特集 2007.10/vol.10-No.7

新聞広告の変わるもの、変わらないもの
新聞広告の変わるもの、変わらないもの

 広告のあり方を激変させたメディア環境の変化も一段落し、冷静な目で、改めて広告の力、新聞広告の力を問い直す時期に来ている。代表作「男は黙ってサッポロビール」をはじめ、常に注目されるコピーを作り続けている秋山 晶氏と、若手のコピーライターとして活躍する渡辺潤平氏に、今、そしてこれからの時代の新聞広告の力がどこにあるかを語り合ってもらった。


――おふたりは年齢が40歳違うのですが、対談から、広告、そして新聞広告の「変わるもの、変わらないもの」が見えてくればいいと思っています。
秋山 僕の10歳下が仲畑貴志君、20歳下が岡康道君、30歳下がサノ☆ユタカ君だから、渡辺君はその下になるんだ。
渡辺 77年の1月生まれですから、ちょうど30歳ですね。
秋山 仲畑君はいつも10歳下だって言うんだけど、本当はウソで11歳下なんですよ(笑)。でも、こういう対談のときは、10歳下、20歳下と言った方がわかりやすい。僕は1936年生まれだけど、仲畑方式で今日もちょうど40歳下ということでいきましょう(笑)。
 ところで、新聞って何歳から読んでました? 僕なんかのころは、昭和14、15年の話だけど、当時の小学生新聞を読んでいましたね。海野十三という作家の連載小説『火星兵団』を楽しみに読んでいた。まだ、僕が10歳になってないころですが、それが最初の体験ですね。 渡辺 僕は読売新聞の日曜版に連載されていた漫画の「ライパチくん」が原体験ですね。小学校1、2年生のころだったと思います。内容もよくわからずに読んでいたと思うのですが、日曜日が楽しみでしたね。

キャンペーンの起点

――新聞の原体験はおふたりとも同じようですが、現在はどうですか。
渡辺 僕は一般紙のほかに、スポーツ紙も読んでいます。プレゼンのある日や時間に余裕がある時は、経済紙も買って読んでいます。新聞が、やっぱり好きなんです。特にスポーツ紙は好きで、毎日欠かさず読んでいます。ずっと千葉ロッテ・マリーンズを担当していることもあるんですが、芸能ニュースも読み物として面白いんですよ。
 もちろん、新聞広告はちゃんと見ていて、車の新発売の広告が出ていたりするとドキドキしますね。世の中に大きい商品が出たんだというのが分かるのは、やはり新聞広告だと思うんです。
秋山 渡辺君の千葉ロッテの広告は新聞広告の印象がありますが…。
渡辺 あれは、ポスターですね。新聞広告に限らず、自分のコピーのスタンスとして、言葉が真ん中でちゃんと仕事をする原稿を作りたいというテーマをずっと持って仕事をやっているんですね。だから、新聞であろうがポスターであろうが、言葉がきちんと真ん中にレイアウトされることを心掛けています。新聞広告は文章を読んでくれる人が特に多いと思うので、一番気合が入るというか、言葉を隅々の人たちまで届けるためにどうするかということに気を使います。他のメディアとは、言葉の磨き方が違う気がします。
 若い世代のクリエイターには、駅張りポスターで目立つことをしようという意識が強いと思うのですが、僕は博報堂にいたせいもあって、新聞15段がグラフィック広告の軸になるという教えを受けて育っています。新聞広告をまずパーフェクトに仕上げることが、キャンペーンの基本だと思っているんですね。だから、新聞広告はほかの人が作っているものも含めてものすごく意識して見ますね。
秋山 ただ、実際のキャンペーンは新聞を使う場合もあるし、使わない場合も出てきていますね。やはり、タレントを使うキャンペーンだと、15秒のテレビCMだけになってしまうことが多い。渡辺君よりはるか上の世代の話だけど、最初はコピーライターがクリエイティブディレクター、CDをやっていました。その次に、CMプランナーがCDになった。最近は、アートディレクターがCDになる予兆がありますね。なぜかというと、コミュニケーションツールが、既存のメディアだけではなくなってきているからです。
 この世に存在するものはすべてメディアであると考えると、その場合、CDはアートディレクターが一番ふさわしいし、新しいことをしてくれるのではないかという期待感もある。遠い将来には宇宙空間も広告のスペースになると思いますが、それもやはりアートディレクターの仕事だと思うんですね。
 なぜこんな話をしたかというと、これは過信ではなくて、そういう時代になっても新聞広告ができれば、あらゆるメディアの広告ができると思っているからです。それはなぜかというと、広告づくりにはコピーが絶対に必要だからです。どんなメディアを使うにしろ、クリエイティブのスタッフのコミュニケーションにコピーは必要です。それがなければ、仕事をお願いすることすらできないんですね。

ブランディングの起点

渡辺 だけど、既存の広告の枠以外のところで広告を作ろうとすると、新聞広告が置き去りにされるケースが最近は増えてきたように感じます
秋山 それは考え方が間違っていますね。そういうアートディレクターとは組まないほうがいいんじゃないの(笑)。アートディレクターもやっぱり力のある人だと、そういうことは言わない。年代が若くても、それは同じです。
渡辺 ただ、クリエイティブの意識はそうでも、新聞広告はテレビCMを除けば予算が一けた違うから、どうしてもカットされてしまうこともあると思いますね。
秋山 それは確かにあります。それから、グラフィック広告に関しては日本は鎖国していて外国の新聞広告の情報が入ってこないこともありますね。例えば、カンヌ国際広告祭にしてもテレビCMの情報は入ってくるけど、グラフィック広告の情報は入ってこない。そうすると、アートディレクターの脳が刺激されないんですね。
 それと新聞広告の場合は、USAトゥデーやニューヨーク・タイムズを見ても、あまり表現として面白いものはない。なぜかと言うと、アメリカの新聞はほとんどが地方紙だからです。だから、ディーラーの広告やデパートの広告が多いでしょう。
渡辺 地域情報というか、折り込み広告に近いですね。日本の全国紙でも、最近は同じようになっている気が非常にしますね。新聞広告は大きい視点からものが言えるメディアのはずなのに、あまりにもダイレクトなセールスのためだけに使われると、メディアとして俗っぽく見えるし、社会性をなくしてしまうと思うんです。
秋山 社会性が一番の新聞なのに、確かに最近はダイレクトレスポンス広告が多くなっていますね。僕が30代のころは、新聞広告だけで、ブランディングが十分できたんです。向秀男さんというクリエイティブディレクターがいて、新聞広告だけでブランディングをやっていた。ヤマハも東レもそうです。特に、素材メーカーはそうでしたね。そんなことを今言うとみんな否定するけど、今でもその力は新聞広告にあると思います。
 この夏に掲載された旭化成の広告がそうですね。干からびた大地に一隻の小舟と釣り糸を垂らす釣り人の写真があり、「ここは湖だった。魚がいたんだ」というキャッチコピーがある。ページをめくると、水をろ過する新素材の紹介になっている広告ですが、新聞でブランドを作っているいい例だと思うんですよ。今でもきちんと考えさえすれば、新聞広告だけでブランディングはできるのです。
 もちろん、そのブランドがどういうイメージを目標とするかでメディアが変わってきます。「好きだ」と言われたいだけならテレビで十分ですが、企業の価値を伝えようと思ったら新聞です。メディアのイメージと企業の目標にするブランドイメージは、表裏一体なんです。
渡辺 僕も、今でもちゃんと作っていけば、新聞広告はブランディングに有効だと実感しています。
 僕が広告を志したときは、トヨタが新聞広告を活発に展開していたときで、佐々木宏さんがおやりになっていた、ドリトル先生やコロナ氏、エコプロジェクトのシリーズが、どんどん掲載されていました。そういう時代の新聞広告を僕もやりたいと思っています。ゆえに、提案の機会があるときは、クライアントの要望にかかわらずシリーズ広告を持っていくことが多いのですが、なかなか実現は難しいですね。
秋山 やっぱり、寄せ波もあれば引き波もある。日本の企業が元気になれば、また戻ってきますよ。


コミュニケーションのインフラ

――先ほど、新聞広告はキャンペーンの基本だとおっしゃいましたが。
渡辺 ただ、そう思っている人は、コピーライターでも減ってきていると思います。
秋山 でも僕は、やっぱりコピーは新聞広告が基本だと思っているんです。例えば、テレビにスーパーインポーズを入れるときに新聞広告のコピーを入れると、それが柱になるんです。だから新聞広告は、コミュニケーションで言えば、「セールストーク」ではなくて「インフラ」なんですね。
渡辺 B倍ポスターにコピーを入れるよりも、新聞広告に入れるほうがはるかに難しいという経験を、僕も何度かしています。B倍ポスターは大きいし、ビジュアルの力が圧倒的に強いから、どんなコピーでも何となくはまってしまうところがありますが、新聞は媒体自体が情報の塊だから、その中で一番目立たなければいけない。僕自身は、常に40ページの中で一番目立つ1ページにしようと思って新聞広告を作るんです。そうは思うのですが、新聞広告に入れるコピーは、本当に突き詰めて考えないと、はまらないことが多いですね。そういう意味では、僕のコピーはまだ全然完成してないなと思うんです。だから、新聞広告を定期的に担当するのはいいことだと思っています。
秋山 そうですね。このごろ新聞広告が少なくて、テレビが多くなっている。コミュニケーションとしても、非常に物足りなさを感じますね。

新聞の価値は厚みのある情報

――新聞の特性は、他のメディアとは違う?
秋山 新聞の一番いいところは、情報がパッと目に入ってくるところですね。
渡辺 ページ割りもそうですが、この大きさも新聞ならではです。新聞を開くと30段広告がドーンと入っている感じというのは、他の媒体とは圧倒的に違う体感だと思いますね。
 それから、ウェブはサプリメントのように情報を摂取するという感じですが、情報をきちんと取り込んで消化できるのが新聞の価値だと思うんです。完全に情報の質が違うので、僕は絶対新聞はなくならないし、これからも存在感を持ち続けると思いますね。
秋山 ただ、新聞はそこに安心してはいけないと思いますけどね。僕は、新聞は意地を張ってでもページが厚くないとダメだと思っているんです。薄い新聞って寂しいんですよ。読まないところはパッと捨てちゃって、読みたいところだけ読むのがやっぱり新聞の楽しさだと思うんですよ。情報が詰まっているという感じが大事なんです。昔、向秀男さんが言っていましたが、振ると下に活字がたまるようなのは新聞じゃないんですね(笑)。厚みのある新聞に掲載されるから、広告を見るイメージが変わるんですよ。
渡辺 質感としての信頼性ですよね。それはすごくよくわかります。

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