From Overseas - NewYork 2008.1・2/vol.10-No.10・11

CMOのアタマの中身
 米国には、主要企業のCMOを中心に、最低でも役員クラスのマーケティング担当者約1700人で構成されるThe Marketing Executive Networking Group(MENG)という組織がある。完全紹介制で入会には年収や経歴などの厳しい審査があり、メンバーの84%がフォーチュン500企業経験者、70%以上がMBAを取得、それも米国トップ20のビジネススクール出身という、すごい組織である。
 そのメンバーを対象に、アンダーソン・アナリスティックスという調査会社とMENGの共同で、マーケティングに関する初の「意識調査」が行われた。調査項目は、現在注目しているマーケティング概念や口コミキーワード、市場としての国・地域、マーケターやその著作など多岐にわたる。
 例えば、今最も注目するマーケティング概念は、との質問には「顧客満足度」がトップに挙がり、「顧客囲い込み」、「ターゲットセグメント」、「ブランド忠実度」、「投資利益率」などが続く。逆に注目されていないのは「宗教」、「アメリカ製品」、「ゲーム理論」、「ロングテール」、「シックス・シグマ」などで、どちらかというと昔からある考え方が重要視されていることがわかり興味深い。
 アド・エージ誌は、この結果をして「彼らは『オールド・スクール』で『トラディショナル』な人物たちだ」と分析しているが、「検索最適化」や「データ分析」といったデジタルメディア用語もトップ10入りしているのに加え、最も注目する口コミキーワードに「環境マーケティング」を選ぶなど、新しいマーケティング概念を取り入れることにも積極的だ。
 将来最も消費が伸びる市場としては何といっても「中国」(52%)がダントツで、2位の「インド」(20%)に大差をつけている。また意外なことに、「東ヨーロッパ」、「ブラジル」、「ロシア」、「メキシコ」を挙げたメンバーはほとんどみられなかった。これはある意味、米国での「中国ばやり」が如実に反映された結果といえるだろう。
 注目するマーケターとしては、パーミッション・マーケティングの提唱者であるセス・ゴーディンがトップに挙がり、アップルのスティーブ・ジョブズが続いている。他のトップ10にはピーター・ドラッカー、ジム・コリンズ、ジャック・ウェルチ、フィル・コトラーなどそうそうたる人物が並び、2007年にノーベル平和賞を共同受賞したアル・ゴア元副大統領も20位にランクインした。セス・ゴーディンは米国のマーケターたちの間では賛否両論あるようで、アド・エージ誌電子版の読者フォーラムでは「長年注目しており、当然の結果だ。ブラボー、セス!」「米国を代表する上級CMOたちがゴーディンだって!? ありえない!」といった論争が繰り広げられている。
 さらに最近読んだ書籍としては、ジム・コリンズ『Good to Great』(邦題:『ビジョナリーカンパニー2』)、トマス・フリードマン『The World Is Flat』(邦題:『フラット化する世界』)、マルコム・グラッドウェル『Blink』(邦題:『第1感』)などマーケティングに関するビジネス書籍が挙げられ、世界の第一人者から常に学ぼうとする姿勢を垣間見ることができる。
 この調査により、我々も米国トップCMOの頭の中身をのぞくことができたわけだが、これらの結果から想起できる米国主要企業の平均的なCMO像は、「勉強熱心で、多数の書籍に目を通している理論派。そのため基本的にはトラディショナルな考え方をするが、必死に新しい概念を取り入れるべく奮闘中」といったところだろうか。MENGには、恐らくは年齢的にも高めのメンバーが多いことから、特にデジタルマーケティングについては彼らのこれまでの経験では対応しきれない部分もあることが想像できる。  
 MENG役員のチャンドラ・チャタージ氏は、「基本をないがしろにはできないが、この複雑化した世界では新しい考え方もまた無視できない。マーケティングそのものが変わりつつあり、CMOの役割もまた変わらなければならない」と話す。変革の波に乗り切れなければ置いていかれるという、危機感が彼らを襲っているようだ。

※CMO=Chief Marketing Officerの略。企業のトップを形成する役職であり、マーケティングや販売を始め、広告、PRなどのコミュニケーション戦略も統括する。

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