From Overseas - London 2007.10/vol.10-No.7

ネット上の地方広告に全国紙が触手
 イギリス最大の部数を誇る日刊全国紙「サン」が、ウェブサイト「サン・オンライン」をリニューアルし、地方広告の取り込みを狙っているというニュースが報じられた。サン側は公式発表をしていないが、9月中にはリニューアルが完了し、新サービス「マイストリート」が導入される見込みだ。
 「マイストリート」は、地域の地図、ユーザー参加型のパブの紹介、地域情報メールの配信、地域居住者内での「出会い系」サービスなどを行うもので、利用するには無料登録が求められる。地域密着型コンテンツでユーザーを引き付け、登録情報を基に地域別の広告配信を行おうとする試みであろう。広告ソースは、ユーザーの居住地に応じた求人や不動産などの案内広告を中心に考えているようだ。
 ちなみにイギリスでは高級全国紙も含めて多くの新聞社がインターネット上の「出会い系」サービスを行っており、また、パブの評価は日常会話の中で頻繁に行われる、特に男性にとって「重要な」話題だ。
 さて、地方の案内広告は、その市場規模にもかかわらず、インターネット広告業界の中で議論が深められることの少なかった分野と言える。英地方紙の業界団体「ニュースペーパー・ソサエティ」によると、イギリスの案内広告費全体に占める地方紙の割合は50%、全国紙は12%、雑誌は28%、インターネットは10%である。一方で、インターネットのみに絞った場合、地方紙のウェブサイトが占める割合は26%に下落し、求人専門サイトの割合が67.5%まで増加する。全国紙は6.5%に過ぎない。
 つまり、インターネットに流出し、今後も流出し続けるであろう地方紙の案内広告は、全国紙にとっても新たな収入源となりうる。よって、ユーザーの居住地が確定できるサンの新しいサービスは、この受け皿の用意ととらえることができる。
 しかし、この方策が取れる新聞社は限られている。「タイムズ」と「デイリー・テレグラフ」は地方紙の収入を奪っても痛手を被らないが、「ガーディアン」と「インディペンデント」は自らの首を絞める結果になる可能性がある。ひとつの新聞社が、全国紙、地方紙を含めて、複数の新聞を発行している場合があるためだ。
 例えば、全国紙「デイリー・メール」の親会社DMGT傘下の地方紙は約100紙、「デイリー・ミラー」を発行するトリニティ・ミラーが発行する地方紙は約240紙ある。また、「ガーディアン」を発行するガーディアン・メディア・グループは英最大部数(無料配布分含む)の地方紙である「マンチェスター・イブニング・ニュース」を、「インディペンデント」を発行するインディペンデント・ニュース&メディアは北アイルランドで「ベルファスト・テレグラフ」を発行している。
 一方で、「タイムズ」「サン」を発行するニューズ・インターナショナル、「デイリー・テレグラフ」のテレグラフ・メディア・グループなどは、地方紙を発行していない。よって、いわゆる営業広告を含め、地方紙に掲載されている広告を「タイムズ・オンライン」が奪ったとしても、何の問題もないということだ。
 さて、今回の「サン」のウェブサイトリニューアルのニュースを読んだとき、2006年2月に行われた世界新聞協会広告部会のカンファレンスで聞いた数字を思い出した。アメリカのメディア・コンサルタントであるボレル・アソシエイツから発表された、総広告費における全国と地方の比率だ。
 アメリカでは、総広告費に占める全国広告の割合は49.1%、地方広告の割合は50.9%とほぼ半々で、ひとつのメディアだけをとっても、新聞やテレビなど従来型メディアであれば、おおよそ「半々」と言うことができるという。ところが、インターネットの場合は地方広告が22.8%に過ぎず、今後、従来型メディア並みの構成になるに違いないということだ。
 日本における、インターネット広告全体に占める地方広告の割合を示すデータを見つけることができなかったが、統計を取ってみると面白い。全国紙やインターネット専門のメディア企業が、地方紙からどれだけ広告費を奪えるかを示す指標となるだろう。
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