こちら宣伝倶楽部 2007.12/vol.10-No.9

「若もの」と「女性」もう一歩前へ
イラスト (社)日本新聞協会の会員、新聞社の社員の広告担当者を対象にした「新聞広告論文」の第二次選考委員会に協力する機会があった。ITものが多かった昨年とガラリとテーマや素材が変わっているのを見て、新聞広告をとりまく課題やトレンドがたった1年で大きく変わることに驚いた。そこが新聞というメディアのシャープさといえる。委員会は大学教授と当番の新聞社の広告局長、それに私の5人、事前に論文に目を通し、仮採点してからの出席になった。

「現場は女性」の時代がくる

 選考委員会を終えたところで、なんとなくわくわくした気分になったことがある。事前の読みこみ用にドサッと送られてきた論文には、公平を期するため社名も氏名も記載されていないが、読みこむほどにケースや引用例、その他特有のシステムのことなどがでてくると、いくつかは社名だけは想像できるものもあるが、名前や性別、キャリアはわからずじまいだった。
 選考を終えた時点で、事務局の方に参考までにと、入選作品のなかに女性はいらっしゃるのかどうかたずねてみた。新聞業界というのは機会あるごとに「男の業界」だと思うことが多くそのことがずっと気になっていたからだ。
 それが失礼な質問であることがわかった。全応募は46回目の昨年は82編、それが少しダウンしたのは残念だが、47回目の本年は72編だったらしく、そのうち17本は女性の応募だったという。さらにその後正式に届いた最終報告によると、最優秀賞「医療法・薬事法改正がもたらす新聞広告の新たな可能性」は読売新聞の山田恵美子さん、入選の「クライシスマネジメントの先のマニフェスト広告 不祥事のピンチを発展のチャンスに」は朝日新聞の伊藤耐子さん、同じく「モバイルとの連動が拓く、新聞広告の未来」は読売新聞の中西美沙子さん、そして「情動を生む新聞広告 脳経由こころ行き」は朝日新聞の柳裕子さんと4作は女性が占めた。
 いずれも力作だが、特に女性ならではという際だった視点や分析は印象にないが、男社会と思われる新聞業界の中でしっかりした論調を持つ新しい女性が、じわじわと正確に登場しつつあるのはわくわくしてしまう。同席した大学教授は帰りの道すがら、学校では女性が優秀、卒業の総代はこのところずっと女性、まれに男子学生が立つと会場がどよめくという。なんとなく男が古い型にはまっていく中で、賢明で柔軟な女性が躍り出てくるのはとても楽しみだ。

「変化対応」がビジネスチャンス

 今回の「新聞広告論文」では、この女性ががんばって上位進出して立派だったことと、もうひとつ印象に残ったのは「広告のシーン」を拡大しようとする動きが目立ったこと。そのためには後述する変化にすばやく対応して、新しい広告の必要性と動機づけを考え、広告主に広告による新しい事業展開をすすめようとする動きに積極性が目立ったことだ。
 これはひょっとして論文を書いた当人の着眼や気づきではなく、その社の広告局ですでに議論され、社をあげての営業戦略になっているのか、あるいはもっと拡大して新聞業界あげて、共通の認識になっているのか、いずれにしてもなるほどと納得できるコンセンサスだと思う。
 規制緩和などで約束やルールが変わる、市場の変化で従来型の常識が変わっていく、まったく別のコミュニケーション設計が必要になってくるなど、「経営の根幹」にふれるようなことがでてきて、その流れにのりおくれると業界内で孤立してしまうようなことがではじめている。それに気づき、それへの対応や対策を企画という新しい商品に組みたて、広告主の広告動機と広告の手法、発想にせまっていこうとする動きがでてきている。若い論文筆者たちがそのことを実にリアルに論文化してきている。
 特徴的な変化は次のようなことだ。最優秀賞の山田恵美子さんは「医療法と薬事法」の改正に目をつけた。他にもここに目をつけたものがあり、これは可能性の目玉になる。優秀賞の大石隆宏さんと入選の松田泰彦さんは「B2B企業」の「B2Sへのアプローチ」の提唱を納得の説得力で説いた。選からはもれたが少子化による大学の経営問題に向けた広告の提案も次のテーマだと思った。地域社会や地域ブランドの元気と再生に向けた新聞広告の役割は、西日本新聞の伴貴文さんと山中亮さんが熱心に語った。入選作品集をとり寄せて目を通してほしい。

「男社会」からの脱皮

 冒頭の女性の論文上位入賞に関連して、手もと資料をひっぱり出してみると、JAA(日本アドバタイザーズ協会)が春に発表した「第33回JAA広告論文」のリストを見ても、全応募50編を一次で16編に、二次で8編に絞りこんで入賞ときめたその中に女性は3名、しかも最高の金賞は松下電器の鈴木藍さん、入社2年目で参加した食洗機プロジェクトの経験を論文にまとめた。食器洗い・乾燥機をただの家電でなく子育て家電と位置づけたコンセプトが、男たちには気づかない着眼になったと思われる。
 ゆっくりと若い人たちが次の時代の扉をあけようとしている。その先頭集団の中に女性がいる。しかもその女性が輝いている。大切なことはその若い人たちを支援し、気持ちよく働け、モチベーションを上げる職場の環境を整えていくことが先人たちの新しい仕事になってくる。新聞社というどちらかというと「男社会」の、どちらかというと「古い体質」を引きずっている仕事環境の中では、このことは簡単そうで簡単でないとは想像できる。他のメディアの集まりや前線の風景とくらべて、新聞だけがなんとなく「おっさん集団」に見えて、パーティーを開くと「カラスの宴会」みたいに黒っぽくなる。
 今回の論文集はできるだけ多くの新聞人に読んでほしい。そして職場では若い人や女性の意見や考え方に耳を貸してほしい。まだまだ完全ではないかも知れぬが、独特の感性や察知力があることを信じて、そこからおとなのヒントをつかんでほしい。来年から平成生まれが成人になることを肝に銘じ、それぞれのシーンで若がえりのプログラムを組むことが必須になる。
 企業の宣伝部も若い血と、女性の息吹を意識的にとりいれ、規律ある自由奔放と風通しのよい仕事環境に組みかえることが急務になってくるだろう。スマートな伝承と腰を据えた教育、老若お互いが刺激しあうおもしろい職場づくりを急がねばならない。さあもう一歩前へ。
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