CrossMediaの必然性 2008.1・2/vol.10-No.10・11

「新・広告人」育成の装置とは
 広告会社ではどの世代でも、広告実務を現場に配置されてから先輩諸氏にOJTで教わるものであるし、ずっとそうしてきた。しかし今広告会社で、次世代広告マンのスキルの中心となるべき、インタラクティブ領域やマスを統合したクロスコミュニケーションを誰がどのように教えているのだろうか。
 実態は、個々人が各自の才覚で、自己研鑽に励み、インタラクティブ領域のスキルを獲得している場合がほとんどである。つまり誰にも教わっていないのである。もちろん完全に確立したスキルではないから、ある意味仕方がない面もある。しかしもうそろそろ会社ないし組織として(あるいは業界として)、こうした新しいスキル構築のスキームを用意する必要がある。最近ではどの会社も社内大学ばやりではあるが、しょせん座学は座学、意識を植え付ける効果はあっても、本格的なスキル獲得には実践をもってするしかない。


 また多くの会社が、インタラクティブやクロスコミュニケーションをスタッフ側のスキルとして位置づけているが、それだけではだめだ。従来の営業スタッフ構造は、マス広告枠を売るために行われるフルサービス提供を目的にできている。それを前提にしない次世代型広告コミュニケーション開発では、従来の組織体制の概念を全く再編する必要がある。そもそも営業マンに新しいスキルが根付かないのなら、ほとんど意味はない。いくらスタッフにこうしたスキルを醸成しても、営業がいい仕事を獲得できなければ、スタッフのスキルも育たない。こうした仕事は営業スタッフ一体のユニット編成が必要である。またインタラクティブ領域といってもすでにすべてに精通することはできないほど領域が広がっている。プロデューサー型営業がこの領域だけでも確実に必要になってきている。


 広告ビジネスが求める新しい人材、すなわち次世代型のスキルをもつ広告マンを育成するには、ある種の仕組み、育成装置が必要である。そして育成装置とはすなわち実践部隊でしかない。次世代型の広告コミュニケーションを、例えば「インタラクティブをコアにしたキャンペーン構造」と定義して、それに特化して企画、実施、運営する営業スタッフ集団を再編成することだ。ここでのスキルセットは、最初は大まかな領域を分けるとしても相互に領域をオーバーラップして作業する必要があり、実践を通じておのおのの機能と役割、そしてスキルセットの概念を確立していかなければならない。いわば全く新しいキャンバスに絵を描く作業を要する。欧米のインタラクティブエージェンシーは、その多くがコミュニケーション開発をコアスキルとするものである。クリエイティブとテクノロジーという一見相反するスキルの融合(ぶつかり合いの中から化学反応を起こして創出された価値)を生んでいる。こうした試みがまだ日本ではなされていない。


 新しい広告業を語るということは、新しい広告人材像を語ることと同じである。そして新しい人材育成は、新しい価値を提供する部隊を編成しての実践の繰り返しでしか得られない。インタラクティブ領域をコアとしたコミュニケーション開発に特化した会社がある欧米は新・広告人の育成装置を持っている。日本においても同じ手段でしか「新・広告人」は獲得できない。
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