Fashion Insight 2007.10/vol.10-No.7

日本ファッション・エディターズ・クラブについて
 連載2回目の今回は、私が所属している日本ファッション・エディターズ・クラブ(FEC)について読者の方に知っていただきたいと思う。というのは、FECは放送関係、新聞、雑誌などのファッション・メディアの責任者によって組織され、広告関係者はまったく関与してはいないからだ。

 FECは昭和27(1952)年、ゼロからのスタートだった戦後ファッションに一定の方向性をつけるべく、またファッションを戦後文化の柱に育てようという目的のもとに創立された。提唱者であり、その後も中心メンバーとしてFECをリードしたのが「装苑」の今井田勲、「婦人画報」の熊井戸立雄、「日本織物出版」(現在の日本ヴォーグ社)の瀬戸忠信、「暮しの手帖」の花森安治、「それいゆ」の中原淳一ら雑誌ジャーナリストたちだった。また日本のファッション界に貢献した人たちを顕彰するFEC賞はその5年後、昭和32(1957)年から始まった。
 今から55年前にこのような組織を作り、1年に1回、会員の投票によりFEC賞を贈るということを発想し、実行した先人たちの慧眼にはただただ驚くばかりだ。その当時、誰が現在のファッション界の隆盛を想像できただろう。

 

 第1回の受賞者は着物デザイナーの大塚末子さん。その後、森英恵さんら、日本を代表するデザイナー及びファッション関係者が受賞してきた。
 平成13(2001)年からはその選考対象を日本だけでなく海外にも広げ、当時GUCCIのトム・フォードなど、有力デザイナーが受賞してきている。また、先日他界された山口小夜子さんをはじめとして、日本や世界を代表するモデルたちにも、その賞の枠を広げている。
 今年は50回記念ということもあり、歴代の受賞者や、ファッション関係者約700人以上に、会場となったリッツ・カールトン東京にお集まりいただいた。
 FECの贈賞式は、アメリカのファッション専門紙「WWD」でも報道されるほどワールドワイドな賞になったが、これも日本が世界でも有数のクリエイターを輩出していることと、ファッション・マーケットとしての重要性の証しと言えるだろう。
 FECの活動はそれだけではない。毎シーズン開催されるファッション・セミナーでは、海外のコレクションを映像で会員にお見せしている。しかも各プレス担当者の説明つきで。無料・省略なし・解説つき、という豪華なセミナーはFEC以外には無い。

 また数年前からはトップセミナーと銘打った業界のトップによる講演会も年1〜2回開催している。今までには資生堂の福原名誉会長、当時のLVJ秦社長、森英恵さん、「サンモトヤマ」の茂登山会長、「シャネル ジャパン」のリシャール・コラス社長などそうそうたる顔ぶれに無料で出演していただいている。茂登山会長の話された戦後のブランド・ビジネスの歴史は、このセミナーがきっかけで、集英社の新書にもなった。
 アメリカのファッション界にはCFDAというデザイナーの組織があり、毎年、活躍したデザイナーにCFDA賞を贈賞しているが、編集者、ジャーナリストで構成されるFECのような組織は世界に見当たらない。FECは基本的には会員の会費によって運営されている。現在会員数は約80人。最近の雑誌業界の状況を反映し、退会される方と新たに入会される方でほとんどこの数年増減がない。一方、年1回のFEC賞贈賞式及びパーティーへの協賛企業は増加している。ファッション界への他業種からの関心の高さを表していると言えるだろう。

 
デザイナー、モデルを始めとする多くのファッション関係者が集まった第50回FEC賞贈賞式(5月10日)の模様から(敬称略)

 このようにますます認知度が上がり、国際化しているFECだが、その活動は、幹事団を中心としたボランティアに支えられている。会員全員がファッション・メディアの責任者ということもあり、多忙ゆえの活動の限界もある。しかし、これだけのファッション大国になった日本で、ファッション文化を根付かせたい、また、ライフスタイルの重要な要素となったファッションを社会でさらに認知させたいとの思いで活動を続けている。
 今や国がファッション・ショーを支援する時代だが、あくまでも編集者、ファッション・ジャーナリストの枠内で、どれだけ貢献できるか……その使命は重い。
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