IT弁護士の法律ノート 2007.6/vol.10-No.3

著作権法改正と通信・放送の融合
 昨年のホリエモン騒ぎの余波で、「通信・放送の融合」は、すっかり誤解された形になっています。しかし、現実には本来の意味における「融合」が進展しつつあることも事実です。
 その一環として、IPマルチキャスト放送による地上デジタル放送の同時再送信が、昨年末から開始されました。今回は、IPマルチキャスト放送の円滑化などを目的とした昨年12月15日成立の著作権法改正について説明します。
 IPマルチキャスト放送とは、いわば電気通信回線を用いた放送の一種です。複数のあて先を指定してデータを1回送信すれば、通信経路上のルータがデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信するという効率的なコンテンツ配信の仕組みです。すでに2001年制定の電気通信役務利用放送法によって「電気通信役務利用放送」として認められ、CATVなどの「有線放送」と、ほぼ同様のサービスが提供されています。
 ところで、著作権法は、有線・無線を問わず、著作物を公衆に流す行為を「公衆送信」として位置付け、それを著作権者の許諾を要すべき「公衆送信権」の対象としてきました。さらに、「公衆送信」のうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うことを、同法は「自動公衆送信」と呼んでいます。その一方、CATVなどは「公衆送信」のうちでも「有線放送」として位置付けられ、独自の規律が課せられてきました。
 ところが、著作権法は、IPマルチキャスト放送を、「有線放送」ではなく、「自動公衆送信」として分類してきました。このため、「有線放送」に比べて、番組を流す際に許諾を取得すべき権利者の範囲が広いことが難点でした。しかし、CATVなどと実質的には同様に利用されていることから、「融合」を進展させるため、同法上の扱いを「有線放送」並みにすることが必要となりました。特にデジタル放送への全面移行に向けて、その補完路として地上波放送の再送信という役割が期待されています。
 こうした観点から、今回の改正では、「放送の同時再送信」について、「有線放送」と同様の扱い(報酬請求権化)が図られました。
 具体的には、(1)放送される著作物などは、非営利かつ無料の場合には、もっぱら当該放送に係る放送対象地域での受信を目的に自動公衆送信できるとすること(38条)、(2)放送される実演を有線放送した有線放送事業者は、実演家に報酬支払義務を負うとすること、(3)商業用レコードを用いた放送・有線放送を受信して放送・有線放送を行った放送事業者等は、実演家・レコード製作者に二次使用料の支払義務を負うとすること(95条、97条)、(4)放送される実演・レコードは、もっぱら当該放送に係る放送対象地域で受信されることを目的に、送信可能化できることにするとともに、当該送信可能化を行う者は、実演家・レコード製作者に補償金の支払義務を負うこと(102条)が、定められました。
 こうして、今回の改正は、「融合」の進展だけにとどまらず、同時に有線放送等における実演家・レコード製作者の保護を、従来よりも厚くしたものであることに注意が必要です。
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