立ち読み広告 2007.9/vol.10-No.6

オトーサンも楽しめる鉄道模型の分冊百科
 7月19日の朝、第5面の全面カラー広告をじっと見てしまった。『週刊 昭和の「鉄道模型」をつくる』がこの日、創刊するという。ページの上半分は鉄道ジオラマの鳥瞰写真。なかなかレトロな雰囲気である。その下にジオラマの細部写真が11点と、ジオラマを操作している人物込みの写真が1点。
 この広告を見ながら、いろんなことを考えた。
 まず、これが分冊百科であること。ワンテーママガジンとかパートワークとも呼ばれる。ひところ分冊百科が日本の出版界を席巻した。テレビCMを流すなど、大規模な宣伝をするので、書店からも大いに歓迎された。ふだん書店に来ない人まで足を運ぶようになるからである。しかし、ブームはそう長く続かなかった。あまりにも多くの出版社が参入し、市場が飽和してしまったのかもしれない。それでも、良質なタイトルは売れ続けている。潜在的読者がいるすき間を見つけられた分冊百科は生き残った。

「60cm×45cm」のノスタルジー

 鉄道模型というテーマが面白い。鉄道の車両そのものだけでなく、ジオラマをつくるというのである。
 鉄道ファン、鉄道マニアは、「オタク」という言葉が流布する前から、ホビーの世界において独自の地位を占めてきた。「鉄ちゃん」、あるいは「テツ」と呼ばれる。テツはあらゆるオタクのルーツである。鉄道写真を撮る者はカメラオタクやアイドルオタクになり、ダイヤグラムの解析に夢中になる者はゲームオタクになる。テツは数寄者の世界の茶の湯にも等しい。もっとも、以上は私の妄想的仮説にすぎないのだが……。
 漠然とした鉄道模型、ジオラマではなく、「Nゲージ」という規格にのっとっているところもいい。同規格の他の車両を走らせたり、ジオラマのパーツをつけることもできる。Nゲージは軌間9ミリで、車両の縮尺は150分の1。鉄道模型専用のホビー室など持つことができない私たち「フツーのオトーサン」でもジオラマを楽しめる。当広告には「60cm×45cmで楽しめる」とある。書斎は無理でもこれくらいのスペースは欲しい。
 しかもこれは「昭和の」鉄道模型である。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』以来、昭和30年代ブームが続いている。おそらくはこの本の想定読者である団塊世代が少年だった時代。そういやこの広告の写真は黄昏少し手前のややオレンジがかった色合いになっているではないか。ノスタルジーを誘う仕掛けなのである。

創刊号は「価格」780円

 創刊特別号が780円で、通常号は1490円という価格は、分冊百科としては高めだが、鉄道模型の値段としては安い。有名模型店の『ALWAYS 三丁目の夕日』キットは15万円だ。
 ところで、この『昭和の「鉄道模型」をつくる』は「価格」という表示をしている。講談社の他の分冊百科は「定価」となっているものがほとんどなのに。これは、DVDや玩具など、書籍・雑誌以外のものと組み合わせた商品については、再販制の対象とはしない、という公正取引委員会の意向によるもの。つまりこのシリーズは出版社による価格拘束が行われず、したがって書店は値引きして売る(あるいは高く売る)こともできるのである。


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