立ち読み広告 2007.6/vol.10-No.3

毎月「最終日曜日」はミステリーの日
 ビールがうまい季節になった。この時期、最高の休日の過ごし方は、ビールを飲みながらミステリーを読むこと。
 ミステリーは最高の娯楽小説である。喜怒哀楽、人間の感情のすべてが入っている。主人公とともに、恐怖や焦りを感じることもある。作品によっては、恋愛感情やエロチックな感情が起きる。駆動力は謎の解明。好奇心という人間の本能を巧みに使っている。しかも最近は、読むだけで経済情勢や国際情勢、あるいは権力の裏側などについての知識と情報を提供してくれるミステリーもある。

思わず読みふける豪華鼎談


 4月22日の朝刊には「日本推理作家協会創立60周年記念」と題された見開き全面広告が載っている。
 この広告が異様なのは、上3分の2を占める記事部分が黒地に白抜きの文字で印刷されていること。白抜き文字は珍しくないが、これだけの面積となると別。なんだか腹にズドーンと来る。
 記事は逢坂剛・大沢在昌・真保裕一という、いま日本で最高のミステリー作家による鼎談である。タイトルは「60年の節目に思うミステリーの意義」。江戸川乱歩が昭和22年に協会の前身である「日本探偵作家クラブ」を設立したいきさつから始まり、日本のミステリー史を概観、現代の状況にいたる。なんて内容が濃いんだ! ことに、初期ハードボイルド作家が苦労した理由、社会派ミステリーとの関係、アメリカの風土との違いなど、たいへん興味深い。思わずオートミールを食べるスプーンを宙に浮かせたまま読みふけってしまった(注・私は朝刊を読みながら朝食を取る習慣がある)。
 3氏のお薦めミステリーが5点ずつ紹介されているのもいい。大沢と真保がともにアリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』を挙げていることや、逢坂がハメットのなかで『ガラスの鍵』を推していることなど、これまた「ふむふむ」とうなずきつつ読んだ。

豊饒な日本ミステリー

 この広告の下3分の1は各出版社が書籍の広告を出している。それも、双葉社・徳間書店・東京創元社・角川書店のスペースを乱歩と縁の深い講談社・光文社が左右から挟んでいる構成で、思わずクスリと笑ってしまう。
 講談社は講談社文庫の「東野圭吾ワールド全26冊」を強弱つけながら紹介。双葉社は双葉文庫の「日本推理作家協会賞受賞作全集」を紹介している。光文社は誉田哲也の『ソウルケイジ』と海野碧『水上のパッサカリア』、角川書店は楡周平『フェイク』といったふうに、同じミステリーの出版広告でありながら、スタイルは出版社によってまちまち。これが現代日本のミステリーの豊饒さを示している。
 鼎談のなかで真保裕一が「最近はミステリーというジャンルの間口が広がっているので、あなたの好きな作品が絶対あるはず」と発言しているが、まさにその通りの広告となっているではないか!
 この広告「ミステリー新時代」は、9月までの毎月最終日曜日にシリーズ掲載されるそうだ。忘れずにファイルしておかなくっちゃ。
 5月14日、江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞の選考会が開かれ、江戸川賞には曾根狷介『沈底魚』が、推理作家協会賞には桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』が選ばれた。

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