特集 2007.7・8/vol.10-No.4・5

仮想世界「セカンドライフ」入門


 ソフトバンクモバイルとサムスン電子はキャンペーンの一環としてセカンドライフの中に、「SoftBank×SAMSUNG島」をオープンした。さまざまな工夫を施してユーザーに楽しんでもらう仕組みが大きな話題を呼び、多くのマスコミに取り上げられた。セカンドライフをキャンペーンに取り入れた意図はどこにあったのだろうか。ソフトバンクモバイルの野中耕治氏に聞いた。



──島をオープンしたのは?
 4月12日です。今回は春商戦としてサムスンと共同で行ったキャンペーンの一環です。島をオープンしてからセカンドライフに関する問い合わせが多いのですが、実は、それに先立って開設したサムスンとのスペシャルウェブサイトに誘導するために、マス広告やバナー広告を展開していきました。
 その一つがセカンドライフだったのです。ですから、セカンドライフに本格的に参入しようと最初から思っていたわけではないんですね。

──ウェブのスペシャルサイトに誘導するのが目的だった?
 サムスンは携帯端末を世界に年間1億台以上供給するグローバル企業です。サムスンのブランド認知は日本でも非常に高いのですが、それが購買に結びついてないところが課題だったんですね。そこで、サムスンの端末をきちんと紹介していくスペシャルサイトをまず作りました。
 当然、スペシャルサイトに誘導するために、ターゲットに合わせて効果的なメディアを考えていくわけですが、あくまで今回のキャンペーンのトピックスの一つとしてセカンドライフがあったということです。ですから、セカンドライフからスペシャルサイトへのリンクだけでなく、逆にスペシャルサイトからセカンドライフへの入り口も随所に設けました。相互に行き来してもらうことも意図したんですね。

話題性の高いメディア

──セカンドライフにはまだ日本人のユーザーが少ないと言われていますが。
 日本語環境がまだ完璧ではないことやPCにもかなりの高スペックが求められる、通信回線も高速回線でないとストレスなく操作できないなど、すべてのPCユーザーの方が見られるわけでないことはわかっていました。しかし、それは時間が解決することだと思いますね。
 セカンドライフは、インターネットの創成期に似ている気がします。自分自身、十数年前にインターネットを始めた時は、今では考えられないような低速モデムで、インターネット接続するために1日半かかったという記憶があります。プロバイダも2社しかない時代でした。それを考えると、インフラ的な制約は大きな問題ではないと思います。
 しかし、セカンドライフがマーケットとして成立しているかというと、まだまだです。
 Yahoo!やミクシィと同列に、それがどれくらいのマーケットを持っているかという基準で見たほうがぼくらとしては扱いやすいのですが、同じ基準で見てしまうと企業のコミュニケーションツールとしてはまだ実験的なメディアだと判断せざるを得ません。まだまだアクセス数もユーザー数も非常に少ないですからね。

──いろいろなメディアに取り上げられていますが、事前に予想していた?
 ある程度は予想していましたが、期待以上の反響でした。TBSのニュース番組でも取り上げられましたし、他のメディアの取材もかなりありましたね。それだけ、セカンドライフに対する世の中の関心が高いということだと思いますね。
 これまでバーチャルワールドを作ろうという試みはいくつもありましたが、一時的に盛り上がっては消えていった。セカンドライフがすごいと思うのは、ワールドワイドなかたちできちんと展開できているところと、そこにコミュニティーが徐々にでき始めているところです。可能性としては非常にあると思いますね。

リアルとどう連動させるか

──「SoftBank×SAMSUNG島」の特徴ですが。
 島には二つ特典があって、一つはショップの中にある端末が自由に持ち帰れることです。それから島にキーワードが隠されていて、それを見つけるとチャットアニメーションがコントロールできる携帯電話をプレゼントされます。

──チャットアニメーションというのは?
 アバターが携帯を耳に当てて話すようなポーズを取ったり、喜怒哀楽の顔の表情もできるようにしたものです。セカンドライフでは、出会った人たちと会話ができますが、その時にアバターはキーボードを打つような格好をするんですね。携帯電話会社としては、携帯を耳に当ててしゃべってもらいたいということで、プログラムを作ったんです。

──島に行くと巨大な携帯が空に浮いていますね。
 セカンドライフの画質で携帯のデザインを忠実に再現するには、この大きさが必要でした。実は、それがプレゼントのヒントにもなっているのですが。

──スペシャルサイトとの連動はどのような形で。
 島の中に作ったショップの端末を紹介しているところで、「もっと詳しく知りたい」を選べばスペシャルサイトの端末紹介のページへ、「今すぐ買いたい」はオンラインショップのほうに飛べるようにしました。
 仮想世界ではアバターのために物を買うのが普通だと思うのですが、この世界だけで完結してしまっては企業としては困る。どうやってリアルな世界にまた引き戻すか、というところは当然考えますね。
 
──島を訪れた人数は把握できるのでしょうか。
 プレゼントされる端末のダウンロード数だけカウントしました。自由に持ち帰れる携帯の方はサーバーに負荷がかかり過ぎるということでカウンターは付けませんでした。チャットアニメーションの端末は、開始から半月で延べ約3500台、1500人以上がダウンロードしました。

──セカンドライフの利用者数からするとかなり多いのではないでしょうか。
 日本人のアクティブユーザーなら一度は来ている数字ですね。それから、セカンドライフのユーザーはブログを持っている人が多くて、ブログを通して感想が聞ける。それは非常に参考になりましたね。

ユーザーと一緒になった展開へ

──「SoftBank×SAMSUNG島」に何か課題は?
 セカンドライフは、グローバルな展開を見せている仮想世界です。それがワールドワイドに最新鋭の携帯端末を提供するサムスンのイメージにうまくマッチングするということも、当然ありました。そして、やるならちゃんとしたものを作ろうということで、今回のような企画になったということですね。
 ただ、これまでは日本語の対応だけだったのですが、世界中からアクセスできますから、外国の方も多いということで、英語での対応も進めているところです。
 実は島を一度作ると、現実の街と同じで、公開したまま作り替えるんですね。TBSの取材のときは805SCというワンセグの新機種用にリニューアル中で、その時に島を訪れていたユーザーから「何をやっているんですか」と聞かれて、「撮影中です」と答えるようなこともありましたね。

──ヘルメットをかぶった人もいますね。
 実は“ハリボテ”です(笑)。建設中の気分を出すためなんです。ショップや街中にも人物を配していますが、裏に人を張り付けているわけではないんですね。近づくとクイズのヒントや「いらっしゃいませ」などの言葉を言うようにはなってますが。それから、サムスンの携帯の音をかなり忠実にサンプリングして街のあちこちで聞こえるようにしています。

──機種を替えて、島の展開は変わるのでしょうか。
 今度はワンセグ携帯ですから、ユーザーが撮った写真をスライドショーで見られるツールを配ろうと思っています。そういう更新を含めて、島は一度作ったら、バージョンアップしながら、ユーザーを飽きさせないための努力が必要なんですね。

──今後、どのような展開を考えていますか。
 今後は中にいるユーザーが楽しんでもらえる仕組みを、ユーザーと一緒になって作っていきたいと思いますね。今のセカンドライフのユーザーの中にはクリエイターが多いですから、携帯のデコレーションができるツールを配ったり、できればコンテストもやれたらいいかなと、今考えているところです。本格的にビジネスをやるにはまだまだマーケットは小さいですし、肩肘張らずにやっていきたいと思っています。



セカンドライフとは何か
デジタルハリウッド大学 大学院教授 セカンドライフ研究室 室長 三淵啓自 氏→


企業にとってのセカンドライフ
メルティングドッツ クリエイター兼CEO 浅枝大志 氏→
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