こちら宣伝倶楽部 2008.1・2/vol.10-No.10・11

一年の計は簡単にあり
イラスト 新聞で広告会社の人事情報を見る。IMCプランニングセンター・スペース・ブランディング室、シニア・メディアディレクター兼メディアイノベーション研究部長、コンテンツ・コミュニケーション推進部メディア・ディレクター、プランニング・テクノロジー開発部など、それぞれがこんな名刺を持って群れをなし、高飛車な理屈をならべてやってくるのかと思うとぞっとする。この人たちが広告主の広告政策を混乱させ、若いスタッフを惑わせているのじゃないかと思ってしまう。

広告仕事の原風景

 広告をとりまくさまざまなことが複雑になりすぎている。ような気がする。原点にかえって「広告の条件、広告仕事の原風景」を考えて見る。まず広告の主題である商品やサービスが、広告する価値があるかどうか、相手がすてきといってくれるかどうか。その次は誰にそのことを伝えるのが一番いいか、広告の相手を見定めること。そのためにはどんな手段で、どんな方法で、どんなストーリーで伝え、わからせていくか。問題はとりあえずこれだけだ。あとはそのためのコストをどれくらいかけられるか、金額と期間の腹づもりをしておくことと、当面はどうなればよしとするかの、成果のイメージを持っておくことくらいのものだ。
[1]もの [2]対象・相手 [3]手段・方法 [4]表現 [5]コストの覚悟と計画 [6]成果のイメージ
 大切なことは、忘れてはいけないことは、このすべては広告をしたいと思った当人(広告主)が意思決定をすること。意思決定するまでの要点、ポイントは自分で発見し、自分で悩んで葛藤し、それを乗り越えて解決していくこと。それがその社の広告のスタイル、個性を作っていくもとだ。
 はじめからカッコよくきれいになどと考えないこと。広告したいと願う大もとはもっとドロドロとしたものであることは忘れない方がよい。初期の段階で外部の専門家と思っている人たちを交えると、ここが崩れる。崩れると回り道をして、焦点がだんだんぼけて、広告が他人ごとになっていく。これだけは絶対に避けるべきだ。「広告の専門家」より「商売の専門家」の方が常に上位にあるという自覚を失わないことだ。
 広告の主題である商品やサービスのことを忘れてしまった「ものばなれ」した広告が増えていると思ったら、広告主が広告の大原点を見失ったしるし、広告で遊ばれているしるしと考え「商売の専門家」が前へでてドロドロ街道へ戻る提唱をすること。複雑になりすぎない単純、簡単化が広告を颯爽とさせる。

単純に 簡潔に 軽く

 シンプルでわかりやす化をすすめることがこれからの広告には欠かせない。メッセージの単純化が急がれる。広告にいろいろなことが盛りこまれすぎる。リュックにたくさん荷物をつめこみすぎて坂道が登れない。歩みがにぶい。人の倍疲れている広告が多いと思わないか。しぼりこんだはずなのにセールスポイントが多すぎる。それでなくてもブランドや商品名、キャラクター、タレント、パッケージ、音楽、販売店、キャンペーン告知、姉妹・関連商品など、広告が満員の乗り合いバスになって、迎えに行った客の顔が見えなくなっている。伝言ゲームなどでも、伝える内容が多くなるほど、人を介するほどに時間もかかるし、しまいまで正確に伝わらないではないか。捨てる勇気と決断が効果につながる。メッセージの単純、簡単化を急ぐことだ。わかりやすい商品をつくる、無駄をそぎ落とした研ぎすまされた商品のもつ強さが、広告の強さのもと。広告主の一番大切な仕事だ。
 コミュニケーションの設計についても、もう一度、単純と簡単にかえりたい。脊髄みたいな中枢神経をなす広告は、どのメディアにこだわって何を語り伝えるか。年間通してブランドの呼吸を何でしていくのか。メディアミックスという表現にまどわされて、散らばりすぎのコミュニケーション設計を整理しなおすことも大事だ。広告会社がたくさん入りこみすぎて、経費や手法、権益のようなものが相手ペースで分散しすぎていないか。インターネットを意識しすぎた「検索」つきの広告も、ちゃんと手を打ってあるといわんばかりで、私には目障りだ。広告を出すまで、企業内ではいろいろな調整や決裁ごとがある。意見を聞けば聞くほど、その人の正論がですぎてまとまりが悪くなる。このプロセスで広告の多くがゆがんでいくことが多い。よい広告を作るために、このプロセスの単純、簡単化をすすめることが意外に大事な急務になる。

前向きにあと戻りする

 進んだと思ったら立ち止まり、ときにはもとにかえってみるのはうしろ向きではない。広告の目的や目標について、毎回事前に確認してから動きだす習慣をもちなおす。ともすればスケジュール管理をもとにした仕事ぶりになっているとき、素人発想にかえってみる謙虚は大事なことだ。宣伝費という大事な会社の資金を預かっているという感覚を失ってはいけない。軸足をいい加減にして妙なテクニックから始めようとしてはいけない。
 コンセプトという「広告の意思」のもとについても、こまめにチェックし自己確認して必要とあらば修正することについても、習慣化させてほしい。訴求力点の事前整理、あらゆる角度、視点から羅列しなおして、発売時のままでいいのかどうかディスカッションすることも忘れがちなもの、スケジュールをチェックして「コミュニケーションの台本」を微調整することも、広告は生きものと考えると大切なこと。前へ進むことだけ考えたり、新しいことだけが新しいと考えたりするのでなく、時には立ちどまり、時には前向きにあと戻りすることも考える。これは広告主の大事な仕事、複雑を簡単にする糸口だ。
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