栞ちゃん 2007.7・8/vol.10-No.4・5

栞ちゃん

Vol.3  今日のデザート帖。

小学4年生からの3年間、音楽部に入っていました。

顧問を務めていたのは、当時30歳くらいの女の先生。
ちょっぴりバッハに似て
いつも大きなヴィトンのバッグを持ち歩いていて、
これがとてつもなく、おっかないひとでした。

演奏がうまくいかないと、譜面や指揮棒が容赦なく飛んでくる。
もう全員やめちまえ!と、部員を放りだして出てゆく。
ゲンコツなんてあたりまえ。夏は合宿でしぼられる。
なにも10歳や11歳の子どもにそこまで?と、今なら思うほど
くる日もくる日も、全力で怒ってきました。

そんな体育会系音楽部、よく辞めなかったよね。
楽しい思い出なんてないでしょ。
と、言うひともいるでしょう。でも、

そのバリバリにおっかない先生と過ごした部活の日々は、
じつは楽しく、濃く、刺激的な時間で
なんというか・・・生きてるって感じがしたのでした。

きっと先生は、私たちを小学生だとは考えていなかったに違いない。
そしてこっちだって、音楽をやっている時だけは、
じぶんが小学生だなんて微塵も思っていませんでした。

先生の教え方が果たして正しかったのかどうかは、いまだに分かりません。

でも、確実に言えるのは
たったひとりの本気に導かれて、私たちは「すっかりその気に」なってしまったということ。
そして
ただ上手になりたくて、バカみたいに夢中で音楽に打ち込んでいるうちに
ふいに想像を超えた、すごい景色が見えてくるのだということを、知ったのでした。

こんな風に小学校の音楽室にトリップした、きっかけの本

長尾智子「今日のデザート帖/メディアファクトリー」。

いちど手にしたとたん
長尾さんの、おいしいものを作ること・食べることにかける
深くて広い想いに、心を奪われてしまう。
そして、つい作りたくなってしまう
シンプルにして考え抜かれたデザートの発見が、次々と現れるのです。

デザートは買うもの、または友達に作ってもらうものと決めていた
根性なしのこの私が、うっかり、すっかりその気になって
イチゴに粉砂糖をかけてみた。そこにレモンをキュッとしぼれば、
おいしいデザートのできあがり。
これでいいの? そうか、これでいいんだ。

それにしても、この、ただひとりの想いに
どれだけのひとが突き動かされてしまうのでしょう。私のように。

平地から一段ずつ階段を昇る、その重たい一歩を踏み出させてしまう
チカラって・・・どれだけなんだろ?

とまあ、ひとりの「本気」がくれる、魔法のような「その気」のお話。

音楽とデザートって、ちょっといい組み合わせじゃないですか?(じぶんで言うな)

国井美果(文)
ライトパブリシテイ コピーライター
本誌デザイン
帆足英里子(デザイン・写真)

ライトパブリシテイ アートディレクター


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