CURRENT REPORT 2007.11/vol.10-No.8

ベビー・キッズ専門レーベル設立で音楽ソフト市場の掘り起こしを図る
 ビクターエンタテインメント株式会社は、メジャーレーベルとして初のベビー・キッズ専門レーベル「ハイハイレコード」を6月に設立した。従来のレコード会社がレコードショップに納品して商売するという枠組みを超え、異業種とのコラボレーションやタイアップ、販路拡大といったユニークな取り組みを行っている。その戦略について、同社企画制作部長の栗原洋氏に話を聞いた。

ビクターエンタテインメント株式会社 企画制作部長 栗原 洋氏 ――レーベル設立のきっかけを教えて下さい
 我々のコアビジネスはヒット作品を世の中に送り出すこと、つまり、ムーブメントを起こすようなアーティストの育成であり、商品の企画というところにあります。ただ、それだけでは当たり外れが激しくリスクを伴いますので、長期間同じペースで安定的に売れていく商品が必要です。
 同時に、音楽ソフトのオーディオパッケージ市場が98年を境に縮小傾向にあることからも、潜在的なニーズはありながら、これまで商品が十分に用意されていなかったマーケットを開拓しなければいけません。 そこで誕生したのが、ベビー・キッズ専門レーベルの「ハイハイレコード」です。

――レーベルの特徴は?
 「ハイハイレコード」は妊娠期から6歳までの子どもを持つ20代から30代の母親をターゲットに、胎教に効く楽曲集から、赤ちゃんが聞くだけで泣きやむCD、乳児のマッサージやコミュニケーションのノウハウを習得できるDVD、子どもに聞かせたい童話、童謡集などその成長段階に応じて実用コンテンツを豊富にそろえています。制作スタッフもターゲットに近い女性のディレクターやプロモーターを起用し、子どもだけではなく大人も一緒に楽しめるようなクオリティーを持った商品を展開しています。
 中でも、赤ちゃんが泣きやむCD「ほーら、泣きやんだ!」は、子どもがお母さんの胎内で聞いていた音を、特許認定された独自の方法でリアルに再現している究極の子守唄です。現在おおよそ20タイトルを販売していますが、累計で50万枚以上、売り上げているヒット商品です。

――ターゲットがかなり限定されているように思えますが
 確かに市場規模は大きくありませんが、毎年100万人の新生児が誕生することを考えると、常に新しいマーケットが出現するということですから非常に魅力的なのです。
 プロモーションの面でも、ヒットを狙う作品では、発売前後にピークを作って2週間で売り切るというようなものですが、「ハイハイレコード」では6か月に1回、プロモーションのピークを設定すれば、どこかのタイミングでターゲットに届くという計算になりますのでとても効率的です。

――販売戦略もユニークですね
 こうした商品は従来、レコード店だけでも売れてはいたのですが、実際、育児をされているお母さんがわざわざレコード店に足を運ぶ時間がそうあるとは思えません。それならば、お母さんの動線上に配置することで、より手軽に手にしてもらえるよう、「セイジョー」や「べビーザらス」といったドラッグストアやベビー用品専門店などでも販売しており、実績も上がっています。そのほかにも、P&Gさんが主催されている「WOMAMA」というプロジェクトにも参加しています。「ママがすてきな女性として輝くために」をテーマに、お母さんへのサポート活動を行うプログラムで、イベントでの音楽提供などを通じて協力しているのですが、ターゲットユーザーへ確実に情報を届けることができるプロモーションチャネルとしても活用しています。
 また、レーベルの商品は実用品ですから、テーマが同じものを2〜3枚と買っていく方はなかなかいらっしゃいません。そこで、タカラトミーさんと提携して「ほーら、泣きやんだ!」の音源を入れたぬいぐるみを商品化したり、学研さんともCDとのコラボレーションブックを制作するなどして、チャネルと同時にアイテムも増やすことで売り上げの拡大を図っています。

――今後の展開はどのようになりますか
 まず、ネット販売を強化します。販路を拡大したとはいえ、やはり育児ママの外出の機会は限られますから、例えばAmazon.com内にブランドストアを立ち上げ詳細な商品説明なども用意します。
 プロモーションについても、当初は子どもが生まれてからの母子関係を重視した戦略でしたが、時間的にも精神的にも比較的余裕のある妊娠期の情報発信が効果的ですので、母子手帳に付属する読本などとのタイアップも考えています。
 商品面では定期的に新作をリリースしていくと同時に、レーベルのアイコンとなるアーティストも発掘していきます。現在Kiroroの金城綾乃さんをフィーチャーしていますが、子どもは成長するので、3年先ぐらいまでアンテナ張って情報収集しています。「誰々がお母さんになりそうだ」とかね(笑)。
 こうして、専門レーベルとしてこの市場に積極的に取り組んでいくことでハイハイレコードの認知が広がり、それによって良質なコンテンツも集まり商品ラインナップも拡大し、強いブランドに成長していくと考えています。

ほーら、泣きやんだ! ベスト・コレクション こどもにきかせたい童話 こどもにきかせたい童謡
ベビーメッセージ   ベビーサイン
ハイハイレコード
http://www.hihirecords.com/index.phtml

(梅木)
取材メモ
 ビクターエンタテインメント株式会社は、今年創業80周年を迎えた日本ビクター株式会社の音楽事業部門としてレコードの制作を開始した。業界で2番目の歴史を誇り、ロック、ポップス、クラシック、ジャズ等、あらゆるジャンルを網羅する総合ミュージックエンターテインメント企業だ。
 同社は経営スローガンに[夢、感動を創造するヒューマン・ネットワーク]を掲げている。広報部マネージャーの本松直樹氏は「時代の変遷と共に音楽の楽しみ方は変わっていますが、夢や感動を生む音楽の力は不変です。人と人とのつながりから音楽は創造され、そのネットワークを通じて楽曲の持つ魅力を伝えていく。私たちは、1年たったら忘れ去られるような『ヒット曲』ではなく、世代を超えて親しまれ、歌い継がれて人の心に残るような『流行歌』を世の中に送り出したいですね」と語る。
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