特集 2008.1・2/vol.10-No.10・11

環境問題の「見える化」
CO2を可視化する
 産業部門のCO2排出削減努力が続けられる中で、一般家庭やオフィスのCO2排出量は増え続けている。特に家庭のCO2排出量は90年と比べ、3割以上増えているという。環境省が推進するチームマイナス6%では、2006年度の冬から「うちエコ!」という名称で家庭のCO2削減に取り組んでいるが、その中で具体策の一つとして取り上げられているのが「省エネ製品への買い換え」だ。同省では、家電のCO2排出量を店頭でわかるようにするシステムの開発にも取り組む予定でいる。チームマイナス6%の取り組みとCO2を可視化する狙いについて聞いた。


――この冬も前年度に引き続き、「うちエコ!」キャンペーンを実施していますね。
 一昨年度は、オフィスの暖房温度を低く設定してCO2排出量を削減する「ウォームビズ」を全面に出してキャンペーンを展開しましたが、この取り組みを家庭に広げたものが「うちエコ!」です。今回は二つのテーマを掲げていて、一つは「みんなで集まれば うちエコ!」、家族が一部屋に集まって食事をしたり談笑したりすることがガスや電気の節約につながることをアピールしようという狙いです。もう一つは「省エネ製品への買い換え促進」です。

――家庭のCO2排出量が増え続けていることへの対策ですか。
 日本の家庭部門のCO2排出量は1990年比で3割以上伸びていますが、それは「世帯数が増えていること」「1世帯当たりの家電保有台数が増えていること」「家電が大型化していること」の3点が主な要因として挙げられます。要は、日本人のライフスタイルが変わって、みんな個別に生活しているからなんです。特に、単身世帯が増えているほか、一つの家の中で別々にテレビを見たり、別々に生活しているから、それだけ家電が増えだした。テレビも食事も、みんなで集まれば暖房は一つの部屋で済む。だから、「みんなで集まれば うちエコ!」は、もう少し、みんなで集まって電気を使いましょう、みんなでエネルギーをシェアしましょうという提案なんです。
 それから、洞爺湖サミットの開かれる北海道では、地域特性もありますが、道民1人あたりのCO2排出量が全国平均の約1.3倍(北海道庁調べ)なんですね。暖房の効いた室内で、Tシャツ姿でビールを飲んだり、アイスクリームを食べたりしていると、よく言われている北海道の冬のライフスタイルですが、今年は「ウォームビズ」や「うちエコ!」の行動化を促進するキャンペーンやイベントを北海道で展開しようと思っています。
 ほんの一昔前までは、家庭のこたつの中でみかんを食べながらみんなでテレビを見ていた時代があったじゃないですか。そういう生活なら、家庭の電力消費は劇的に増えなかったはずなのですが、今は残念ながら右肩上がりで増えている。そこをなんとか変えていきたいというのが、一つ目です。
 二つ目は、その中で最も効くのは、やっぱり省エネ製品への買い換えです。最近の家電製品は省エネ率が上がっているので、買い換えていきましょうという呼びかけです。

――「省エネ製品への買い換え」は、夏前からやられていたと思うのですが。
 6月には、「電球から、日本を明るくしよう。」というキャンペーンを展開しました。従来の白熱灯から蛍光灯型電球に代えることで最大約80%のエネルギー削減ができるんですね。エアコン、冷蔵庫、洗濯機といった白物家電の買い換え効果は高いんですが、価格や使用期間の問題もあるし、消費者もすぐには買い換えられない。それで、省エネ家電の存在に気づいてもらうことと、実際にアクションを起こしやすいということで、電球を取り上げたんですね。
 それから、百貨店やスーパーでは、照明が電力消費の3割から4割を占めているんです。非常にパイが大きい。次は、業務用の照明の省電力化にも力を入れていきたいと思っています。

一人一日一キログラムCO2削減

――昨年5月から始めた「めざせ!一人一日一キログラムCO2削減」キャンペーンでは、CO2削減を正面から取り上げていますね。
 京都議定書で約束した6%削減目標ですが、それを実現するための家庭でのCO2削減目標は、年間約2900万トン、オフィス等でのCO2削減目標は、年間約6800万トンです。ライフスタイルやワークスタイルを見直せば、十分達成できる数字です。現在、国民1人あたりが排出するCO2量は、1日平均で約6キロです。それで、こういうキャンペーンを始めたんですね。
 一人一日一キログラムで数字を積み上げたらどうなるかというと、1年間で4700万トンのCO2を削減できるのです。家電の買い換えだけでなく、みんながCO2削減行動をすれば、全体の削減効果は非常に大きなものがある。それで、「冬の暖房時の設定温度を22度から20度に2度低くする。 96グラム」「通勤や買い物の際にバスや鉄道、自転車を利用する。 180グラム」「古いエアコンを省エネタイプに買い換える。 104グラム」 など、具体的な行動によってCO2が何グラム削減できるのか、削減効果を示して温暖化防止に向けた行動を促しています。
 ただ、こうした行動は続けることが大事です。そういう意味では、省エネ型の家電等への買い換えは、たとえ今までと同じような使い方をしてもCO2削減につながるので、より効果的なんですね。

家電等のCO2排出量を可視化

――家電等のCO2排出削減量が店頭や携帯電話でわかるシステムの開発を進めているということですが。
 省エネ型の家電への買い換えを促進するために、もう一歩進めて、売り場でその家電のCO2排出量がわかるようにしようという計画です。家電の省エネ表示には省エネルギーセンターの「省エネラベル」が既にあります。その製品の年間消費電力量などが表示されていて店頭の製品同士の比較には非常に効果があるのですが、消費者が今使っている製品を買い換えた時に、どのくらいCO2が削減されるのかまではわからない。この部分を環境省でやりましょうということなんです。白物家電の買い換え時の平均使用年数はおおむね9〜11年であり、古い製品のデータをどうするかなど家電業界の協力をお願いしたり、検討すべき課題はまだ残っています。

――製造工程と廃棄の時のCO2排出量もわかるようにすると聞いていますが。
 使用時の排出量だけでリサイクルの排出量を考えないのでは、本当の意味でCO2削減にはならないということなんです。
 昨年6月、街頭でアンケート調査を行ったのですが、「省エネ製品の買い換えをどう思うか」の質問に6割が「まだ使えるのにもったいない」と答えているんです。やはり、ものを大事にするという日本人が昔から持っている良き価値観があるんですね。そういう意味でもリサイクルは大事で、今ある製品の再資源化率をきちんと伝えないといけないと思っています。エアコンやTVなどの製品は、その約8割程度はリサイクルされているんですね。我々がやるCO2排出量の換算の中にも、その基本的な考え方は出せる範囲で入れるべきではないかと考えています。

――CO2排出削減量が目に見える形でわかれば、温暖化防止も促進される?
 我々は、「地球温暖化問題」の認知促進を目的にチームマイナス6%を始めています。それから、「クールビズ」「ウォームビズ」など比較的簡単にできることを提案することで、国民の関心が高まってきた。それに伴って、企業の中でも温暖化防止への取り組みを示すことが、社会的な企業価値を高めるという認識が広まってきました。京都議定書で約束した目標の達成期間に今年から入りますが、これからは「地球温暖化を防ぐために実際に何ができるのか」、より具体的な削減対策が求められます。そういった意味で、省エネ家電への買い換えは有効であり、CO2排出削減量の可視化を進め、分かりやすく対策の削減効果を伝えることで、国民の皆様の取り組みをより一層推進していくことが重要と考えています。





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