マケイン 350万ドル
5位 ジョン・エドワーズ 350万ドル ルディ・ジュリアーニ 250万ドル
6位 クリス・ドッド 160万ドル ジョン・エドワーズ 140万ドル
7位 マイク・ハッカビー 150万ドル ロン・ポール 70万ドル
8位 フレッド・トンプソン 110万ドル ビル・リチャードソン 50万ドル
9位 ロン・ポール 100万ドル マイク・ハッカビー 9.3万ドル
  全候補合計 4,500万ドル 全候補合計 2,600万ドル
Source: TNS Media Intelligence, Campaign Media Analysis Group

もどる