From Overseas - London 2008.1・2/vol.10-No.10・11

サッカーのピッチは拡大し、F1は加速する
 11月21日、日本サッカーの五輪代表が北京五輪出場を決めた直後、イングランド代表チームは、2008年欧州選手権の予選最終戦を戦っていた。勝つか引き分ければスイスとオーストリアで共同開催される本戦出場が決まる試合だったが、結果は敗退。英紙「サン」が1面いっぱいに掲載したつぶれたボールの写真が、ファンの落胆の大きさを物語っていた。
 翌日の各メディアの報道によると、2006年ワールド・カップと同等の経済効果を見込んだ場合、本戦出場ができないことでの経済損失は10億ポンド(約2,280億円)である。たちまち代表チームのレプリカ・シャツの割引販売が始まり、サプライヤーであるアンブロや関連企業の株価が下落。また、同年の欧州選手権の放映権を獲得していたITV(テレビ局)では、出場した場合に比べ、広告収入で1,000万ポンド(約22億8,000万円)の減収が見込まれている。一般消費者と結びつく分野では、試合のチケットを持たなくても現地に赴くほど熱狂的なファンを輸送する航空業界、パブでサッカー観戦をする人々ののどを潤すビール業界などが影響を受けるだろう。
 さて、経済効果が非常に大きいことで、スポーツに対する企業の投資額が急増している。調査会社「インターナショナル・マーケティング・リポート」が出版したリポートによると、全欧州において、スポーツ関連へのスポンサーシップ総額は66億9,500万ユーロ(2007年見込み/約1兆1,047億円)で、2000年に比べて37%増加した。
 スポーツ別に見ると、企業の投資を最も集めているのはサッカーで約3,089億円、続いてモータースポーツが約2,571億円となる。3位はヨットの314億円、4位はサイクリングの304億円で、上位2つのスポーツが突出しているが、これは想像にかたくない。
 興味深いのは、産業別の投資額だ。従来、スポーツのスポンサーといえば、たばこやアルコール産業だった。ところが、金融業界からの投資額が急増し、2007年ではシェアが全体の1位となる13%に到達した。この傾向はイギリスで顕著で、金融はシェアが22%、アルコールとIT産業は2位タイで、それぞれ9%となっている。サッカー関連でよく知られているものとしては、欧州サッカー連盟と長期契約を結んでいるマスター・カード、FIFAに協賛しているビザあたりだろうか。F1では、各チームのスポンサー、コース・スポンサーなどとして、アリアンツ(ドイツ)、ING(オランダ)、サンタンデール(スペイン)、RBS(イギリス)などが挙げられる。
 前出リポートの筆者によると、投資額が増加している理由は、人気スポーツは世界的な露出が期待できることだ。これは、F1やオリンピックなど、国際的なスポーツにとどまらない。例えば、英バークレー銀行は、イングランドのサッカー1部リーグであるプレミアリーグに、冠スポンサーとして年間49億円を支払っている。プレミアリーグはイングランドの国内リーグだが、多くの国で放映されているため、世界的なブランド認知の向上を果たす上で効果的な投資と言える。
 スポーツ分野への投資額増加に対応するため、大手広告会社はスポーツ・マーケティングの専門エージェンシー拡充を急いでいる。例えば、売り上げで世界6位の広告会社であるアバス(本社フランス)は、「アバス・スポーツ」を、イギリス、スペイン、中国、マレーシア、インド、メキシコに相次いで設立し、さらにネットワークの拡大を目指している。世界レベルで業務のコーディネートを行う「グローバル・チーム」をパリに置き、顧客に対して世界レベルでのソリューション提供を行う体制も整えているようだ。また、スポーツ・イベントのテレビ放映中に、企業CMやブランド・ロゴが視聴者に効果的に到達しているかを計る「スポーツ・アイ・トラッキング」を提供するなど、分析ツールの開発にも余念がない。
 さて、先の話で恐縮だが、2012年の欧州選手権は、ポーランドとウクライナの共催が決定している。新興市場での大型スポーツ・イベント開催は、開催国の経済を潤すだけでなく、スポンサー各社にとっても市場拡大の機会になる。広告会社にとっては、地域でスポーツ・マーケティングを根付かせる絶好の機会となるはずだ。
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