CrossMediaの必然性 2007.11/vol.10-No.8

データテクノロジスト
 広告ビジネスが変わる大きな要因のひとつが、アドテクノロジーのもたらす影響によるものである。従来、広告サービスは「ヒト」のスキルにそのほとんどすべてを頼るビジネスであった。今後もその本質は変わらないが、その重要なスキルのなかにテクノロジーを駆使できるかどうかが加わる。そしてそのテクノロジーの大半はインターネットを介したシステムによるものである。こうしたテクノロジー発想(アプローチ)によって、広告キャンペーンの構造やプランも従来とは変わってくる可能性がある。


 こうした状況のなか、次世代広告コミュニケーションにおける新しいスキルセットとして位置づけられるのが、「データテクノロジスト」である。ここでいう「データテクノロジスト」とは、単にログ分析をする人間ではない。広告というサービスに、人力では不可能だったことをシステムやツールを使って解決する発想を持ち込むことで、広告効果の最適化を図る役割といえる。
 特にWebの世界は、サイトそのもの、広告配信、広告表現技術など様々な面でテクノロジーの恩恵を受けており、いまだその潜在力の一部しか使われていない。
 またWebというマーケティング装置は、広告主企業のマーケティングの根幹を担う場合もあるため、ログデータは顧客行動そのものの記録であって、単に広告を評価するレベルではない貴重なデータともなり、スルー・ザ・ラインを実現するエンジンたり得る。
 つまり、Webでの顧客行動を根幹として、そこまでに至る流れをたどることで広告効果を本質的に評価することができ、そうすれば、ROAS(Return on Ad Spend)は、広告スペースや表現のパフォーマンスだけでなく、ブランド力、ブランドイメージ、Webサイトのパフォーマンス、想定ターゲットの精度など様々な因子をもってマーケティング活動の全体最適を図ることができる。
 データテクノロジストは、データから意味を読み取るスキルと、テクノロジーを駆使してマーケティングの全体最適化の仕組みを設計するスキルで成立する。もちろん従来技術系の人材から広告の実際を経験して育成するケースが多いだろうが、最近広告会社にも理系の頭脳をもった人材がかなりいる。彼らの広告ビジネスの知見とテクノロジーへの理解は重要な素養といえる。別にシステムをつくるスキルが必要なわけではない。使いこなす技量が育成できればいいのである。広告屋として技術を使いこなすスキルが確立すれば、新たな実働性の高いシステム開発も可能である。


 ただし、データテクノロジストがその職能を確立するための課題がひとつある。広告主のWeb上にカタログ請求や会員登録などの明白な指標がある場合は、比較的話は簡単であるが、マスマーケティング商品のWebコミュニケーション活動をどう評価するかという問題だ。これは商品カテゴリーによっても、個々の企業、ブランドによっても、複数の考え方や指標がでてくると思われる。各ブランドが独自のベンチマークをつくる必要があるわけだが、こうした評価指標をそれぞれに処方することもデータテクノロジストの重要な役割だ。


 広告会社はコンサルタントとしての質の高いデータテクノロジストを少数でも育成することで、広告主をグリップする機会を得るようになるだろう。
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