From Overseas - London 2007.6/vol.10-No.3

媒体指標の統一へ進むインターネット
 「メディア・プランニングをする際、マス媒体のいくつかが考慮されないことはよくあるが、インターネットを念頭に置かないことはまずない」。スウェーデンの広告業界関係者の言葉だ。インターネット広告が一般的になってから約10年。この言葉にも表れているように、その地位は完全に確立された。
 イギリスでは、2006年のインターネット広告費が、全国紙の広告費を初めて上回った(IAB調べ)。2004年にはラジオと消費者向け雑誌、2005年にはビジネス誌と、従来マス4媒体と呼ばれていたメディアをひとつずつ追い越し、ついに全国紙を超えた。イギリスでは新聞広告市場における全国紙のシェアは約4割に過ぎないため、新聞広告全体を上回るにはまだ時間がかかりそうだが、全国紙を超えたことは、インターネット広告にとってのマイルストーンとなるだろう。
 さて、広告費シェアではマス媒体の一角を占めることになったインターネットだが、媒体評価指標の整備の点では依然として発展途上メディアであると言える。例えばテレビの場合は視聴率が媒体力を評価する最大の指標で、日本ではビデオリサーチ社の発表する数字が統一指標とみなされている。新聞の場合は販売部数であり、日英ともABC協会が部数調査を行っている。
 ところがインターネットの場合、統一指標がなかった。例えば、英紙「ガーディアン」のウェブサイトである「ガーディアン・アンリミテッド」はABCエレクトロニック(ABCE=ABCのウェブデータ調査部門)の調査したユニーク・ユーザー数とページ・ビュー数を公表していたのに対し、「タイムズ」の「タイムズ・オンライン」はウェブ・マーケティング調査大手であるヒットボックスの数字を公表していた。つまり、それぞれ測定の仕組みが異なっていたため、正確な比較をすることは不可能だった。「デイリー・テレグラフ」の「テレグラフ.co.uk」が、その広告の中で「イギリスの高級紙のウェブサイトで最もビジター数が多い」とうたい、ライバル各社から批判を受けたことは記憶に新しい。このときのデータ元はヒットワイズ社の調査だった。
 よって、ABCEなどが中心となり、全国紙系ニュース・サイトの媒体評価指標標準化の必要性が叫ばれていた。これが具体的な動きとなったのは2007年3月。前出3サイトのほか、ゴシップ紙「サン」の「サン・オンライン」が参加し、ABCEによる同時調査が行われた。従来は各サイトとも不定期の実施だったが、これ以降毎月調査を実施するという。「ファイナンシャル・タイムズ」、「インディペンデント」、他のゴシップ紙各紙についても、早々の参加が見込まれている。
 現在のところは月間および1日ごとのユニーク・ユーザー数、ページ・ビュー数、調査対象となっているドメインが公表の対象となっており、ABCEのウェブサイトで一般のユーザーも閲覧が可能だ。
 ABC部数のように、各社のデータが同じ条件下で測定、公表されることは、インターネットが広告メディアとして成熟する上で不可欠だ。一方で、一般個人までが広告掲載スペース付きのサイトを保有するインターネットでは、すべてのサイトを調査することは難しい。しかしイギリスや世界のニュースを中心に伝えるという、似かよったメディア特性を持つ全国紙のウェブ・サイトが指標の統一に向かって動き出したことは、インターネット広告にとってもう一つのマイルストーンと言えるだろう。
 インターネット広告費は、確かに全国紙のシェアを抜いた。しかし新聞各社もサイトの運営で広告収入を得ているわけだから、これは必ずしも新聞業界にとってマイナスというわけではない。地方紙や雑誌サイトへの調査対象拡大、ページの再読み込みをすることなしにコンテンツの書き換えが可能なAJAXを用いたページの測定方法などを確立し、インターネット業界をリードする指標整備を行えば、ニュースサイトは業界の中で最も信頼度の高いカテゴリーとなるはずだ。


(5月7日)
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