立ち読み広告 2007.11/vol.10-No.8

衣食住+美容=「おしゃれ生活」
 新聞を広げた瞬間に、「オレもちょうど同じことを考えてたんだ!」と思うことがある。それは記事の見出しだったり、広告のコピーだったりするのだけど、漠然と抱いている思いにくっきりと輪郭を与えてくれる言葉は強い。
 最近では10月2日の朝刊5面『anan おしゃれ生活ノート』の全面広告(しかも4色)がまさにそうだ。ファッション誌『anan』の特別編集で出るムックである。しかもマロニエゲートの東急ハンズとタイアップというところがグッとくる。

出版も政治も「生活」に着目

 いま、人びとの関心は生活に向かっている。青山ブックセンターやブックファーストといった、流行に敏感な書店では、しばらく前から生活・暮らしに関する売り場がずいぶんと充実している。生活といっても、ひところはやった節約や収納アイデア方面ではなく、もう少しファッション度の高いもの。そう、このムックがいうように「おしゃれ生活」なのである。
 背景には、地球温暖化問題などで、環境に関心が向いていることもあるだろう。しかし、かつてのエコロジー運動のようなストイックなものではなく、今ある快適さは手放さずに環境を守ろうとする。LOHASと呼ばれるものの本質はそういうものだろう。
 『anan おしゃれ生活ノート』の表紙には、〈[住む][食べる][過ごす][磨く]4つのキーワードから気持ちのいい暮らしスタイルを考えました!〉なんて書いてある。つまりは衣食住+美容だ。それが「おしゃれ生活」だと言っているのである。バブルとその崩壊と長く続いた不況を経て、私たちは「やっぱり基本は衣食住だよね」という気分になっているんだと思う。ただし、バブルのおかげで良いものとはなにかを知ってしまったし、インターネットで世界の情報もどんどん入る。ただ住めればいい、ただ食べられればいい、ってもんじゃないんだ、という気分も共有されている。
 実をいうと、私はつい最近、『暮しの雑記帖』(ポプラ社)というエッセーを出したところだ。本文の章立ては「食」「住」「衣」「暮」となっている。『anan おしゃれ生活ノート』とほとんど同じなのである。まあ、私の生活に「磨く」はないけど。
 この前の参院選で民主党は「生活」を掲げた。民主党が勝ったんじゃなくて、自民党が負けただけだ、と言う人もいるけど、それはどうだろう。生活、それも生活の質について人びとが関心を持っているところに、ストレートに響く言葉を投げかけたから圧勝したのではないだろうか。
 このムック、ふだんから生活をテーマにする『クロワッサン』や『クウネル』ではなく、ファッション誌の『anan』の編集というところがおもしろい。しかも表紙のモデルSHIHOは、『BOAO』のイメージキャラクターでもある。つまり、マガジンハウスのいろんな雑誌が、このムックのなかでクロスオーバーしているのだ。
 それにしても、白地の面積が多い広告だ。私はこの白地の部分を「余裕」と読み替える。ほんとうのおしゃれな生活とは、心に余裕のある生活なんだろうなと思う。ああ、おしゃれな生活がしたい!

10月2日 朝刊

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