CURRENT REPORT 2007.9/vol.10-No.6

最新のテクノロジーを導入しe広告プラットフォーム創造
 インターネット広告の草創期である1996年12月にメディアレップとして設立され、10年以上先頭を走ってきたのがデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)だ。インターネット広告の世界では、次々と新しい手法やメディアが生み出されてきたが、同社は、ユーザーの閲覧履歴にふさわしい広告を表示する行動ターゲティングという手法を日本にいち早く導入・推進しているほか、グループ全体として幅広い活動を展開している。創業以来同社の代表取締役社長を務める矢嶋弘毅氏に、デジタルメディア広告ビジネスの特徴や環境、展望について聞いた。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 代表取締役社長 矢嶋弘毅氏 ――現在の事業領域はどのような構成ですか
 グループ全体では「エージェント領域」「メディア領域」「DAS領域」という3つの事業領域を設定しています。
 「エージェント領域」では、媒体社もしくは広告主の代理としての立場から広告事業を行っています。「メディア領域」においては、モバイルメディア事業やeメールによるダイレクトプロモーション、CGM系の情報サイトといったサービスを提供しています。「DAS領域」では、広告の売買には直接関与せず、媒体社や広告主がより効率的なサービスを行うためのテクノロジーやオペレーションを供給しています。

※DAS(Diversified Advertising Service):媒体社や広告主など広告に携わる事業者が、便利・確実にサービスを提供したり利用したりするための広告周辺サービス

――DACグループの広告ビジネスの特徴は
 今までの広告ビジネスは、より多くのクリエイターを抱え、より多くのメディアを押さえ、よりマーケティングに優れていれば競争優位を獲得できました。しかし、デジタルの時代では、さらにアドテクノロジーの分野が非常に重要になっています。それは広告表現を考える際にはもちろんのこと、広告出稿時の配信比率やターゲティングの手法であったり、さらには広告のプランニングやバイイングといったオペレーション業務にいたるあらゆる局面でテクノロジーが必要となるからです。弊社では、50人規模の人員を配置し広告会社や媒体社にDAS事業を行うなど、この要素に力をいれています。
 また、従来は先に挙げた、エージェントとメディア、DASの各事業領域はなかなか重ならなかったのですが、デジタルではそれぞれの領域から同時に収益を得ることが可能であり、そこにビジネスチャンスが存在します。例えば、子会社のデジタルブティックでは自社メディアとして「ベビカム」という子育てママのコミュニティーサイトを運営する一方、そのノウハウを生かし他コミュニティーの運営代行も手がけています。我々は、こうした新たな広告のあり方を「e広告」と呼び、それを起点とする経済活動をサポートしたり促進する仕組みを創造する「e広告プラットフォーム創造企業」を標榜しています。

――注力している事業は
 メディアの拡大に注目しています。CGMのように個人がメディアを持つようになると同時に、広告主もメディア化し自社のWebサイトのコンテンツを拡充して広告収入を得ようという動きがあります。例えば、航空会社などは従来、機内誌というメディアを持っていましたからWebに始まったということではありませんが、Webを契機に広がりを見せているということです。実際、いくつかの広告主のサイトへテクノロジーやコンテンツを提供しつつ広告も集めるといったサポートをグループとして行っています。このような個人、広告主のメディア化には大きなチャンスを感じており、注力していきたいと考えています。
 従来型のメディアに対しても新たなテクノロジーを導入し、新しい商品を作って活性化させていきます。我々の10年の歴史で言うと、市場が大きく伸びるときは必ず新たなテクノロジーを使って、新しい広告モデルが出てきています。現在は、行動ターゲティングという、ユーザーのインターネット閲覧履歴に基づいてその趣味・嗜好に合った広告を表示することで効率化を図る手法をいち早く導入し、新しい分野を確立していきます。

――行動ターゲティングは主流になる?
 行動ターゲティングは効率化が目的ですので、必ずしも広告枠が増えていくことに結びつかない点が難しいところです。
 ただし、アメリカではネット広告市場の2割程度にまで達していますし、今後導入するメディアも増えていくでしょうから、日本でも伸びていくと考えています。

――既存のメディアについてはどのように見られていますか
 新聞もテレビもメディアのパワーは依然として大きなものがあると思います。先日、アートディレクターの佐藤可士和さんと話したのですが、東京・立川市に彼がコンセプトメイキングした幼稚園があるんです。子どもをのびのび育てるという目的を持って建てられた、楕円形の園舎が特徴的なのですが、その幼稚園の記事が読売新聞の朝刊に掲載されたところ、多くの入園希望が来たそうです。これがネットで取り上げられても大きな話題にはならないでしょう。ただし、広告についてはフォーマットに自由がないから表現にも新鮮味がなくなっているということがあるかもしれません。この点は広告制作者とメディアのアイデアを期待したいですね。

図

(梅木)
取材メモ
 DAC設立当初はヤフーが本格的なサービスを開始したばかりで、インターネット広告のビジネスモデルが全く確立されていなかった時代。広告の取引形態や料金体系などから築き上げなければならない状況だったが、広告業界として手を差しのべなければ広告媒体としてのインターネットは立ち行かないという危機感があった。
 社員4人からのスタート。設立当初のインタビューで会社の目標を問われ「5年後に100億円の売上高を目指します」と答えた矢嶋社長。バナー広告一枠を売って5万円、現在4千億円に迫ろうとしているネット広告の市場規模も100億円に満たない状況だったため周囲の人間からは「大いに冷やかされた」と言う。
 売上高100億円については結果的に7年かかったが2003年度に到達。現在では市場の拡大とともにDACグループ全体の社員数は400人超、連結売上高は323億円と大きく飛躍、2005年からは中国市場にも進出している。
※いずれも2006年度実績
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