CrossMediaの必然性 2007.12/vol.10-No.9

ユニバーサルプランナー
 ニューヨークのインタラクティブエージェンシーR/GA社のコミュニケーションプランニングで中核をなしているのが「ユニバーサルプランナー」と呼ばれるスキルセットである。この職能の概念は、インタラクティブエージェンシーだから当然だが、「そもそもインタラクティブなコミュニケーション構造をつくるのは当然である」というところからスタートしており、かつ「ユニバーサル」つまりキャンペーンすべてを包括して企画する責任者だというニュアンスがそこにある。
 そしてこのスキルセットの基本的な資質は、「ブランデッドコンテンツ」のプロデューサーであることである。


 インターネットの登場で、消費者の情報取得態度は相当変わってしまった。流通する情報量そのものも、ここ10数年で何百倍にもなり(総務省発表の情報流通センサス報告書より)、新しい情報ツールもほとんどが受け手に主導権のあるものばかりだ。テレビのコンテンツもタイムシフト視聴やネットのオンディマンドでは編成権は視聴者にある。こうなると、消費者は送り手から来る(プッシュされてくる)情報に常に気を配っているという状況から、興味関心が湧いたらネットにアクセスすれば良いので、常に気を張らなくなった。そもそも情報量が極めて多くなって、情報に鈍感にならないと神経がもたない。結果、興味・関心にスイッチが入った時に対して、そうでない時には全く無視されるということがあからさまになったのだと言える。
 こういう状況になると、悲しいかな、従来の広告のつくり方、すなわち企業のマーケティングメッセージの「What to say」「How to say」を送り手の論理で「広告として送りつける」という態度と手法は、恐ろしいほど力を失ったのだ思う。
 従来の広告メッセージ開発では、「このブランドでしか言えないこと」にこだわった。USPは売る側の論理、つまり「売る理由」だ。これを起点に広告コミュニケーションを開発するアプローチに一度疑問をもってみる必要がある。それほどマーケティングコミュニケーションの環境は変わっている。
※USPとはunique selling propositionの略で、その商品にしかない売り物、特徴のこと。


 消費者が求めているものは「メディア」でも「広告」でもなく「コンテンツ」である。まずは、こちらを向いてもらえる「コンテンツ」から発想し、それを「ブランデッドコンテンツ」に仕上げる仕組みを考えるのが、「ユニバーサルプランナー」である。
 「広告スペース」ありきで、枠内をクリエイティブするアプローチは、広告キャンペーンのアウトプットがほとんどマス広告への出稿だったからで、広告会社のビジネスモデルもメディアスペース販売のコミッションだから、当然こういう開発アプローチであった。
 しかし、ターゲットである生活者にとって受容性の高いコンテンツから発想して、ブランドメッセージに上手にマッチングさせるスキルを改めて確立する必要がある。「そんなことは今までもやっていた」という声もあるかもしれないが、これだけ消費者が主導権を持った(消費者がブランドをコントロールする)時代であることを再認識したスキルの再編が必要と言える。


 米国のインタラクティブエージェンシーのスキルセットである「ユニバーサルプランナー」はこうした環境認識に立脚したコミュニケーション開発の中核である。
 日本でもまずはこれを採用してみることで、日本の状況に合わせた新たな機能が生み出され、次世代広告コミュニケーションのキーマンが育成できるだろう。
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