AD FILES 2007.9/vol.10-No.6

臨床試験データの開示で一般用医薬品の効能明確に
大正製薬株式会社 宣伝部長 船橋 誠氏
 
広報室主任 石倉浩臣氏
 一般用医薬品の広告が変わり始めている。
 今年4月、業界団体である日本大衆薬工業協会が、「一般用医薬品等の広告自主申し合わせ」を改定。一般用医薬品で「臨床試験データ」を使用した広告が可能となった。
 これを受けて、大正製薬は、製薬会社の先陣を切って、6月10日の読売新聞朝刊に「臨床試験データ」を用いた発毛剤「リアップ」の広告を掲載した。〈リアップの「発毛効果」をご報告します。〉というキャッチコピーとともに、製品使用後の効果を脱毛の6タイプ別にグラフで表示している。

正確な情報提供のために

 「お客様に一般用医薬品の効果を正確に理解していただくことが我々の願いだったのです」と新聞広告に込めた思いを語るのは、大正製薬宣伝部長の船橋誠氏。
 大正製薬に寄せられるお客様からの声には、効能効果に対する質問が最も多いという。一般用医薬品は、直接身体に作用し生命にかかわるものであることから、一般生活者に誤認を与えるような表現は控えるという基準がある。臨床試験データの使用を制限していた広告自主申し合わせもその1つだ。このため、広告を見ても、どのような症状にどのように効くのかが明確に理解しづらいケースが多かった。その現状を変える契機となったのが、最近売り上げを伸ばしている特定保健用食品(トクホ)の存在だ。
 「トクホの広告には、『脂肪吸収を抑える』、『血圧が高めの方に』など生活習慣病やメタボリックシンドロームといった症状に対する効果をわかりやすく訴えるものが多く見られます。一方、一般用医薬品の広告表現は、承認された効能効果の範囲内に限定されることから『滋養強壮に』、『肉体疲労時の栄養補給に』などトクホと比較すると専門的な表現になっています。一般用医薬品の存在意義が、お医者様に処方される医療用医薬品と、トクホの間で認識されにくくなっているのです。そのため、これからはわかりやすい表現でありながら、正確に効能効果を伝えなくてはならないと判断し、その手段として臨床試験データを開示することになったのです」
 医薬品は、それが新しい成分、新しい効能効果である場合、臨床試験を行い、そのデータをもって申請、審査を経て承認される。医療用医薬品から一般用医薬品に転用するスイッチOTC薬(注)と呼ばれるものには基本的に臨床試験が義務付けられている。広報室主任の石倉浩臣氏は、一般用医薬品の臨床試験について、「スイッチOTC薬を中心に、一般用医薬品は症例数や期間をとっても十分な臨床試験を行っているものも多く、有効性や安全性に関するエビデンスはしっかりそろっていると言えます。そのデータを開示すれば、お客様が薬を選ぶ際の判断基準になるのではと考えたのです」と語る。
 「リアップ」は1999年の発売以来、毛髪用剤市場の中でトップシェアを誇っている。発売当時、毛髪の悩みは男性特有と考えられていたが、女性も同じように悩みをもっていることが分かり、2005年には女性用「リアップレディ」を発売した。今回リアップの広告には、1999年から2004年にかけて行われた市販後臨床試験のデータが使用された。リアップを使用した結果、70.0%の人が改善した(良くなった+少し良くなった)と回答している。

(注)医療用医薬品(処方薬)から一般用医薬品に転用(スイッチ)したもの。OTCとは、英語で大衆薬を示す「オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ」の頭文字に由来する。スイッチOTC薬は、既承認医薬品であるが、一般用としては初めての有効成分を含有する医薬品であり、新一般用医薬品として承認後の一定期間、市販後調査が原則として義務付けられている。


新聞のメディア特性を利用

 今回の自主申し合わせの改定では、臨床試験データの開示媒体を新聞、雑誌、各企業ウェブサイトに限った。「リアップ」では新聞と雑誌、ウェブサイトで「臨床試験データ」を用い、テレビでは異なるクリエイティブを採用している。
 「このようなデータ開示広告は、圧倒的な信頼性と、情報量を持つ新聞が最適だと考えました。その信頼性とのつながりを広告にも持たせるため、新聞になじんだ書体を用い、キャッチコピーの大きさも控えています。データとともに、製品の有効性や安全性までも1ページに記載し、そのうえ正確な理解に至らせることができるのは新聞以外の媒体では難しいと思います」
 ウェブサイトでは、さらに詳しく臨床試験データを解説しているが、「新聞とインターネットは競合にはならないと思います。広くあまねく人々に正確な情報を伝える新聞と、情報がほしいと思う人に積極的に伝えるインターネット、目的が違う2つのメディアを使うことで相乗効果があると思っています」と船橋氏は話す。

データ開示に好感

 新聞広告掲載直後、ウェブサイトへのアクセス数は通常の倍になり、その後も順調に推移しているという。
 読売新聞の広告反響調査「アドボイス」では「この広告は非常に分かりやすく商品効果を表現していて、1度購入してみようかと真剣に思った」(男性30代)、「ただ漠然とした広告ではなく、データが出ているのでとても分かりやすく信頼感が持てた」(女性50代)など、男性に限らず女性からも肯定的な意見が寄せられた。
 「臨床試験データを開示することで、これだけお客様から反応を引き出せた。新聞での今後の展開方法が、リアップの広告によって見えた気がします」
 臨床試験データを使用した広告は今後も継続予定である。この広告展開は、これからの一般用医薬品の存在意義を明確なものにしてくれそうだ。


6月10日 朝刊

(中西)
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