Fashion Insight 2007.9/vol.10-No.6

Piaget そのエクストラヴァガンザな広告戦略
 7月10日、東京ミッドタウンに今春オープンした新国立美術館で、ピアジェの一夜限りの「エクストラヴァガンザ」エキシビションとパーティーが開かれた。
 「エクストラヴァガンザ」とは華やかな祭典という意味で、ピアジェが60〜70年代に発表した100あまりのウオッチ&ジュエリーコレクションと当時のキャンペーンビジュアル、さらに最新の広告ビジュアルが会場で発表された。
 当日のために、ピアジェ本社からフィリップ・レオポルド・メッツガーCEO、広告制作に携わるフランスのアーティスト・デュオ、ピエール(写真撮影)&ジル(レタッチ)、「ポセション」という時計でピアジェとコラボし、また今回もこのエキシビションのため特別にピエール&ジルが制作した作品にコラボしたドレス キャンプの岩谷俊和と、モデルの杏も出席し、文字通り華やかなイべントとなった。

ピエール&ジルによるピアジェの広告ビジュアル4点のオリジナル作品

 ピアジェといえば、現在はリシュモン・グループの一員だが、創業130余年を誇るスイスの名門時計メーカー。今では多くのジュエラーや時計メーカーが手がける、いわゆるジュエリー・ウオッチを世界で初めて発表した由緒あるブランド。その一方、時代を代表するアーティスト、例えばサルバドール・ダリ、アンディ・ウォーホル、ハンス・エルニなどとコラボしてきたことでも有名だ。
 今回展示されたミュージアム・ピースからも、その革新性、斬新さ、自由な発想に改めて驚かされた。
 メッツガーCEOによると、ピアジェではクリエーションの重要性は今でも変わらず、750人の社員のうち450人がクリエーションにかかわる仕事に従事しているという。こうしたクリエーションに対する高い意識が、年間約100点ずつの時計とジュエリーを開発できる原動力なのだろう。
 現代はともすると、アメリカ型のマーケティング主導のブランドビジネスがもてはやされているが、逆に言えば、だからこそクリエーションの重要性が問われているとも言える。
 上に、ピアジェの最近の広告ビジュアルを並べてみた。これらはみな前述したピエール&ジルによるもの。私は初めてこの広告ビジュアルを目にした時、正直言って、戸惑ってしまった。今までの時計メーカーの広告ビジュアルといえば、商品の大きな写真と機能のコピーか、ファッショナブルなビジュアルがほとんどであった。その中で、このピアジェの広告ビジュアルは幻想的で、ある種暴力的な光を放ち、ピアジェという企業の持つ大胆で情熱的なクリエイティビティーまでをも表現するひとつの芸術作品になっている。

今回のイベントのために制作された新作のビジュアル

 今回のエキシビションのために制作した最新のビジュアルは、前述したようにコスチューム・デザインがドレス キャンプの岩谷俊和、モデルは杏。岩谷はここ数年もっとも注目を浴びている東京の若手デザイナー。彼の作り出す独特の世界にはファンが多い。モデルの杏はニューヨークやパリでも活躍し、昨年FEC賞も獲得したスーパー・モデル。彼女の魅力は、ピエール&ジルに多くのインスピレーションを与えたという。
 日本の、というかアジアの才能とフランスの才能とがコラボし、独特の幻想的なイメージを作り上げたといえるだろう。
 ピエール&ジルが手がけたこれまでのピアジェの広告ビジュアルからも、非常に宗教的かつ東洋的な雰囲気が感じられる。もちろんピエール&ジルも何回もインドなどに旅行し、その影響を受けていることを認めている。ピエール&ジルが、多感な青春を生きていた70年代後半から80年代にかけて、フランスはアーティストにとってはあまり自由を感じられない保守的な時代であった。そのせいもあって、彼らはさらにアジアに引かれたと言う。

 伝統あるスイスのウオッチ・メーカーは、時には時代を代表するアーティストとコラボし、華やかな伝統と技術に裏打ちされた商品を発表してきた。そして現在、西欧とアジアの美意識の融合による真にアヴァンギャルドなビジュアルを作り上げている。
 メッツガーCEOは言う。ピアジェにとって、世界の2大マーケットは日本と中国です、と。

たい・かつと
中央公論新社雑誌編集局ディレクター
「エルジャポン」「マリクレール」の編集長を歴任。1999年よりファッションメディアの責任者の団体である日本ファッション・エディターズ・クラブ代表。毎月第4土曜日に発行される読売新聞の別刷り「YOMIURI STYLE MAGAZINE」の編集長を務める。


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