ojo interview 2007.7・8/vol.10-No.4・5

福里 真一氏
福里 真一氏

 主な仕事場は近所のファミレスだ。
 「世の中を外から眺めていると、いろんなことがよく見えてくるんですよ」と、今年のTCC賞でグランプリを獲得したサントリー「BOSS」のCMに登場する「宇宙人ジョーンズ」ばりの一歩引いた眼差しで、人間社会を見つめている。
 「ニュースを見たり、新聞を読んだりすると、ひどい事件ばかりで極限までネガティブな気分になりますが、ふと身の回りを見ると人間っていいなあと思うことも多いんです。だからニュースとは逆に世の中を肯定的に見せれば、BOSSを好きになってもらえると考えました」
 1968年鎌倉生まれ。小さい頃から学校生活になじめず、「このままろくでもない人生が続くんだろうなあ」と、絶望感の中で生きてきたという。一橋大学卒業後、マーケティングの仕事を希望して入社した電通では、思いがけずクリエーティブ局に配属。以来、数々のヒットCMを手がけてきたが、「仕事は明るくて愛嬌のある若者に集中するので、僕は新聞を読んで暇をつぶしてましたね」と、新人時代を振り返る言葉も自虐的だ。
 「でも、一人で企画を考える作業にはストレスがなくて、幼い頃の予想よりは楽しく過ごせています。せっかく広告の仕事をやっているのだから、大多数の人が大好きになるCMを作りたいですね」
 読売新聞のブランドキャンペーンでは、人の人生と新聞がかかわるときに、「その新聞が、読売新聞でありますように。」という我々の願いを様々なシーンの中で、さりげなく描き出してくれている。
 「その商品とそれを使う人が、どういう関係を取り結べばいいかをまっとうに考えることが、僕の持ち味だと思います。フツーの生活に近いところで商品を等身大に描けるCMプランナーって、あまりいないんです。子どもの頃からクラスの中心だったような人には、缶コーヒーの悲しみなんて描けないわけですよ(笑)」
 実は結構ずぶといのでは? 少し意地悪な質問をぶつけると、「意外とね。不幸には慣れてますから」と煙に巻かれた。

文/横尾一弘  写真/清水徹

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