From Overseas - NewYork 2007.9/vol.10-No.6

いま問われる業界団体の意義
 米国最大の広告会社業界団体である米国広告業協会(AAAA、American Association of Advertising Agencies)の役割と存在意義が近年、揺らぎ始めている。メディアサービス担当のキャンプベル氏によると、同協会は1917年に創設され、現在加盟している約400社によって、米国で掲載される広告の実に80%が扱われているという。加盟社は会費の支払いと引き換えに、広告主の情報やメディアを扱う際の助言を得られるほか、経営に関する相談や関連法規の講習を受けることができるなど、広告ビジネスの創生・発展期においては、業界内で大きな役割を果たしてきたことは間違いない。そのAAAAが、「今日の広告業界のニーズに対応していない」(アド・エージ誌)と批判を浴びているのだ。
 特にアド・エージ誌がやり玉に挙げているのが、同協会が毎年2月に広告会社と広告主、そしてメディアを対象に実施する、トレードショーを兼ねたカンファレンスだ。これもまたかつては重要な役割を果たすイベントとしてにぎわいを見せてきたが、近年は大規模化し、大概フロリダやラスベガスなどのリゾートで、しかも4日間連続で行うなど、多忙な広告業界からは参加しにくいものとなっている。しかも、参加するのは業界古株のいつも同じ顔ぶれで、内容も旧態依然としたものであり、変革著しい広告業界の流れを反映していないとの声も聞かれる。アド・エージ誌のコラムニストであるブルーム氏は、「検索連動型広告の専門家はどこにいた? 1流のデザイナーは? 最先端のデジタルクリエイターは? そしてデータベースの分析家はいったいどこに?」と手厳しい。
 そのような逆風のなか、18年にわたり務めたCEOを今年で退任する予定のドレイク氏が、7月中旬に行われた全米広告主協会(ANA)主催の広告会社−広告主会議の席上で、「私的で挑戦的」(ANA公式サイト)な質問を広告会社と広告主に対して次々に浴びせるという出来事があり、業界の反発が加速している。「私が不思議に感じること」と題したプレゼンテーションいわく、

・(会場にいたP&Gを名指しして)なぜ商品の売り上げが落ちたからといって、すぐに何十年も付き合いのあるサーチ&サーチやグレイとの契約を切ってしまったのか。
・広告主は、なぜ広告会社に新しいアイデアをいつも無償で求め、広告会社はなぜそれに応じてしまうのか。
・広告主は、データを重視し、要求するのに、なぜニールセンのようなメディア測定会社に出資しないのか。
・ウィーデン&ケネディやグッバイ・シルバーステイン&パートナーズのような「ホット」な広告会社が、なぜAAAAに加盟していないのか。
・ナイキやタコベルなどの、やはり「ホット」な広告主がなぜANAに加盟していないのか。
・彼らはなぜ、毎年2月のAAAAカンファレンスに参加しないのか。
・そして何よりも、なぜ私がこの場に招待されるまで18年もかかったのか。

など、まるで在任期間中に発言の機会が与えられなかったうっ憤を晴らすかのように質問を繰り出したが、会場の反応はかなり冷ややかだったようだ。後に、AAAAへの非加盟をとがめられたウィーデン&ケネディとグッバイ・シルバーステイン&パートナーズはそれぞれ、「20年以上前に加盟しようとしたが断られた」「費用対効果が悪いので、部分的に加盟しようとしたが拒否された」と表明している。AAAAの年会費は広告会社の売り上げ規模に応じて変わり、最も高い部類では数万ドルにもなる。これに見合ったサービスをAAAAが提供できない限り、今後も非加盟のケースは増えるのではないだろうか。
 多メディア化、ボーダーレス化、そしてターゲットの細分化など、広告業界を取り巻く環境は急速に変化している。AAAAはその変化のスピードについていけるのか、それとも取り残されてしまうのか、今まさに問われている。米国にはBMA(ビジネスマーケティング協会)やARF(広告調査財団)、IAB(インタラクティブ広告協議会)など様々な広告団体が存在し独自に活動、カンファレンスの開催を行っているが、まずはそれぞれが手を取り合ってみるのはどうだろうか。広告業界はかつてないほど進化のスピードが高まっている。業界団体もまた進化するべきだ。
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