IT弁護士の法律ノート 2007.11/vol.10-No.8

「解禁」に向かうネット上の選挙運動
 本年7月の参院選では、公職選挙法(公選法)との関係で禁止されてきたネット選挙運動を、自民・民主の両党が、事実上「解禁」に踏み切ったとして話題になりました。
 参院選の結果を踏まえて、今後、早期の衆院解散総選挙は避けられない模様です。
 選挙運動も広い意味ではパブリシティー活動の一種ですので、今回はネット選挙運動と公選法の関係について説明します。
 公選法は“カネのかからない公正な選挙”という見地から、選挙運動期間中に頒布・掲示できる「文書図画」の数量等を規制しています。
 この問題を振り返ると、1996年、新党さきがけの「回答願」に対し、自治省の選挙課(いずれも当時)は、ホームページ(HP)も「文書図画」であり、無制限に閲覧できるHPを用いた選挙運動は、数量規制に違反するなどの判断を示しました。これが発端となり、最近まで選挙運動期間中のHP更新は凍結されてきました。
 しかし、顔写真と名前だけの選挙ポスターや、大音量で耳障りな選挙カーによる候補者名だけの連呼など、伝統的な選挙運動では、最も大切な政策内容が、有権者に伝わりません。このため“政策不在”と批判されて当然です。
 これと比べ、HPであれば候補者は詳しい政策内容を低コストで掲載でき、いつでも、どこからでも、多忙な人や在外投票予定の海外居住者も簡単に閲覧できます。今春の統一地方選で話題となった動画投稿サイト「ユーチューブ」でおなじみの、政見放送や演説会のストリーミング再生も容易に利用でき、あまりカネもかかりません。まさに“カネのかからない公正な選挙”という公選法の理念に適合しています。
 こうした観点から、民主党が数年前より解禁のための法案を国会に提出してきましたが、廃案が続いてきました。総務省も2002年に「解禁」を認める報告書を取りまとめましたが、与党内に誹謗中傷などを危ぶむ声も強く、「解禁」は実現しませんでした。それどころか、2005年の衆院選では、民主党が公示後にHPを更新して党首の遊説内容を掲載したことが公選法に抵触するとして自民党が批判していました。
 しかし、今やネット接続は国民に広く普及し、国会議員のHPも当たり前の存在となっています。このため昨年5月、自民党も選挙制度調査会最終報告案で「解禁」を打ち出しています。
 こうしたなか、今回の参院選では、自民・民主の両党が、公示後も、党首の街頭演説の内容などをHPに掲載し、一部政党が追随しました。両党の更新は投票日の前日まで続きました。
 しかし、国会での審議をバイパスしている点で、不正常な「解禁」であることも事実です。現に今回の参院選でも、政党HP更新とは裏腹に、選挙運動期間中、各候補者HPでは更新凍結という中途半端な状態が続いていました。
 今も与党内には誹謗中傷を理由とする根強い反対論がありますが、衆参両院で第一党を占める両党は大筋で一致しています。来るべき次期総選挙に間に合うかどうか、問題はありますが、両党が今回「解禁」に踏み切った以上、国会での本格的な審議を経て、早期に公選法改正という形で “正常化”されることが望まれます。
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