特集 2008.1・2/vol.10-No.10・11

環境問題の「見える化」
店頭からみた消費者のエコ意識
 家電製品のCO2排出量の店頭表示が検討されている中、消費者の省エネ商品に対する意識はどこまで高まっているのだろうか。早くから環境問題に取り組み、「省エネルギー型製品普及推進優良店制度」で3年連続大臣賞を受賞しているのが、大手家電量販店のビックカメラだ。消費者の環境意識と流通業の対応について、同社の環境対応の担当者である営業部係長の草柳氏に聞いた。

――省エネ性能で家電を選ぶ消費者は、実際に増えてきているのでしょうか。
 同じグレードで、同じ価格だったら、お客様は間違いなく省エネ性能の高い方を選ぶと思います。ただ、家電製品の場合、機能やサイズ、デザインなど複合的な要素がありますから、一概には言えないところがありますね。省エネも選択基準の一つになっていることは確かですが、家族構成や居住環境を考慮した上で製品を選択しないと、すぐに買い替えたり、使わなくなったりしますので、ライフスタイルに合った製品が優先され、その中で省エネ性能の高い製品を検討していると思います。
 電球のようにそれほど高くないものなら、省エネのものを選ばれる方は多いですね。

――省エネ性能の高い家電はやはり値段も高い?
 というより、家電は一般的に省エネ効率がいい商品ほどグレードも上がって、値段も高くなる傾向があります。エンジン性能のいい車は内装も豪華なのと同じで、省エネ効率のいいエンジンを積んだ家電には複合的な機能が付いてくるのが一般的です。ですから、省エネ効率が高いエアコンは価格も高く、省エネ効率が低いエアコンは価格も安くなる。価格差は10万円以上の場合もあります。実際に購入するお客様のことを考えると、10万円以上の値段の開きがある商品を簡単におすすめすることはできません。それで、店頭ではワンランク上の省エネ商品を、というおすすめの仕方をしているんですね。
 それから、薄型テレビの場合、環境性能で言うと8割ぐらいが、省エネ効率が最高ランクの製品なんですよ。そうすると、選択基準はそれ以外の付加価値の部分になってしまうということがありますね。

省エネ情報をわかりやすく

 
ビックカメラ池袋本店の家電売り場とエアコンに表示された省エネラベル
――店頭で家電に表示されている「省エネラベル」ですが、どういうものか説明してもらえますか
 ビックカメラで導入したのは2003年からです。基本的には努力義務なのですが、東京都と京都府では条例で店頭表示が義務化されています。
 省エネラベルには、その商品の省エネ性能を5段階評価で示す☆印と、省エネルギー基準達成率、年間消費電力量などが表示されています。この☆印による多段階評価まで表示されるのはテレビ・冷蔵庫・エアコンだけで、特に「統一省エネラベル」と呼ばれています。その他13の家電製品には、多段階評価のない省エネラベルが使われます。

――省エネルギー基準達成率というのは、どのように決められているのですか。
 「トップランナー方式」で決められているんですね。世界でも最も厳しい基準らしいんですが、製品ごとに省エネ性能の基準を見直す年があって、その時点で最も省エネ性能が高い製品を省エネルギー基準達成率100%とする方式なんです。つまり基準点を一番上に置くやり方ですね。06年10月1日からエアコンと冷蔵庫の基準が変わったのですが、その時、最も省エネ性能の高い機種が省エネルギー基準達成率100%としてスタートするんです。最初のころは100%を達成しているのは数機種だけです。エアコンは毎年、11月から2月の間に新商品が出てくるのですが、そうすると達成基準を超えた機種がどんどん増えてくるんですね。

――家電のサイズなどによって省エネルギー基準達成率は違うのでしょうか。

 例えば、エアコンの場合、室内機形態、冷房能力、室内機の寸法で分けられた区分ごとに目標基準値が設定されます。しかし、JIS規格で決められた基準はあまりにも複雑すぎて、製造業者以外の人にはわかりにくいので、売り場では情報を整理してわかりやすく表示するようにしています。ですから、エアコンだったら何畳用、テレビだったら何インチで、「省エネ達成率何%」とわかりやすい内容だけを伝えています。
 それから、商品のグレードは高いのに電気代も高いという逆転現象が起こっている商品もあります。例えば、最近のエアコンは、コンパクトなものが主流です。というのも、最近の家は窓が大きくて、窓の上の狭いスペースに取り付けなければいけないからです。でも、省エネを考えたら室内機も室外機も大きい方が有利です。でもそれは、市場が求めているものとは反対なものですよね。市場が求める製品と省エネ効率を共存させている日本のメーカーはすごいですよね。コンパクトで省エネ効率の良い製品は、やはり人気です。

若い人ほど高い省エネ意識

――ビックカメラでは、省エネ型製品普及推進優良店制度で、3年連続大臣賞を受賞していますね。
 05年から省エネルギーセンターの主催で始められた表彰制度です。店舗に対して贈られる賞で、05、06年は経済産業大臣賞、07年は名古屋駅西店が環境大臣賞を受賞しています。省エネ製品の販売促進の取り組みや省エネに関する店員教育、省エネラベルなどの分かりやすい表示などが選ばれるポイントと言われています。
 我々が3年連続で大臣賞を受賞した理由としては、実際に売り場に立ってお客様に接している販売員の省エネに関する意識が高いことだと思います。製品の情報だけでなく、省エネに役立つ情報の提供やライフスタイルに関するアドバイスをしている販売員もいます。

――省エネに関する社員教育も実施している?
 年1、2回、各店舗で実施しています。内容は、基礎的なところが中心です。「地球温暖化って何?」というところから始まって、「どうしてそれが起こるのか?」、それから先ほど話が出た省エネラベルやトップランナー方式の理解、さらに具体的な商品の知識などについてですね。

――社員の反応は?
 入社前から省エネや環境意識が高い社員が増えていることは間違いありません。若い人のほうがよく理解していますね。

―― 一般にも若い人たちの方が環境意識は高い?
 ご年配の方は、物を大事にする意識が強く、物を大切に扱い最後まで「使い切り」ますので、エアコンではなく、まだクーラーを使っている方もいます。また、高度経済成長期以降は、快適さや裕福さを求めて新しい商品の開発や購入に拍車がかかり、物を大切にする意識が薄れてきたと思います。その後、「地球温暖化問題」がクローズアップされるに従い、特に若い人たちを中心に、環境問題に対する意識も高くなってきたと思います。それから、お子さんがいる家庭は環境意識が高いですね。小学校では環境教育に本当に熱心に取り組んでいますから。

店頭から始める啓発活動

――家電の省エネ小冊子も店頭に置いてありますね。 
 
ビックカメラが店頭で配布している省エネ冊子
 お客様への環境問題の啓発活動のひとつとして制作しています。エコ関連では、各社さまざまな取り組みをしていると思うのですが、こうした冊子の制作は、家電量販店の中では我々が最初だと思います。
 省エネや環境問題は結局、継続性が大切なんですね。「電気はこまめに消しましょう」「見ないテレビは消しましょう」ということはわかっていても、家電は毎日使うものだから面倒くさくなる。
 そういうことを減らすためにも、定期的にお客様に訴えかけていかないと電気の無駄遣いは減っていかないし、メーカーがそれをやろうと思っても、それをやる場がない。テレビCMが省エネや環境問題ばかりだったら、つまらないですよね。そういう意味で、直接お客様と接することのできる量販店の取り組みは大切なことだと思っているんです。

――冊子には商品も掲載されていますが。
 ただ、これで売ろうということは、ほとんど考えていません。「省エネ商品に買い替えよう」というチラシをたくさんまいた方が、プロモーション効果は高いんです。この冊子の中で下手に商売っ気を出してしまうと、私たちの思いは伝わらないと思ったんですね。ですから07年の冊子は、前年のものよりも前半の環境に関する企画ページを増やして、商品ページは減らした構成にしています。

――この冊子は年1回の発行で、4号目ということですが。
 前年と異なる点は、特にCO2に言及している点です。前年までは漠然と「省エネ」とうたって電気代が違うと言っていたのですが、今回は「CO2削減」を前面に打ち出しています。

――それは、消費者のCO2削減への意識が高まってきているからでしょうか。
 というより、「高めましょう」という気持ちからですね。CO2は目に見えないものです。「1日何gの削減になります」と言っても、削減するとどうなるかをちゃんと理解して行動しないと意味がないと思うんです。CO2を出さないことが、いかに大事なのかをお客様に理解してもらったうえでの「買い替え」であり、「省エネ」だと思っているんです。

――草柳さんが、現在の担当になられたのは?
 4年前からです。地球温暖化の現実を知ると、商売を抜きにして大変なことになると実感します。映画の『デイ・アフター・トゥモロー』で温暖化の後に氷河期が来るシーンがありましたが、海流の動きが止まれば、一挙に冷却されて氷河期が来るというのはウソではない。でも、人類はその道を歩いている。だったら止めたいですよ。たまたまそれに携わる仕事をさせていただいているので、「お客様にちゃんと伝えていかないといけない」という思いはありますね。




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